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僕らは通勤で何を失っているのか?

最近、久しぶりに米アップル時代の友人と会っておしゃべりに興じたのだが、その友人の「再来週から2週間インドネシアにダイビングに行ってくる予定なの」という一言で、色々と考えさせられてしまった。彼女は真のダイビングマニアで、20年くらい前から休みという休みをすべてダイビングに充てているのだ。

そうそう。アップルって相当忙しいのに、なぜか「まとまった時間」を捻出しやすい会社だった。2週間のバケーションを取るのは当たり前のことだった。前述の彼女も9月下旬の今現在は何か緊急プロジェクトらしく、週末も昼休みも夜遅くもすべて会社に捧げている。でも、それが終わればインドネシアでダイビング三昧。ああいうメリハリのある生活、本当に懐かしい。

Family First!

アップル時代のもう一つ良かったこと、それは 「Family First」が単なる掛け声だけでなく、実際に普通に行われていたことだ。「子供が病気だ」「子供の行事がある」というと、誰もが一同に「早く帰れ帰れ」と言ってくれる。

また、家で働くのも普通のことだったので、いつも家族を最優先できた。朝7時には家族で朝食を済ませ、8時からの電話会議はたいてい自宅で済ませてから出勤した。夕飯も必ず家族で一緒に食べた。子供の学芸会があるからと早く帰る日は、帰宅してからVPNで繋いで仕事することで、早く帰った分はその日のうちに取り返せた。それから夜中の12時くらいまで延々仕事していたが、あまり大変とも感じなかった。

通勤時間

東京で働いていた頃、僕は通勤に片道1時間半もかかるところに住んでいた。だから、勤務時間8時間+昼休み1時間+往復3時間の合計12時間、自由が利かなかった。当然ながら、健康維持のための運動とか、家族との団欒なんてできやしない。ちょっと残業すると家に着くのは11時とか12時過ぎだった。子供の顔なんて週末以外は寝顔しか見れなかった。

この反省を踏まえ、アメリカに引っ越したついでに通勤を片道15分に縮めた。おかげで時間をかなり有効に使えた。朝はジムでワークアウトしてから出勤。忘れ物をしても昼休みに取りに行って解決。歯医者も早朝からやってたから、朝のうちに治療を済ませて出勤することもあった。 通勤時間が短いのは何も僕だけに限った話ではなく、多くの人がせいぜい15〜30分ぐらいのところに暮らしていた。もしも自宅と会社が遠かったら、日本に住んでいた時と大差ない生活になっていたに違いないように思う。

通勤時間を別のカタチに換算してみると……

僕自身も日本に住んでいた頃は、「都内は家賃が高いから無理!」と決め込んで、迷わず郊外に住んでいたのだ。しかし、実際に職住接近を経験した今になってみると、家賃の高いのなんて大した問題じゃないな、とシミジミ思う。金は後から稼ぐことも可能だけど、時間だけは絶対に取り返せないからだ。

ちなみにごく普通のサラリーマンは1年に240日ほど通勤するわけだけど、片道1時間半、往復3時間の通勤ということは、1年に720時間(!)も電車に乗っていることになる。僕がもしもアメリカに移り住まず、あのまま同じところに住んで同じところに通っていたら、14年間で10,080時間(!)を電車の中で過ごしていたことになるのだ。

仮にこの1万時間をすべて残業したとする。すると、仮に残業手当が1500円だとして、14年間で1500万円稼げることになる。なお、時給1500円というのは年収300万円の人だから、もっと年収が高い人なら、ポテンシャルはもっともっと高い。

別の見方をしてみよう。何か特定の技能で1流になるまでに1万時間を要するといういわゆる「1万時間の法則」というのをよく耳にするが、実際のところ、1万時間を例えば語学学習に費やしたら、2ヶ国語はしゃべれるようになるだろう。プログラミングでも会計でもピアノでもギターでも何でも覚えられるし、その時間を社交に使ってチャンスを広げていってもいい。

ネットだけではまだ足りない

ネットが発達したから遠隔地からでも仕事ができるようになった。僕自身、アメリカにいながらセブ島にいる部下とスカイプで話し、メールやチャットで指示を出している。

ただ、これだけだと人生に柔軟性を持たせるにはやはり足りない。やがて遠い将来には通勤しなくて良くなる可能性もあるが、まだしばらくは顔と顔を付き合わないと達成できないことも多くある。アップルやグーグルやフェイスブックのような会社ですら、まだ社員に出勤させているのだ。通勤は当分なくならない。

そう考えると、通勤時間の圧縮は僕らの生き方により高い柔軟性を与えてくれる、最も有効な手段だろう。同じ人間関係の中にはまり、1万時間も電車の中で過ごすには一生はあまりにも短すぎるのだ。

「俺の人生/私の人生、もっと色々できるはずだ!」と思う人は、まずは通勤時間の圧縮から始めてみては?

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