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介護報酬の引き上げは簡単じゃない。介護が抱える問題の“解”を見つけるのは難しい - 「賢人論。」第5回 乙武洋匡氏(中編)

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特別インタビュー「賢人論。」第5回(中編)乙武洋匡さんは「財源の観点からも介護報酬の引き上げは簡単じゃない。介護が抱える問題の“解”を見つけるのは難しい」と語る

介護の現場と同様に、保育士の人材不足が問題視されて久しい。保育園の経営に携わる乙武氏ももちろん、「その問題は実感しているし、保育業界も決して他人事ではないと感じている」とのこと。ただし、その問題を落着させるための“解”には辿り着いていると言う。「その方法はとても難しんだけれど…」という前置きのもとに話してくれた、その“解”の内容とは?

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/伊原正浩

介護士と保育士の資格一体化には反対。でも、介護と保育を同時に行える施設をつくることは賛成

みんなの介護 介護職員の人材確保のために、介護士と保育士の資格を一体化するという案も出ていました。保育園の経営に携わる乙武さんから見て、この案はどのように思いますか?

乙武 うーん、現実味はないし、それをした上でも効果もあまり期待できないと思うんですよね。だって、保育士も介護士も、両方が人手不足だって言われてるのに、それをくっつけたところで状況は変わりませんよね。どちらかに人手が余ってて…というなら話は別ですけど(笑)。

みんなの介護 確かにその通りですよね。ただ、介護と保育が同じ現場で行われるようになるという点では、大いなる試みだとは思います。

乙武 多世代交流がQOLの向上につながると考えれば、高齢者の施設と保育所を一体化することには妙味があると思います。ひとつの箱の中で、子どもたちが走り回り、その脇でおじいちゃんおばあちゃんが日向ぼっこしている。そういう空間って非常に素敵だなと思うんです。

みんなの介護 具体的に、どんな効果を期待できそうでしょうか?

乙武 高齢者にとっては生活にハリが出るというか刺激につながりますし、子どもたちにとっても非常に良い機会だと思うんですよね。というのも、園児が接する大人って、主に母親と保育士さんになってしまっていると思うんです。でも、世の中には老若男女いろんな人がいるはずですよね。なのに、母親と保育士だけなんて、すごく偏ってしまっている。もっといろんな人格に触れ合うことができれば、子どもたちにとって豊かな学びにつながるだろうなあと思うんです。

みんなの介護 今後の社会を考えると、それは理想的な形のひとつでしょうね。

乙武 私が経営に携わる「まちの保育園」は、まさにそうした理念で運営しているんですよ。普段は母親や保育士さんと過ごすことの多い子どもたちが、近所のカミナリ親父に怒られたり、無条件にかわいがってくれるオバチャンに出会えたり。そんな保育園にできたらとの思いから、「地域ぐるみで子育てをする保育園」を目指しているんです。

そうした文脈から保育園と高齢者施設を一体化するというなら、それは面白い取り組みだと思います。でも、人材を確保するために保育士と介護士の資格を一体化しようという話なら、「現場をわかっていないなあ」と苦笑せざるをえません。

特別インタビュー「賢人論。」第5回(中編)乙武洋匡さんは「ロボットに介護を委ねるというのは、現時点ではギャンブルじゃないかな?と思っています」と語る

介護の人材を確保する方法は、選択肢として3つ。キーワードは「日本人の労働力」「介護ロボット」「移民政策」

みんなの介護 では、介護士を人材として確保していくための案としては、どのようなことが考えられると思いますか?

乙武 私は、選択肢として大きく3つに分けられると思っています。ひとつは、「きちんと介護報酬を引き上げて、日本人の労働力を確保する」。ふたつ目は、「介護の仕事をロボットにどんどん移行させていく」。みっつ目は、「移民を受け入れて、外国人の労働力に頼る」。もちろん、組み合わせても良いと思いますけどね。

みんなの介護 では、そのひとつひとつを検証していただけますか?

乙武 まず、ふたつ目からいきましょうか。ロボットに介護を委ねるというのは、ある程度、現実的ではあるものの、反面、ある程度はギャンブルだな、と思っています。正直、ロボットによる介護がどんなものかというものが、現段階では具体的に見えてきていないですからね。

みっつ目の「移民を受け入れる」という方法は、私も悩みますが、悩みに悩んだ末の答えとして「現時点ではナシ」と考えています。

みんなの介護 というと?

乙武 私は“多様性”という価値観にこだわって生きているので、日本という国にもっと外国人に入ってきていただき、様々な文化を注入してもらい、その結果として日本社会に多様性が生まれる…というのが私の願いなんです。そういう意味では、早く日本も移民を受け入れることのできる国にしていきたい。

ただ、現時点でこれだけヘイトスピーチのようなものが横行する中で、現実的に、ある一定数のいざ移民の方々が来られた時に、はたして何のハレーションも起こらないかというと、どうしても疑問が残るんですね。

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