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介護現場の声が政治に届きづらいのは介護業界が組織として出来上がっていないから―「賢人論。」第8回おときた駿氏(後編)

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「賢人論。」第8回(後編)おときた駿さんは「介護現場の声が政治に届きづらいのは介護業界が組織として出来上がっていないから」と語る

現役の東京都議会議員、おときた駿さんの「賢人論。」も今回が最終回。これまで、東京都の施策であるシルバーパス制度に対して、また都市部から地方への移住についての疑問を呈してきたおときたさんが、今回は国政となる介護保険制度の現状と課題に言及。話題はさらに、現行の選挙制度にまで及び…。若者世代のオピニオンリーダーとして期待がかかるおときたさんの言葉の力に注目!

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/伊原正浩

児童養護では施設が推進されるのに、介護は在宅が推進される。「なぜ?」の議論が圧倒的に足りていない

みんなの介護 過去に「賢人論。」にご登場いただいた方の多くからは、「今後の介護は効率化を考えていかなければ立ち行かない」といった趣旨の言葉をいただいていますが、おときたさんはどのように考えますか?

おときた 効率化を考えた時に、選択肢として「施設での介護」ということが浮かびますが、現状は「在宅での介護」が推進されていますよね。確かに介護の場合は、本人の希望がまずあって、さらには家族の意思や、受け入れる側の施設や自治体の問題もあって。高齢者を地域で見守りましょうという理念はわかりますが、一概に法定基準を当てはめて考えるのはどうかと思うし、そもそも「地域で」「施設で」という議論がなされない上で在宅介護が推進されている現状には疑問を感じています。

みんなの介護 おときたさんが力を入れている児童養護の問題では、介護における「地域で」にあたる里親への委託は、あまり推進されていないのではないでしょうか?

おときた 児童養護でも、もちろん施設で運営した方がコスト的には負担が少ないですからね。例えば1人の職員が6人の子どもの面倒をみるのと、6人の子どもを里親に委託して1軒1軒をソーシャルワーカーが訪問するのとでは、コストが全然違ってきますから。

だから児童養護では、仰る通り、施設での支援が推進されている…という、高齢者の介護とは相反する政策がとられています。子どもたちは、これから成長して、日本を背負って立つ存在なんだから、子どもの方の施策を先にやってよ、と思ってますけどね。もしくは、若い世代の負担を増大させていく仕組みではなくて、世代内で完結する仕組みをつくっていかないと。

みんなの介護 …となると、おときたさんは年金制度について懐疑的、ということでしょうか?

おときた 年金は、国を上げた壮大なねずみ講だと思っていますし、今のままでは制度破綻が目に見えてますからね。介護保険についても、選択制というか、負担と給付を明確にしないといけないと思っています。使いたい人は払えば良いし、使わない人は払わない、とか。

介護保険料の増額が問題になっているじゃないですか。自己負担率を段階的に上げていく方向で動いていますよね。これは後期高齢者医療制度の時もそうでしたけど、1割から2割に上げるのに5年間の緩和措置をとって…となっていますが、緩和措置の期間っている?そもそも何を緩和するの?その間にも若い世代の痛みは倍増していくんですよ?と。その議論がまったく行われていないのは、本当に不健全だと思います。

「賢人論。」第8回(後編)おときた駿さんは「公務員は強大な票を持っているので、そこに対して手厚い政策になってしまう。でも、介護にはそれがない」と語る

公務員の給料は上がるばかり。そのお金を介護・保育に回せないのか?と指摘する政治家はいない

おときた 年金に関しては、もと自由な制度設計ができないものか?とも思っているんですよ。

みんなの介護 自由…というと?

おときた 80歳の時にはすごいお金持ちだったとしても、大げさに言いますけど、120歳まで生きちゃったら財産も枯渇しちゃうじゃないですか。だから、今よりもっと柔軟な設計で、「今はお金持ってるからいらないけれども、100歳を超えたらもらいます」というのをOKにするとか。支給開始年齢を決めない、ということですね。

みんなの介護 どの期間で受け取るようにするかを本人が決められる…ということでしょうか。年金給付額の抑制につながる考え方ではありそうですね。

おときた そのために必要なのは、個人資産を国が把握することだと思っているんですが、今は財産を持っている人、持っていない人というのを全然把握できていないんですよね。日本は自由主義だし、国家にあまり管理されたくはないという人がほとんどでしょう。だけど、現実問題として管理しなくてはというのであれば、そのためにマイナンバー制度が始まっているわけですし、個人の資産を全部把握しましょう、と。こんな話も、普通の政治家は言わないと思いますけどね(笑)。

みんなの介護 言ってみれば高齢者からの反発を呼びそうな意見ですからね。それでもおときたさんは声を上げるんですね。

おときた 政策を考えるだけじゃなくて、世論を喚起していくというのも、僕の仕事だと思っていますから。

みんなの介護 世論の喚起…という意味では、介護現場の声が政治に届かないという意見も多くありますが、その点はどのように考えますか?

おときた 介護も、それから保育も同じなんですが、票につながるボリュームゾーンとして“おいしくない”というのが政治家の本音でしょうね。例えば保育だと、0~6歳の保育が終わった人が敵になるという法則があるんですよ。

どういうことかと言うと、「私たちは頑張って子育てしたんだから、あんた(=子ども世代)も苦労しなさい」という、言ってみれば麗しき日本人の美徳精神というか(苦笑)。すると、親世代に優しい政策が好まれるようになって、子世代は後回しになってしまう…という負のスパイラル。

みんなの介護 それは介護でも同じですか?

おときた ですね。親の介護を終えた50代60代の人は、「子育てしながら親の介護も大変だったけど、後はゆっくりさせてね」と。

みんなの介護 介護職員の声、という意味ではどうでしょうか?

おときた 難しいのは、組織として出来上がっていないという点でしょうね。例えば建設業なんかで言えば、一般社員がいて、係長がいて、課長がいて、部長がいて、労働組合があって…という組織がきちんと成り立っていますよね。でも、介護にはそれがない。離職率が高いし、ベテランの中にも問題提起する人がいない…というか、そもそもそういう労働構造になっていないんですよね。

労働構造がしっかり出来上がっている公務員なんかは、この時代でも給料が上がっていくんですよ。当然ですが、公務員は強大な票を持っているので、そこに手厚い政策になってしまいますよね。その上がっていく給料を介護・保育業界に回せないのか?なんて声を上げる政治家はいないですよね、身も蓋もない話ですが。

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