記事

私のところの介護保険施設も経営は本当にカツカツ。真面目にやるほど赤字になる。そんなシステムは馬鹿げている - 「賢人論。」第24回(前編)高須克弥氏

1/2
「賢人論。」第24回(前編)高須克弥さん「私のところの介護保険施設も経営は本当にカツカツ。真面目にやるほど赤字になる。そんなシステムは馬鹿げている」

美容外科「高須クリニック」の院長である高須克弥先生は、江戸時代から続く医師の家系である。今や芸能界のみならず財界や政界においても幅広い人脈の持ち主で、メディアでは歯に衣着せぬ物言いで意見することもしばしば。そんな高須先生は、実は高齢者医療・福祉などを担う医療法人社会福祉会「高須病院」の理事長も務める。日本の医療・介護の技術は世界に誇れる、と主張しながらも、業界を取り巻く制度の課題について伺った。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/公家勇人

日本の医療や介護は、育てればものすごい産業に育っていく芽なのに、経済発展を妨げる足かせだと思われている

みんなの介護 高須先生は高須クリニックの院長として活躍されていますが、ご出身地の愛知県内で、現在も介護施設を運営されています。

高須 メインは高須病院なんです。病院を中心に、老健の「高須ケアガーデン」、訪問介護事業所の「高須ヘルパーステーション」など6施設を運営しています。患者さんを社会復帰させられるようにQOL(生活の質)を高める病院を作ろうと思い、1974年に24時間体制の病院を開設しました。

みんなの介護 先生は医療にも介護にも携わっておられますが、メインは特にリハビリだとか。

高須 そうですね。例えば、脳梗塞で倒れてしまって麻痺が残った高齢の患者さんにリハビリをするとき、当然ですが一生懸命にやってあげるわけです。でも、行政はそれを歓迎しないみたいなんですよね。なるべく在宅にシフトしようとしているから、逆に入院期間を短縮することが歓迎される。高齢者だとしても、きちんと筋肉を動かせば回復するんです。でもね、丁寧にやってあげるとすごく人手がかかるし、医療費が上がってしまいます。

みんなの介護 1日、1か月あたりに受けられるリハビリの時間は決まっていますからね。患者本人がリハビリを受けたくても、一定の時間を超えるのはなかなか難しいという。

高須 国が大事だと思っているのは、何よりも医療費抑制。“年寄りは早く旅立ってほしい”とでも思っているんでしょう。こちらとしては、今までたくさん税金を納めて国に尽くしてきた人だから、幸せな老後を送ってもらおうと思っているんですが、もう少し治療してあげたいと思ってもそれが許されないし、無理やり病院に引き止めても赤字がかさんでいって経営が苦しくなってしまう。

みんなの介護 患者さん個人のことを思うと、心苦しいですね。

高須 介護をメインにやっている私の施設なんかは、職員が毎日毎日、真面目にやってくれています。でも、利益が上がらないんですよ。自由診療の高須クリニックと合体させることでもってなんとか経営的に安定させているというのが現状で、悔しいことは悔しいんです。

日本の介護って、ものすごく洗練されてきたんですよ。お金をかけずに、ブラック企業にもならずにうまくやってきたんです。これは、ものすごい産業なんですよ。

みんなの介護 諸外国と比較しても、日本の介護サービスの質は高いと思われますか?

