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今、どんな「政治教育」が行われているのか?高校の先生に聞いてみた (1/3)

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18選挙権がスタートしてから初めての国政選挙となった7月の参院選。注目されていた18歳投票率は、全国各地で予想を上回る結果を見せた。

この結果を一過性で終わらせないために、選挙期間外の「平常時」において何が必要なのか。BLOGOS編集部では、今後の課題をこれまで現役大学生や全国紙記者などとともに考えてきた。今回は、「主権者教育」の当事者でもある高校の先生たちに、学校での政治教育の課題や現状について話を聞いた。

なお、今回の座談会では、学校側からの要請により直前に欠席となってしまった先生がいた。図らずも、教育現場と政治の間に横たわる問題の根深さを象徴する座談会になったのではないだろうか。【大谷広太、永田正行】

■出席者

・渡辺研悟 神奈川県立大和南高等学校教諭
・黒崎洋介 神奈川県立湘南台高等学校教諭
・原田謙介 NPO法人YouthCreate
・西田亮介 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

■高校ではどんな「政治教育」が行われているのか?

-90年代後半に中高生だった私の場合、中学校の社会科で公民分野を学びました。高校では現代社会を共通で履修しましたが、それ以外は私も含め、ほとんどの人が地理や、日本史、世界史を選択していました。

つまり現状としては、「倫理」と同様、受験の際の科目の関係から「政治経済」を履修しない生徒がとても多いのではないでしょうか。


渡辺教諭
渡辺:すごくいい質問です。政治教育のことを議論する上で、カリキュラムについて細かく見ていかないと分からないことが多いです。学校ごとに異なりますから。

社会科分野には、いわゆる地歴(地理・歴史)と公民という2本柱があります。そのうち公民で2単位を必修にしなければいけませんが、カリキュラムを決める権限は各学校にありますので、2単位は「現代社会」「倫理」「政治経済」のどれでもいいわけです。

テクニカルな話ですが、「倫理」「政治経済」が国公立理系の2次試験の科目にあるということで、「倫理」と「政治経済」を必修にしている学校もあります。

一方で、「現代社会」のみを必修として置いている学校もあります。そうした学校の生徒は政治経済を履修せず卒業する場合があります。「現代社会」も政治経済の分野は扱いますし、大変おもしろい科目であるのですが、これで十分な政治的素養が身につくかといえば、甚だ心もとない。

ですから、政治について中学校とほとんど変わらない教養で高校の学習過程を終える生徒がいても不思議ではありません。ただ、政治や経済についてほとんど知識を身につけずに社会に送り出すということを、多くの社会科教員は快く思ってはいません。

西田:高校進学率はすでに98%近くに達しているわけですから、義務教育に準ずるといえるでしょう。ところが、そこで具体的な現実の政治について学ぶ機会は乏しく、大学入試のための穴埋め問題や暗記が多くを占めます。18歳になって、選挙権を得る頃には全部忘れてしまっていますよね。現実政治を理解し、判断するための道具立てという観点にたつと、とてもチープな政治教育の機会しか用意されていないのが現状です。

—いま、「主権者教育」として、教科書ではありませんが、副読本として「私たちが拓く日本の未来」が配布されています。「主権者教育」の授業が「政治・経済」と補完関係にあるのでしょうか。

黒崎教諭
黒崎:私の学校では主権者教育を「総合的な学習の時間」に位置づけて、学校全体で実施しています。

「模擬投票を行えば主権者教育である。」ということではなく、事前の学習において争点に関する習得の学習を行った上で、それらの知識を活用して模擬投票に取り組む一連の学習が主権者教育になりうると思います。

原田:この副読本の作成協力者の一人として危惧しているのは、”何かを考えさせる教育”ではなく、投票所の絵が描いてあるページを見ながらの”選挙のことを知る教育”になってしまっているのではないかということです。主権者としての素養を身につけたり、政治そのものを考えたりするきっかけとして使って欲しいですね。

渡辺:神奈川県では弁護士グループが積極的に主権者教育に関わっています。

例えば、商店街にカラオケボックスを建てるという計画について、隣の八百屋さんはうるさくなるから反対、向かいのコンビニの店長は賛成、保護者としては子どもたちが入り浸らないか心配。そういった状況下で、どうやってルールを作っていこうかという授業を展開します。そして議論を重ねる中で、お互いの意見を聞いて、自分達なりの結論を出して、合意形成が図れれば良い。

政治の役割は利害調整とも言えますが、弁護士という仕事はそれに長けていると感じました。外部の様々な方に関わって頂くのも、一つの手段だと思います。

-そうすると、同時にゴールも基本的にはないわけですよね。「選挙権が与えられた時点で最低限このぐらいの知識はあったほうがいいよね」という基準や、確認のためのテストみたいなものを作るべきではないか、という考え方も出てくるのではないでしょうか。

西田:正式な科目ではありませんし、したがって達成度についても先生方の間での共通見解はないはずです。副読本についても、大変コンパクトにまとまってはいるんだけれども、内容的には従来の公民の知識の範囲を出ていません。

渡辺:目新しさがあるかといったら、そんなにないですね。

西田准教授
西田:さらに、総務省の報告書などでは「主権者教育を実施する学校が非常に増えた」と言っていますが、それでもたとえばもっとも身近な「外部」であるはずの選挙管理委員会の出前授業を受講したのは、高校生の10分の1ぐらいとされています。質量ともに、日本でとても主権者教育、政治教育が提供されているといえる状況とは思えません。。

原田:体育館に学年全員を集めて選挙管理委員会の人の講演を聴くだけ、というような学校も多い。高校生に話を聞くと、それで「やっぱり政治はおもしろくないんだ」「自分と関係なさそうだな」と思うだけで終わってしまったと(笑)。そうした内容であっても「主権者教育を実施した」の統計にカウントされてしまっています。

-すぐ働きに出る子が多い学校ならば労働基準法の問題を取り上げてもいいかもしれないですし、進学率が高い学校なら、奨学金の問題を取り上げてもいいですよね。

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