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介護保険制度は今、ただでさえ危うい制度上にいる。そのことはみんなが認識しないといけない―「賢人論。」第8回おときた駿氏(前編)

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「賢人論。」第8回(前編)おときた駿さんは「介護保険制度は今、 ただでさえ危うい制度上にいる。 そのことはみんなが 認識しないといけない」と語る

現在32歳。東京都議会議員として議員活動に精力的に取り組むかたわらで、ブロガーとしての情報発信にも積極的なおときた駿さん。歯に衣着せぬ物言いによって“炎上”という騒ぎに発展してしまうこともしばしばだが、「都議会議員の給与公開」「都知事候補者取材」など、あっと驚くような切り口での言及が注目を集めている。そんなおときたさんに、介護をはじめとした“社会保障体制の今、そして未来”についてインタビュー。いつものおときたさんの通りの、ストレートな主張に注目して欲しい。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/伊原正浩

若い世代への負担が増えてきている現状は、決して看過できるものじゃない

みんなの介護 ネットを中心としたメディアでのおときたさんの発言を見ていくと、社会保障の中でも、介護よりも保育など将来世代の方に力を入れているようですね。それも、児童養護施設への思いの強さを感じました。

おときた 意識を強くし始めたのは1年半ほど前でしょうか。地元の東京都北区に児童養護施設があって、一回見に来てくれと言われていて。それまではあまり関わりがなかったんですが、そのときに社会的養護が必要な子どもたちというのを初めて見たんですよ。今でこそ「子育て支援」っていろんな政治家が言うようになってきましたが、そうした子どもたちへの社会的養護の分野はまだまだ取り組みが少ない部分でもあって、自分が動かなきゃという思いが強くなったんです。

みんなの介護 児童養護施設というと確かに、字面はよく目にするようであっても、実態はあまり知られていないですよね。

おときた いまだに「家なき子」のイメージが残っている人も多そうですよね(笑)。でも、実は日本に4万人もいて、成長の仕方次第で将来的にちゃんとした労働者、納税者になることを期待できると考えれば、そこに力を入れない理由がないですよね。実際のそうした子どもたちというのは、高卒や中卒で、年をとったらホームレスになったり…というケースが非常に多い。少し予算をかけるだけで劇的に改善できる部分だけに、そこに力を入れないのはもったいないと思うんです。

みんなの介護 そうした活動が高じて北欧やヨーロッパにまで視察に行かれたそうですね。

おときた そうなんです。そのおかげで私も非常に詳しくなりました。とにかく北欧は、「施設」というものがほぼないんですね。ほとんどが里親に預けられて、それを行政がサポートするという仕組みで。ヨーロッパのトレンドというのは、人権の尊重というスタンスから“脱施設”というようになっているんです。

みんなの介護 北欧の福祉が手厚いというのは有名な話ですよね。ただ日本の話になると、保育よりも介護の方が力の入れ方が手厚いですし、実際にかけられている予算もかなりの開きがありますよね。

おときた 以前の「賢人論。」で、乙武さんが「介護は待ったなし。この制度のままでは破綻が目に見えている」と仰っていたのを拝見しましたが、まさにその通りだと思います。国民的議論がないままに制度が進められているのは違うと私も思いますし、このままでは破綻してしまうんじゃないか?という不安はとてつもなく大きいです。

みんなの介護 具体的に、どのあたりに不安を感じますか?

おときた 大きな話で言うと、とにかく財源がなし崩し的にどんどん投入されている点ですよね。例えば介護保険料ひとつをとっても、昨年の改定で6,000円平均くらいにまでなってきて、もう数年後には1万円超えというのも見えてきている。そうしてどんどん、若い世代への負担が増えてきている現状は、決して看過できるものじゃないですよね。

ちょっとSFチックですけど、若い世代が反旗を翻して一斉に海外移住が始まったりしたら一気に崩壊するっていう…ただでさえ危うい制度上にいることだけは、みんなが認識しないといけないと思います。

「賢人論。」第8回(前編)おときた駿さんは「本当に社会保障が必要な介護や保育関連に適正に予算を振り分けることに声をあげていきたい。どんなヤジを飛ばされても(笑)」と語る。

シルバーパスの都の予算は年間170億円にものぼる。それは社会保障の体制として適正じゃない

みんなの介護 現行の社会保障制度を改革しようとすると、高齢者世代からの反発が予想されます。それでもおときたさんは、高齢者に配慮しながらも、現実をしっかりとみた上での意見をしていて、その難しいバランスをとっているように思います。

おときた 私は今、都議会でシルバーパス(※東京都に住む70歳以上の人に1,000円または2万510円で発行される福祉乗車証)について議題にあげているわけですけれども、すると周りから「老人殺しだ」とか言われてしまうんです(笑)。でも、どう考えてもおかしいですよね。高齢者だというだけで電車がタダで乗れるの?じゃあ、今日のごはんに困っているような人がハンバーガー1個をタダもらえるのと何が違うの?おかしいじゃないですか。

だから私は声をあげているんです。「でもねお母さん、これはタダで進呈できているわけじゃなくて、その一枚を発行するのに2万円くらいかかっているんですよ。それを誰が負担しているかといえば、若い世代なんですよ。だから、交通機関を使わなくても元気で歩ける人は歩いて欲しいし、お金に余裕のある方は返して欲しい。そうすれば、その2万円を子育て支援に回すことができるんです」と。言えば納得してくださる方ももちろんいて、そうした理解によってバランスを取っているという感じですね。

みんなの介護 東京都のシルバーパスについてですが、予算規模などは今、どのようになっているのでしょう?

おときた 私が最初に取り上げたのが2年ほど前なんですが、当時で約160億円を予算として計上していて、それが年々、3億とか5億の単位で増えていっているんです。そして今や170億円を超える規模。最初に言った児童養護関連の予算規模と同じくらいですよ。その170億円にものぼる予算のいくらかが児童養護や保育関連の予算に回れば、子どもたちの教育や保育士の待遇改善なども手厚くできるのに。

みんなの介護 そうして声をあげると、議会での反応はどのような感じなんでしょう?

おときた 都議会議員の平均年齢が55歳とかですからね。「お年寄りを大事にしてくださーい」なんてヤジが飛んできます(笑)。確かに高齢の有権者も多いわけで、だから「これが民意なんだよ」という感じでしょうか。だったら…という感じで私が提案しているのが、シルバーパスのIC化なんです。

みんなの介護 現状は磁気カードですよね。

おときた そうです。そのためかはわかりませんが、年に4〜5件は偽造による摘発があるんですよ。表面化しないものも含めれば、もっと数は多いでしょうね。あと、不正ではないですけど、全然健康そうな高齢者がTwitterとかで「タダで高尾山まで行ったぜ」なんてつぶやいてるのを見たりするとやりきれなくなっちゃいます。

IC化すれば、どこからどこまで移動しているとかがわかったり、病院の医療データと紐付けて介護予防につなげられたりとか、いろんな付加価値がつけられるのに。それもしない。そんな社会保障っておかしいじゃないですか。だから、本当に社会保障が必要な介護や保育関連に適正に振り分けていくということについて、これからも私は声をあげていきたいと思っているんです。たとえどんなヤジを受けようとも(笑)。

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