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通信帝国の拡張競争、米ベライゾン次の一手 - 土方細秩子

土方細秩子 (ジャーナリスト)

米通信大手、ベライゾン社の事業拡張に注目が集まっている。ベライゾン社は電話、インターネット、ケーブルテレビ、携帯などを総合的に扱う通信企業で、企業規模は全米1位、全世界でも2位(1位はチャイナ・モバイル社)となり、2015年の売り上げは1271億ドル。米国ではベライゾンと2位のAT&Tが2強の状態を長く保っている。

 そのベライゾン社がYahoo!のインターネット事業を買収して話題になったのが今年7月。経営難が囁かれていたYahoo!の主要部門を48億ドルで買収、本格的なインターネットコンテンツ、広告事業に乗り出すことになった。

 布石はあった。ベライゾンは2015年にインターネット大手AOLを買収、単なる通信事業からコンテンツビジネスに乗り出す姿勢が見られた。これにはAT&Tによる2014年のDirecTV買収も要因として挙げられる。AT&Tはサテライトなどによりテレビ番組を提供する同社を買収することで、消費者向けのテレビコンテンツを充実させることに成功、ベライゾンでもインターネットTVや独自コンテンツの分野への注力が急がれていた。

電話回線は2社が独占するも……

 米国にはソフトバンク傘下となったスプリント、Tモバイルなどの大手携帯電話会社がある。しかしベライゾンとAT&Tが特殊なのは、家庭用電話回線をこの2社がほぼ独占、そこから家庭用インターネット回線、そしてバンドルとして提供されるテレビ放送など多岐に渡るサービスを実施できる、という点だ。

 ただしこの分野でもインターネットケーブル会社のコムキャスト、タイム・ワーナーなどがほぼ同様のサービスを提供するなど競争は激しくなっている。家庭用の固定電話の契約数は減り、テレビ配信サービスもアマゾン、ユーチューブなどが独自コンテンツをネット配信するようになってから人気が低下している。サテライトテレビは契約数が激減し経営悪化に陥っている。

 携帯にしても、ベライゾンのシェアは2011年の33%から2016年第二四半期の35%、とほぼ変化がない。米国でも格安携帯が数多く登場しており、この先ベライゾンがシェアを著しく伸ばす可能性はほぼゼロだ。

今年第二四半期、ベライゾンの収益は昨年比で5.3%のマイナスを記録、さらに電話とインターネットのバンドル契約数は昨年比46%も減少した。このような状況の中で、いかに今後のビジネス成長を考えるか。ベライゾンの出した答えがインターネットコンテンツと自動車ビジネスへの進出だ。

自動車ビジネスに勝機はあるか?

 自動車ビジネスに関しては、今年8月にGPSによる自動車のトラッキングシステム運用会社、フリートマティックス社を24億ドルで買収する、と発表された。

 フリートマティックス社は主に商用車の位置確認、燃料使用量、スピード、燃費などをチェックする。これによりたとえば運輸会社などがより効率良く商用車両を管理できる、というのが目的だ。

 商用車の分野で自社のネットワークを活かした車両管理を行う、というビジネスは、ひいてはIoTや自動運転システムへの参入にもつながる。

 IoTでは自動車メーカーと家電メーカーとの連携が注目されがちだが、その通信を担うテレコム会社は重要な役割を果たす。BMWでは本国での自動運転、IoTのパートナーにドイツ・テレコムの存在を強調する。米国でも当然ながら、どのテレコム会社がどのIoTチームあるいは自動運転システムと組むのか、というのは今後重要なポイントとなるだろう。その時、商用車の追跡という面から全米にコミュニケーション網を築いていたベライゾンが非常に有利になる可能性は高い。

 現時点でベライゾンワイヤレスは全米のカバレージ地域の広さ、速度、安定性などで最も高い評価を受けている。自動運転システムが標準になった場合、ベライゾンのワイヤレスサービスを導入する企業は多いだろう。それにGPSによる車両管理が加われば、まさに鬼に金棒といったところだ。

 問題はデジタルコンテンツ、広告、GPSによる車両管理、という新しい部門をベライゾンがどれだけ上手く管理し、黒字ベースに載せられるか、という点にある。例えばデジタル広告では現在グーグル、フェイスブックが1、2位を占め、Yahoo!は3位とはいえその差は非常に大きい。ベライゾンが経営を行うことでこれをどれだけ伸ばし、グーグルに近づけられるのか、という点に注目が集まっている。

 しかしベライゾンの事業拡張は様々な分野に波紋を広げることになる。特に自動車分野への本格的参入という点で、ライバルたちも今後同様の動きを見せることになるだろう。これが自動運転システムの到来に拍車をかけることになるのか。今後の動きに注目したい。

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