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貧しい高齢者が多いからこそ、 お金持ち向けの商品を 積極的に開発してたくさん売り、 業界に流れ込む資金を増やすべき - 「賢人論。」第6回(中編)ちきりん氏

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「介護に対して一家言もっている」という社会派ブロガー・ちきりんさん。前編「介護業界全体に流れ込むお金を増やさない限り、介護職員の待遇は良くならない」では、大きく“日本の社会保障体制”について語ってもらったが、中編となる今回は、介護にフィーチャーした持論を展開。「介護も、医療で言うところの自由診療にあたるサービスが一般化しないと」。さて、その真意とは?

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/長尾浩之

1,000兆円も金融資産を保有している高齢者が、その1%を介護関連の消費に使うだけで今の業界規模は倍になる

みんなの介護 前編では、介護を含む日本の社会保障体制についてお話しいただきました。さて今回は介護に注目していただきたいのですが。

ちきりん もっとサービスの幅が広がればいいのにと思います。今の介護保険は、排泄補助、食事補助、家事支援などと内容が細かく決まっていて、介護スタッフの方は短い訪問時間の中でやるべきことを全部さっさと終わらせて、次の高齢者宅に移動することを求められています。

でも、毎週一時間、半年間かけて何のことはない会話をするだけで、相手の高齢者の性格が深く理解できたり、相手が一番、心穏やかになるのはどんな時なのか、とか、いろんなことがわかってきます。今はそういう“規格外”の支援は介護保険ではカバーできない。

そういうのが、保険を使わず自費で購入できる介護サービスとしてメニューにあったらいいと思います。そして、スキルが高い人の時給はどんどん上がればいい。

脳の病気で倒れた後のリハビリだって、倒れてからすぐの間にどれだけ集中的に行うかによって、リカバリーが明らかに違いますよね。そういったことについて、もっと科学的な研究が進み、早く医学的に裏付けられたらいいなと思います。そうすれば、そういう時期にはお金を払ってでもスキルの高い介護士さんやリハビリの専門家を雇おうと考える人も増えてくるでしょう。

みんなの介護 何千万円も蓄えがあるような裕福な高齢者であれば、それも可能でしょうね。

ちきりん ひとり200万円のクルーズ代金を夫婦二人分払って楽しむ人とか、数千万円を特殊詐欺に払ってしまう人とか、そういう人をターゲットにしたサービスを、介護業界も売り出すべきだということです。

今、日本の金融資産は 1,700兆円。そのうち6割の1,000兆円を高齢者が保有しています。そのたった1%が介護関連の消費に向かうだけで、今の業界規模は倍になります。それだけ介護に関わる人の報酬も増やせるわけです。

貧しい人が多いからこそ、お金持ち向けの商品を積極的に開発してたくさん売り、業界に流れ込む資金を増やすべきです。そうしてこそ、余ったお金を貧しい人に回せるんですから。

みんなの介護 サービスの内容、そしてそれへの対価(金額)も重要になってきますね。

ちきりん 私の時代は、親が嫌いで、親から独立したいと考える子どもも多かった。でも今は、親と仲良しの子どもが多くて、みんなとても親孝行です。今後は大事な親に質の高いサービスを提供してくれる介護スタッフに対して、付加サービス料を払ってもいいと考える人は確実に増えてきますよ。


「専業主婦なのに夫の親の面倒もみないのは良くない」という感覚をもつ専業主婦はつけこまれる

みんなの介護 ただし、「介護にお金を使う」ということに対する意識が、現状では低いように思います。

ちきりん それも少しずつ変わるんじゃないでしょうか。昔は医療だって、すべて保険でまかなえて当然と思われてましたが、今は必ずしも富裕層でなくても、入院するとなれば「個室の方がいいんじゃない?」という話になります。そういう時こそお金を使うべき、そのために貯めてきたんだ、という意識の人もこれからは増えるでしょう。それよりも難しいのは、保守的な親族ですよね。

みんなの介護 確かに、介護を巡る家族・親族の問題は、横のつながりを重視する地方部に多いという話も聞きますね。

ちきりん 介護が必要になった高齢者の家に専業主婦がいる場合、「他人に介護を任せるとは何事だ!」と言い出す人が必ず出てきます。特に男性など、自分で介護をしたことの無い人ほど、そんなことを言い出す。今は老老介護が多いので、介護するほうも腰や膝に痛みがあって大変なのに。

みんなの介護 「お金は出さないけど口だけは出す」なんてことも言われます。

ちきりん 専業主婦は自分自身でも「専業主婦なのに夫の親の面倒もみないのは良くない」という感覚を持ってるので、つけ込まれがちです。

みんなの介護 「専業主婦だからその人が面倒をみるべき」という風潮ですね。あと、家族の中でも特に、きょうだい間のいさかいがフィーチャーされることも多いようです。

ちきりん 親の介護に絡み、兄弟で揉めるのは珍しくないです。相続の時にも、全く介護をしなかった兄弟が法律的な取り分を当然のように要求したり。介護が始まる前に、しっかり家族間で話し合っておくことが大事ですね。

親の介護が始まる前に、きょうだい間で役割分担を決めておくことが大事

みんなの介護 人手が多いと、そのぶん一人ひとりの負担が軽く思えますけど、そうではないんですね。

ちきりん 両面あるようです。一人っ子の場合、ひとりで親の介護をするのは大変ですが、その一方、介護の方針も一人で決められます。

兄弟がいると「俺は施設に入れるべきだと思う」「私は家で看てあげるべきだと思う」みたいに、意見が異なる場合も多い。死生観に関わる問題なので、50代を迎えた子ども側が意見を統一するのは簡単じゃないです。

みんなの介護 きょうだいで介護に臨むにあたっては、どうすれば上手く事を運べるのでしょう?

ちきりん 誰がお金をだす、誰が施設を捜す、いざというときに誰が仕事を休む、みたいな具体的なことを話し合い、決めておくことでしょう。

それと、親が倒れたときに兄弟が集まって、「お互いにいろいろ不満なコトが出てくると思うけど、なんかあったら本音で話し合って解決しよう。喧嘩だけはしないでおこう。あと、それぞれの配偶者には口を出させないようにしような」って。そういう合意を得ておくだけで、トラブルは避けられます。


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