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介護職員は家賃0円。そんな住宅補助をするなど介護職員の負担を軽減する発想の転換が必要―「賢人論。」第9回宇佐美典也氏(前編)

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元経産省官僚・宇佐美典也氏。著書「肩書き捨てたら地獄だった - 挫折した元官僚が教える「頼れない」時代の働き方 (中公新書ラクレ)」「30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと(ダイヤモンド社)」などが有名なだけでなく、各種インターネットメディアで官僚の実態についての赤裸々な発言に注目が集まる若手気鋭の論客である。そんな宇佐美さんに、現在の社会保障体制が抱える問題、そして介護業界の苦境を救うアイデアなどについて話を伺った。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/大木大輔

厚生労働省の官僚には、10年先、20年先を考えている余裕なんてない

みんなの介護 宇佐美さんと言えばやはり「経済産業省の元官僚」というイメージを思い浮かべてしまうのですが、経産省で働いている人から見ると、厚生労働省というのはどのように見えていたのでしょうか?

宇佐美 端からみた厚生労働省ってどういう状況か…、常に問題が起きて忙しそうにしているなぁ、という感じではありましたね。もう、自分たちでも処理しきれないくらいの問題が、常日頃起きていますからね。年金をはじめ医療、介護、労働問題…と所管が広いので仕方のないことかもしれませんが。

みんなの介護 それだけ働いている方も忙しいわけですよね。

宇佐美 そりゃそうですね。霞ヶ関で一番忙しい省庁の一つです。予算編成は厚生労働省を中心に回っていると言っても良いくらい、予算も一番大きいですからね。一般会計だけでも30兆円もあるわけで。予算の大きさに比例して起きている問題の数も膨大なんでしょう。年金と医療と介護の現場では常に問題が起きていますよね。加えて、労働問題も深刻。ブラック企業がどうの、過労で自殺、有給未消化…など、問題が山積みなわけです。

そうした数々の問題に対して日々、対症療法的な制度変更をするだけで精一杯なんじゃないでしょうか。少子高齢化社会ということもあり、とにかく厚生労働省の所管する制度は拡張していく慣性の力なり加速度なりがものすごいんですが、その方向性やスピードがコントールできていないように感じます…よくアニメとかで雪玉がコロコロ転がってどんどん大きくなって誰も止められなくなって、壁にぶつかって壊れる、みたいなのがあるじゃないですか。はたから見ていると厚生労働省はその過程にあるように見えるんですよ。

みんなの介護 目の前の問題の解決にあたっている間に問題がどんどん膨れ上がってしまう、と。

宇佐美 そうですね。だからもう、彼らには10年先や20年先のプランなんか考えられないですよ。それは能力の問題ではなくて、リソースの問題です。昨年厚生労働者の若手職員と飲んだ時は「厚生労働省はあまりにも制度改正の法令業務が忙しすぎて、組織としてじっくりものごとを考える時間がない」とぼやいていました。

官僚になった新卒職員たちは、2週間くらい毎日、介護施設に行って、介護職員の方の仕事をお手伝いするんです

みんなの介護 宇佐美さんご自身は、就職する際に厚生労働省というのは頭になかったんですか?

宇佐美 そもそも官庁への就職を希望する学生は、国家公務員試験…今は総合職試験とかいうのかな?その試験に受かったら3つか4つの省庁の面接試験を受けることができるんです。そうした限られた省庁しか受けられない状況の中でも、厚生労働省というのは人気が高かった記憶がありますね。

私が国家公務員試験を受けていた当時(2004年)、厚生労働省というのは就職先として人気が高かったんですよ。ただ私は性格的に厚生労働省があわなくて、選択肢として考えませんでした。厚生労働省って穏やかで一つのことにじっくり取り組むまじめなタイプの人が多いんですよね。一方で私はせっかちで興味が目移りする傾向があるので、性格的にあってなかったんですよね。

そうそう介護がらみで思い出したんですけど、官僚になった新卒職員たちは、2ヶ月程度各省庁の職場でOJTで働いた後に、全省庁で合同で研修にいくんです。そこでどんなこと何をすると思いますか?

みんなの介護 何でしょう?想像もつかないんですが…。

宇佐美 全員、介護施設に研修に行くんですよ。厚生官僚ももちろん同様で、2週間くらい毎日、介護施設に行って、介護職員の方の仕事をお手伝いするんです。

みんなの介護 官僚の方も、現場の苦労は知っているんですね。

宇佐美 とは言っても、あくまで数週間ですし、「多少は手伝ったよ」って程度ですけどね。新しく連載させていただく「宇佐美典也の質問箱」、1つ目の質問にも「そもそも霞ヶ関の役人の仕事は介護そのものではなく、介護保険制度を運営するために必要な膨大な予算の確保や制度改正を政治家や財務省と調整して実現することです」と答えさせていただきましたが、役人に求められるのは、現場で職員と一緒に働くことではなく、下品なようですけどその職員の方々が働くのに必要な予算、カネを確保することですから。ただこういった研修は、官僚組織も、その大前提となる介護の現場を見る、知る、っていうことはそれなりに重視していることの表れだと思います

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