高須 中国の富裕層には、高いお金を払って介護を受けたいと思っている人がたくさんいると思います。よい治療を受けたいという中国人は、すでに日本に来ていますから。介護を受けるところまでの年齢ではないけれど、がんの治療や健康診断とかでね。中国には今のところそういうのがないけれど、そう遠くないうちに日本と同じようにシステム化すると思います。

日本の医療や介護は、育てればこれからものすごい産業に育っていく芽だと、私は思っているんですけどね。それなのに、国としては経済発展を妨げる足かせだと思っているみたい。わりと目先の“財政再建”のほうが優先されるから、切り捨てられるほうになってしまっているね。

「賢人論。」第24回(前編)高須克弥さん「日本の医療や介護業界は儲けてはいけないビジネスモデル。株式会社でやっているのなら、利益を追求して何が悪いのか?」

自由診療のような部分を充実させていけば、介護も利益を追求できるようになる

みんなの介護 本来の日本の介護は成長分野である、と。

高須 ものすごくいい介護をやっているんですよ、日本は。それこそ、新しいビジネスモデルを作るのも有りでしょうね。これからは、ものすごくお金をかけてでも幸せな老後を送りたいという人が中国の富裕層にも出てくるでしょうし。

みんなの介護 そういった人たちを呼び込めるような産業にしていかなければならないんですね?

高須 そうなんです。中国では受けられない医療サービスが日本にはありますから。でも、彼らが日本の医療を勉強して、中国でビジネスモデルを発展させる可能性のほうが高いと思いますよ。

とにかく、良い環境にするなら利益が蓄積できるような環境を作らなければいけないんです。日本の医療や介護業界は利益を出してはいけないというビジネスモデルになっています。“儲けてはいけない”という。でも、儲けをあげられなかったら職員にボーナスも出せません。中には、株式会社で利益をあげている病院もありますよ。

みんなの介護 それは自由診療によって利益を上げているんでしょうか?

高須 違います。国民皆保険が制度化されて、“医療法人は利益を上げてはいけない”と法律ができる前に病院を作ったんでしょう。株式会社であれば利益を追求していいし、配当として利益を出すことが義務ですからね。

みんなの介護 介護業界では株式会社として運営している施設の運営はだいぶ厳しいという現状があります。

高須 私のところのように割り切ってしまって、自由診療のクリニックもやって介護保険施設もやって、生き残っていけばいいと思うんですけれどね。自由診療では美容整形一本で利益を追求していく。介護のほうは、利益の追求ではなく半ばボランティアですよ。職員を食わせるのに必死で、経営はカツカツですから。

私が理事長をしている、愛知の「高須病院」に行きますが、私自身は無給です。東京から新幹線に乗って西尾まで行くときの交通費さえ出ません。日当や交通費をもらったら、病院が赤字になってしまいますから。職員を食わせるために、こんな風に何かやらなければならない状態のところのほうが多いと思いますよ。真面目にやっていたら赤字になるシステムですから。

みんなの介護 真面目にやればやるほど赤字になってしまう…と。一体どうしたらいいんでしょうか?

高須 株式会社の一部として、会社のイメージアップのためにそういった施設を運営する形があってもいいと思うんですよ。日本には世界を代表する大企業があるでしょ。『人を動かす』の著者として有名なアメリカのデール・カーネギーも、介護施設を作っていたんです。

アメリカの病院には、大きく分けて2種類あります。株式会社で利益を追求している病院と、お金持ちがたくさん寄付して成り立っている病院。両方とも経営は安定しているんです。日本にはどちらもないでしょ?

あわせて読みたい

「介護」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏"小池都政は大成功だ"

    橋下徹

  2. 2

    日産「ノート」が売上1位の理由

    片山 修

  3. 3

    報じられない「熊本地震」の現状

    田野幸伸

  4. 4

    ピコ太郎が今年のYouTube2位獲得

    島田範正

  5. 5

    示唆を与える湯浅誠氏のスピーチ

    亀松太郎

  6. 6

    "安定を求めて公務員"は正しいか

    シェアーズカフェ・オンライン

  7. 7

    "1分で心掴む"小泉進次郎の流儀

    PRESIDENT Online

  8. 8

    "真珠湾攻撃"伝える当時の米社説

    ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

  9. 9

    "日本死ね"を言葉狩りする曽野氏

    小林よしのり

  10. 10

    mixi黒歴史晒しで休眠アカ一掃?

    アクトゼロ ブロガーズ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。