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「世界未病の日」をつくるべきだと思う。そしてその声を日本が上げていかなきゃ - 「賢人論。」第10回片山さつき氏(後編)

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「賢人論。」第10回(後編)片山さつきさんは「“世界未病の日”をつくるべきだと思う。そしてその声を日本が上げていかなきゃ」と語る

前編中編と一貫して「未病」への理解を訴えてきた片山さん。最終回となる今回は、具体的に未病への理解が高まると社会がどのように変わっていくのか?について伺った。その答えは、やはりと言うべきか、医療費削減。とは言え、理解度を高めるまでに立ちはだかる大きな壁の存在があるのもまた事実で…。未病の周知における現実と理想について、片山さんならではのストレートな意見を伺った。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/伊原正浩(2P、3P)

トイレにセンサーをつければ尿で健康状態がわかる。そんなふうに合理化を図ることが大事

みんなの介護 中編「生産性の低い医療や介護には、IoHHの考え方を取り入れていくべき」では、社会にIoHH(インターネット・オブ・ヒューマンヘルスケア)の考え方を取り入れて、介護や医療という生産性の低い現場を改革していかなければならない、というお話をいただきました。

片山 ウェアラブル・デバイスなどを使って介護にかかる業務を合理化することで、生産性を上げるというのは至上命題ですよね。

みんなの介護 一方では、介護の現場で働いてる方がそうしたツールを使いこなせるかどうかという点が問題になっているという現状もありますが…。

片山 介護ロボットへの疑問が生じているというのはわかっています。確かに介護ロボットでは、介護する人が自分で装着したりするなど、マニュアル的な要素が高い壁になっているでしょう。そうではなくて、例えば健康チェックなどの面だけでも、合理化できることはたくさんあるんですよ。

個室にセンサーを設置するだけで、中にいる人の状態をチェックできるとしましょう。すると、これまでは1時間に1回など定期的に見に回らなければならなかったものが、その移動時間をカットすることができるじゃないですか。あとはトイレ、ですね。

みんなの介護 トイレ?

片山 トイレをそのまま健康診断の場所にしちゃうんですよ。便器にセンサーを設置すれば、尿で健康状態がわかるじゃないですか。

みんなの介護 そういうことができるんだよ、ということを具体的にわかってもらえるような社会にならなければいけませんね。

片山 それが、今からじゃないですか。実は、去年の1月からアメリカの国家予算で、「パーソナルヘルスデータを100万人分とりましょう」という話と、ウェアラブル・デバイスの本格的な開発が始まっているんですよ。アメリカの場合は公的保険がないので、国民を健康にするのに国が動き出すというのは大きな意義があるんでしょうね。

国民皆保険じゃないので、病気になったときのセーフティーネットが少ない。つまり、アメリカの方が必要性が高く…それで、民間の保険会社がすごく熱心に力を入れ始めたんです。もちろん、日本もその動きに追随していますよ。政府も重視していて、実際に保険会社が低額で加入できる保険商品の開発に力を入れ始めていますから。

みんなの介護 安い保険…そのカラクリは?

片山 簡単に言うと、個人が定点観測的にデータを取って、それを保険会社に提出するだけで安くする、と。自分の体を気遣っている人は、生命保険会社にとってはリスクが確実に低いので、低額の保険を用意できますよね。また、パーソナルヘルスデータがあれば製薬会社と提携するなりして薬の開発だってできますよね。

そうそう、開発と言えば、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が国立がん研究センターや東レなどと共同で行っている研究開発がすごいですよね。1滴の血液で13種類のガンを早期に発見できるように…と。ガンを早期に発見することができれば、何回も治療する必要がなく、悪化させる人も少なくなるでしょう。するとガンが原因で亡くなる人も少なくなって…また長寿社会になるわけですが。

「賢人論。」第10回(後編)片山さつきさんは「医師という職業に固執せず医療産業や健康産業など大きなくくりで育てていくべき」と語る

未病の段階で対策できれば、数兆円の医療費削減につながるんです

みんなの介護 長寿化…というよりも、健康寿命を伸ばすことができれば、生産力、生産性の向上につなげることができそうですね。

片山 ガンで死ぬ確率が減ったら、あとは心臓病をはじめとした血管の病気への対策でしょうね。人間は心臓寿命で死ぬと言われていますよね。それが何歳かというのはいろんな説がありますが、人間は60兆個の細胞でできていることもわかってきたし、ミトコンドリアの働きなどもどんどんわかってきました。老化の原因もわかってきたけど、それは現代の医学では止められないので…つまり、人は必ず死ぬということであり、考えなければならないのは、自己規律力のある方は、満足感がある亡くなり方ができるような社会にすることだと思うんです。

みんなの介護 前編「両親、義父母の死をきっかけに「未病」の重要性を痛感した」で、実父母、義父母あわせて4人を看取ってきたと伺いました。その経験もあるのでしょうね。

片山 4人の中で言えば、93歳で亡くなった私の父が、最も満足感が高かったかもしれません。ただそんな父でも、最初に倒れたときに「もうちょっと事前にこういうことがわかっていれば」とか、「認知力が落ちた時点で、本格的なリハビリや生活指導ができていれば…」ということを後悔してしまいますよね。

同じ93歳で亡くなる人がいたとして、倒れて入院して…という回数が1回でも少なければ、自己負担でも数十万円…国の医療費で考えれば数百万円違ってくるわけです。つまり、本人はもちろん国も辛いわけで、それより何より本人の身体的な痛みも違ってくるわけですし。

みんなの介護 片山さんが、著書「未病革命2030」で書いていることも、まさにそこがポイントでした。

片山 未病の段階で対策をすることができれば、高度な医療も必要なく、例えば食事の指導だけで、将来的な、その数百万円がかからなくて済む可能性が出てきますよね。パラメディカル・コメディカルでケアできる。みなさんの日常生活の改善で可能になるんですよ。それで、兆円単位の国家予算を節約できるんですよ。だから、こうした抜本的な医療の合理化に、医師会さえ「うん」と言ってくれれば…。

みんなの介護 医師会を「うん」と言わせる…。イメージでしかありませんが、なかなかハードルが高そうです。

片山 過去、認知症を病気にするかどうかという議論がありましたけど、病気にしちゃったじゃないですか。病気だったら医者が診ないといけないわけですが、きちんと診られていると思いますか?私の印象では、無理ですよ。認知症状が強く出ている人はものすごく手がかかりますし、前段階の方は生活指導やメンタル相談ですし。医師に聞いても「医者だけじゃ対応は無理」って言いますよ。

医師と言えば、日本ではエリートがなる所得の高い職業という認識で固まっていますが、他の先進国ではもうそれほどでもないという現実があるわけですよ。確かに私も、医師という職業を尊敬していますが、そうしたひとつの職種だけにこだわるのではなく、医療産業、または健康産業として育てていかなければダメですよね。それはおそらく、数兆円規模のGDPにつながるはずですし、逆にそれをしないで全部を医療費でまかなおうと思ったら、我が国の財政は医療費負担でパンクしてしまうでしょう。

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