記事

外表に異常がなくても警察届け出は必要だ

10倍のインスリン投与、80代女性死亡 長崎の病院
朝日新聞 9月23日

 国立病院機構長崎川棚医療センター(長崎県川棚町)は23日、80代の女性患者に糖尿病治療薬のインスリンを必要量の10倍投与する医療ミスがあったと発表した。女性はその後死亡。解剖ができておらず因果関係は不明だが、病院側は女性が回復傾向にあったとして、過剰投与と死亡に「なんらかの影響があった」とみている。病院側はミスについて県警に届け出た。
  医療センターによると、女性は糖尿病などを患い、8月8日に入院。インスリンを含む栄養補給の点滴を受けていた。8月30日夜に、20代の看護師が医師の指示の10倍の量のインスリンを点滴で投与。女性は点滴から約8時間後の31日朝に死亡が確認された。看護師は専用の注射器を使わず、センターの手順で定められている複数人でのチェックも怠っていた。看護師は点滴を通してのインスリン投与は初めてだったが「自分一人でもできると思った」と話しているという。また、女性の血糖値を測定せずに架空の数値をカルテに記録していたことも判明。看護師は「女性の状態が安定していたので異状はないと思って測定しなかった」と話しているという。
  医療センターは、医療事故調査・支援センターに報告し、第三者による検証を行うという。

<患者中毒死>死亡患者の点滴に泡…界面活性剤を検出
毎日新聞 9月24日

 横浜市神奈川区の大口病院で入院患者の八巻信雄さん(88)が点滴に異物を混入され殺害された事件で、八巻さんが死亡した後、点滴袋の液体が泡立っているのを看護師が見つけたことが24日、神奈川県警への取材でわかった。病院は不審な点として県警に通報。県警の司法解剖などの結果、八巻さんの体内や点滴袋から界面活性剤の成分が検出された。県警は界面活性剤でできた泡とみて調べている。
  同病院では点滴袋をフロアごとのナースステーションで管理し、施錠のない場所に保管していたことも分かった。4階のナースステーションには、界面活性剤の成分が含まれる物品が置かれていたという。捜査関係者によると、ナースステーションに運び込まれる前の点滴袋は病院内の薬剤庫で保管され、薬剤師がフロアごとに翌日に使うものを用意。看護師らが担当するフロアのナースステーションに運んでいた。
  県警によると、4階に入院していた八巻さんの心拍数が低下し、アラームが作動したのは20日午前4時ごろ。4時55分に八巻さんの死亡が確認され、女性看護師が点滴の泡に気付いた。病院によると、看護師が午前3時過ぎに心拍や血圧を確認した際、八巻さんに異常はなかったという。捜査関係者によると、点滴袋に破れなどはなく、注射器を使用するなどして界面活性剤が混入された可能性がある。
  界面活性剤は水と油を混ざりやすくさせる物質で、洗剤や化粧品に含まれるほか、医療器具の洗浄や消毒に用いられる。大量に摂取すると中毒症状を起こし、死亡することもある。八巻さんと同じ4階に入院し、18日以降に死亡した80~90代の男女3人のうち、男性2人は点滴を使用していた。県警は点滴袋の残留物を調べるとともに3人の死因を詳しく調べている。【国本愛】

ここのところ、病院内で医療事故によって死亡したり、殺害された疑いのある事件が連続して発生した。診療関連死に関連して、警察を医療現場から排除しようという試みがなされ、その結果、外表に異常がなければ警察に異状死届け出は不要との、デマといってよいくらいの言説が流されているが、そんなことがまかり通っては、医療現場は犯罪見逃しだらけになるだろう。

長崎の事件は、これまでの判例からすれば、かなりの確率で看護師が業過致死で有責になるケースと思われる。しかし、すでに遺体は火葬され、解剖できないので、昨年新設された事故調から出される報告書を使って、警察と検察は有罪か否かを判断するのだろう。この点は、大野病院事件に似た手続きが取られるのではないかと思われる。解剖していないので、当然の結果として、インスリン投与による低血糖発作以外の死因について全く検討できないことになるが、そうした中途半端な手続きで、刑事的な責任を取らされたり、逆にうやむやとなってしまうようなことを遺族や医療者はどう考えるのだろうか。

今回の事例がそうであるが、昨年から実施されている医療事故調査制度では、解剖が法医解剖と異なり、承諾解剖に設定されており、解剖されないケースのほうが圧倒的に多くなると考えられる。その場合、真相究明ができなかった理由は遺族のせいになるか、承諾を取れなかった医師のせいになる可能性がある。解剖ができない場合は死後CT検査などを行うべきともされるが、そんな検査では中毒の診断などできない。行政側は誰も責任を取らないので、いい気なものだが、遺族や医師にとっては深刻な問題を生み出しかねない。

ケースによっては、遺族の怒りが収まらず、看護師のみならず、病院全体に隠ぺい体質があったと考えて警察に告発する場合もありうるだろう。そのような場合、広尾病院事件がそうであったように、病院側に悪気がなくとも、また、医師が直接薬物投与に関与しなくとも、医師がなんらかの罪に問われかねない事態に陥りうる。

そうならないよう、もしものときにどうするべきかは、今後再考すべきだろう。

神奈川のケース、今回は看護師が点滴の袋に泡が立っているのに気付いたので、さすがに気付かれて、解剖や薬物検査が実施されるようだが、ほかにも発生していなかったのだろうか。

日本以外のどんな国でも、末期がんなどで、あと何日かで死ぬだろうと予測していたケースが、思った通り亡くなった場合は、明らかな病死なので、警察への届け出なく、死亡診断書を発行できるが、そうでない場合はすべて警察届け出をすべきこととされている。諸外国においては、病院で突然予期せずに死亡したものは明らかな病死とはいえないので、警察届け出を行うべき事例とされている。

しかし、日本では、予期せず死亡した場合でも外表に異常がなければ届け出なくてよいなどと主張するものもいたりして、届け出るべき異状の定義がかなりあやふやになっている。この病院以外の病院も含め、老人が予期せず死亡したケースが、過去に存在したにも関わらず、警察に届け出をしていなかった可能性もあるかもしれない。もっと隠れたケースが存在するのではないかと考えると、自分の老後が恐ろしくもなる。高齢化社会を迎えるにあたって、政府としてももっと真剣に、異状死の届け出について、考えるべきなのではないか。

あわせて読みたい

「医療事故」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    反日デモ 韓国の"報道管制"

    木走正水(きばしりまさみず)

  2. 2

    成宮とホリエモン 報道の問題性

    sionsuzukaze

  3. 3

    息をするように嘘ついた蓮舫代表

    木曽崇

  4. 4

    よしのり氏"特例法は天皇を侮辱"

    小林よしのり

  5. 5

    小池知事、希望の塾で大胆発言

    伊藤陽平:新宿区議会議員

  6. 6

    社長の44.2%は"中卒か高卒"

    MONEYzine

  7. 7

    消化不良な「この世界の片隅に」

    fujipon

  8. 8

    ファーウェイ 社員犠牲に急成長

    ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

  9. 9

    今さらカジノなんてやめておけ

    ビデオニュース・ドットコム

  10. 10

    難病告白の原口議員と総理の会話

    和田政宗

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。