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高収入でも「他人の幸福は飯がまずい」人は富裕層になれない

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行政書士・不動産投資顧問
金森重樹=文

友人や同僚より貯金・収入が多ければ満足?

前回は、「一国の時系列で見ていって、国全体が豊かになっていっても、(国民の)幸福度は変わらない」というアメリカの経済学者リチャード・イースタリンの説を紹介しました。

この通称「イースタリン・パラドックス」の理由について、イースタリン自身による消費規範仮説や、デューゼンベリーによる相対所得仮説を挙げながら考えてみました。

詳細は過去の記事「『人より金持ちでいたい人』は、富裕層はムリ」(http://president.jp/articles/-/19876)をご覧いただくとして、結論的に言えるのは「人はお金持ちになりたいのではなく、他人よりお金持ちでいたいだけだ」という私の意見を述べました。

今回は、この持論を裏付ける調査について考えてみます。

まず、この調査を見てください。サラ・ソルニック(バーモント大学経済学部アソシエイトプロフェッサー)とデビッド・ヘメンウェイ(ハーバード大学公衆衛生大学院教授)は、次のどちらの世界に住みたいか、ハーバード大学の学生と職員に質問を行いました(Is mor always better? A Suvey on Positional Concerns,Jounal of Economic Behavior and Organization)

1. 自分は収入が5万ドルで他のすべての人は収入が2万5000ドルの世界
2. 自分は収入が10万ドルで他のすべての人は収入が20万ドルの世界

結果は、56%の学生が1を選びました。

1と2の絶対額を比べてみてください。2では1にくらべて収入の絶対額は2倍です。

にもかかわらず、1と2の世界しかこの世に存在しないとして過半数の調査対象者が選んだのは絶対額で半分しか収入がないが、相対的収入の多い1のほうでした。

仮に、人が単にお金持ちになりたいのなら、1と2から選ぶ場合、絶対額の多い2を選んでもいいように思います。

ところが、1を選ぶというのは、人がたとえ絶対的収入が減っても相対的収入(周囲と比べての収入)を重視しているということを示しています。

つまり、人は純粋にお金というものを数量として欲しているのではなく、社会における相対的に高い地位(あるいは高収入の職業)を欲しているというのが真相かと思います。

人は、お金ではなく「地位」の上下にこだわる

先日公開された「プレジデント・オンライン」の慶應義塾大学大学院特任助教・若新雄純さんの連載「ニートたちが教えてくれた、『お金よりも面倒くさい』もの」(http://president.jp/articles/-/18582)の中で、ニートたちの間では、金銭的報酬に貪欲ではない一方で、立場をめぐる争いが発生したと述べられています。

これは、若新さんが手がけるニート株式会社において、ニートという金銭の(ほとんど)絡まないと思われる社会的集団における「相対的地位を巡る欲求」が表面化したことによって発生した争いだと思います。

では、「人はお金持ちになりたいのではなく、他人よりお金持ちでいたいだけだ」という場合のこの「他人」とは誰か?

以前、ボストン大学社会学教授のジュリエット・B・ショアのテレコムの社員を対象にして行った調査についてお話したと思います(詳細は「『みっともなく生きる』これが富裕層への近道だ」http://president.jp/articles/-/16400)。

大企業で正規雇用者として働く中流階級および中流階級上層の人々を対象にしたこの調査での準拠(所属)集団とは下記のようなものでした。

問:誰があなたの最も重要な準拠集団ですか?
友人 28.2%
同僚 22.1%
親戚 12.1%
同じ宗教の人 11.4%
同じ職業の人 8.9%
隣人 2.2%

(出典:『浪費するアメリカ人』 ジュリエット・B・ショア著)

テレコムの集団は、大企業で正規雇用者として働く中流階級および中流階級上層の人々であり、これが必ずしもアメリカ国民全体を代表するとはいえないですが、少なくとも中流階級および中流階級上層の人々を代表する傾向であると考えられます。

隣人については、ハーバード大学のエルゾ・ラットマーは2005年に発表した論文で『隣人達の収入があがることは、自分の収入が減ることと同じ程度の不幸をもたらす』ことを示しています(Neighbors as Negatives: Relative Earnings and Well-Being luttmer 2005)http://www.nber.org/papers/w10667.pdf

「他人の幸福は飯がまずい」といわれてきたことが、その人が単に底意地が悪いのではなく人間本来のありのままの自然な姿であることが、ここでは明らかにされています。

エルゾ・ラットマーの調査結果は本連載で書いた「低収入の街が次の富裕層を育てている」(http://president.jp/articles/-/16924)の理論的裏づけになっています。周囲が金持ちばかりの地域に無理して住み、隣人というポジションを得るくらいなら、低収入の街に住むほうが資産も作れるし、幸福度もあがるということです。

冒頭のサラ・ソルニックとデビッド・ヘメンウェイの調査の例でいえば、1の自分は収入が5万ドルで他のすべての人は収入が2万5000ドルの世界(低収入の街)のほうが、2(いわば富裕層の街)よりもいいということです。

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