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ゼロ才から50才が「子ども若者」~「覚醒」と「ネットワーク」してほしい

■青森

一昨日から僕は青森県に来ていて、県内の主として行政の子ども若者支援関係者対象に講演している(子ども・若者支援に関する「公開講座」を開催します!)。

大阪から青森はやはり遠いものの、飛行機だとあっというまで、青森は食べ物もおいしく、非常に快適だ。

秋になってくるとこのように少し遠出をして講演する仕事が週一ペースになってくるのだが、今の法人(officeドーナツトーク)を立ち上げた4年前からは特に意識して行政対象の啓発仕事に力を入れている。

僕の法人のミッションは「子ども若者とサードプレイスをつなぐ」であり、直接運営のサードプレイス(居場所支援)のほかに、サードプレイス的取り組みに関心ある地域・団体があれば、謝金額には関係なく訪れてサードプレイスづくりの意義とコツを語る。

こうした、ミッションに沿った動きをするのが正統派「ソーシャルセクター」であって、行政委託事業を必死になってこなしたり、人件費獲得のためになんでも事業をゲットするという、よくある「中小企業化」だけは避けたいと僕は思っている。ミッション→行動指針→戦略(法人・機能別・各事業の3レベル)という、「経営」の教科書通りに法人を運営していきたい。

その「行動指針」のひとつに、「行政補完のプロフェッショナル」という一行も掲げている。

長年のNPO経営や他のNPO/ソーシャルセクター(一般社団や株式会社含)とのつきあいのなかで最近つくづく感じるのは、アマチュアに毛の生えたというと言い過ぎだが、まだまだ「黎明期」にある日本のNPO/ソーシャルセクターをじっくりと育てていく時間はあまり日本にはない、ということだ。

■行政の「まどろみ」

NPOだけでも現在5万に膨れ上がっているものの、その大半(8割)はボランティア型で、残りの2割が事業型だと言われる。

そのなかでも売上3,000万や5,000万を上回る規模のNPOはさらに絞られ、また上記「ミッション→行動指針→戦略」を守る組織はさらに少なくなると僕は読んでいる。事業型であっても大半は、ミッションが薄れていき、「人件費のための経営」「行政のための経営」に陥っているはずだ。

さらにNPOに集まる人材はやはりまだまだ「ボランティア」体質の人が多く、優秀な人材は企業と行政に行くのが日本の労働現場だと思う。

現在、なんでもかんでもNPOという風潮があるかもしれないが、そこに集まる人材はボランティア好きの「自分探し」系の若者がまだまだ多い(それを責めているわけではなく、そこにも長所はある)。

やはり「人材」は、企業と行政に行く。

特に、住民サービスの中心である「行政」の人々は、知識も多くモラルも高く日本人的堅実さも兼ね合わせる、基本的に「優秀」な人々が集合していると僕は感じる。

行政批判は簡単だが、そもそも行政にいる人々は優秀なのだ。

が、「日本」という慣習・システムが、それらの優秀な人々のポテンシャルを抑圧している。タコツボ社会・3年で移動社会・責任分散型社会・非戦略社会・「空気」社会等、次々思いつく否定的風土の集積である「行政システム」が、優秀な人達をある種の「まどろみ」に追いやっている。

僕はこの「まどろんだ人々」を覚醒させるほうが、アマチュアなNPOの人々が育つよりまだ早い、と思い、青森ほかの各地へ出かけている。そして、たとえば前回当欄で書いたようなこと(子ども食堂は、貧困者にとって「敗北」)、行政の「覚醒」と「ネットワーク」が何よりも重要だと語りかける。

■シングルグランドマザー

日本の子ども若者問題の対象者は、現在、ゼロ才から50才まで拡大している。児童虐待被害者(ゼロ才)から始まり、発達障がいの発見、不登校の出現、いじめ、ひきこもり、性的マイノリティへの支援、ニート問題、そして高齢ひきこもりと、ぱっと思いつくだけでこれだけあげることができ、僕が現実に知っている「高齢ひきこもり」者はすでに50才近くなっている。

50才の高齢ひきこもりの母はすでに80才前後になっており、父は鬼籍に入っている。また、ゼロ才児の虐待母はまだ19才であることも多く、19才の母も過去虐待を受けており、そしてその結果ある種の発達障がい(杉山医師の言う「第四の発達障がい」)を抱えている。

その19才の母を虐待しつつ育てた祖母はまだ40才前後であり、シングルマザーならぬシングルグランドマザーだ(たとえば僕のこの記事参照→「40才のおじいちゃんおばあちゃん」が子どもの貧困を生む)。

要は、日本の子ども若者問題はあまりに射程が広くなってしまった。言い換えると、どんなプロフェッショナルでも、ある1ジャンルのプロフェッショナルだけでは、1ケースだけでも広大な問題領域を抱えてしまっている現在のクライアントに十分に対処できない。

現在は、たとえば生活保護の担当者は、目の前に訪れる受給者の背後にたくさんの問題が見え隠れするものの、日々の多忙さから保護費を支給するという仕事だけに集中しがちになる。その背後にある、子どものひきこもりやネグレクトにまで細かく配慮する余裕がないし、またそれを細かくやり始めると職員側がバーンアウトしてしまう。

■「覚醒」と「ネットワーク」は同時に進む

けれども、上に書いたように、複合的課題を抱える日本の子ども若者問題はすでに待ったなしになっている。

ここは、元々優秀なポテンシャルをもつ行政の人々を「覚醒」させ、それぞれの分野同士が有効につながることのできる「ネットワーク」を形成していくことが必要だ(僕の法人の実績では、大阪市住吉区の委託事業内で4年間地道に積み上げている→住吉区子ども若者育成支援事業

児童相談所、生活保護や保健福祉窓口(市役所等)、小中の不登校担当や高校の不登校担当(教育行政)、障がい者就労(たとえば障がい者就業・生活支援センター)、若者就労(たとえば若者ハローワーク)、学習支援(自治体によっては社協)、「パラ」行政も含めると、いずれも各分野では「プロ」が揃っている。

が、残念ながら、それぞれがタコツボ内で仕事しているのが現実だ(あるいは案件が多すぎてデータ共有だけで会議時間が過ぎる)。そのリジッドな組織形態を、相対的貧困者2,000万人という大きな塊が崩そうとしている(児童虐待分野では連携会議が制度化されているものの、当事者の「18才」段階で終了してしまう。PTSDは18才から本格化する)。

僕はほかに、広島県ほかでも行政を中心にスーパーバイズしている。現在はまだこうした「覚醒」と「ネットワーク」の必要性を訴える段階であり、現実には数年単位で訪問しないことには「覚醒」そのものの動きも立ち上がらなかったりする。

が、地道に人間関係を築けば「覚醒」の緒は見えてくる。そして「ネットワーク」はそれと同時に進むことも住吉区では実感している。是非とも各地でこうした点を意識して事業を組んでほしい。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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