記事

人生を24時間にたとえると、60歳以降は夜。仕事が終わってさぁこれから…という時間を楽しまずに、僕は死にたくない - 「賢人論。」第11回(中編)小黒一正氏

1/2
「賢人論。」第11回(中編)小黒一正さんは「人生を24時間にたとえると、60歳以降は夜。仕事が終わってさぁこれから…という時間を楽しまずに、僕は死にたくない」と語る

公共経済学を専門とする法政大学教授の小黒一正氏に、前編「“地域包括ケア・コンパクトシティ”で、死ぬまでのライフスタイルをコーディネートする」で、地域包括ケアシステム・コンパクトシティについての詳細を伺った。その概要については前編をご覧いただくとして、中編となる今回は、そのシステムを設計・運用していくために必要な取り組みについて伺った。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/伊原正浩

地域包括ケアシステムは、厚生労働省や国土交通省が具体的な“絵”を公表しないと市民の理解を得られない

みんなの介護 前編「“地域包括ケア・コンパクトシティ”で、死ぬまでのライフスタイルをコーディネートする」では、小黒さんが力を入れてらっしゃる「地域包括ケア・コンパクトシティ」構想についてのお話をいただきました。では、こうした取り組みが広まっていくためには、どうしたら良いと思いますか?

小黒 簡単に言うと「ワクワク感」だと思うんですよね。こういうのって文章にしても伝わりづらいですし、最初に立案する人…例えば厚生労働省でも国土交通省でも良いんですけど、そもそもイメージがはっきりしていないのでは?と思うんです。具体的な絵を見せるとか、動画を作って公表するとかしないと、一般市民の理解を得るのはなかなか難しいと思います。

みんなの介護 映画やテレビドラマなんかを作ったら面白く観られそうですよね。

小黒 良いと思いますよ。過去を振り返ると、軽井沢だって昔は全然おしゃれな街なんかじゃなかったですからね。メディアの力に拠るところがかなり大きいと思います。例えば熱海とか別府とか、温泉が湧いているようなところなんか、これからは面白そうですよね。東京都心部からだったら、那須塩原とかも良さそうですよね。リニアが開通すれば、東京と名古屋圏の街のアクセスも良くなりますし。

そうした街に「老後はここに住みたいなぁ」というイメージを植え付けることができれば、必然的に人が移住するんじゃないかな?と。

これは退職した方に聞いた話なんですが、退職者というのはだいたい2つの階層に分かれるらしいんですよ。ひとつは、時間つぶしのため、朝から喫茶店などに通う人たち。もうひとつは公園などに通う人たち。

みんなの介護 なんとなくわかるような気がします。お金に余裕のある人たちと、そうでもない人たち…という感じでしょうか。

小黒 その通りです。喫茶店…例えばドトールなどの割りと安価な店に通ったとしても、1日200円くらいはかかって、それがひと月となると結構な金額になりますよね。国民年金で暮らしている方には厳しい出費ですよね。

一方で、朝から公園に行ってラジオ体操をしたり、太極拳をしたり。あまりコストをかけずに楽しめる環境で生活しているわけです。そういう意味で言うと、前編でお話しした中間市の事例というよりは、私の理想としては、農作業をする場所があって、緑に囲まれた公園があって、ベンチに座っておしゃべりして…という感じなんです。

みんなの介護 のんびりと過ごせそうで、とても魅力的です。

小黒 一生を24時間で考えると、リタイアするのは夜の6時くらいらしいんですよ。20歳くらいが朝6時、午前中が終わる12時がちょうど40歳くらいで、そこからまだ6時間位働いて夕方になる。で、60歳くらい。人生が80年と考えると、それから20年間、つまり夜6時以降なんて一番楽しい時間じゃないですか。仕事も終わって、さぁこれから何をしよう!?って。

生まれてから深夜から早朝は周りも真っ暗で何もわからなくて、朝がきて学生生活が始まって、昼になって働いて、働いて働きずくめで、それが終わってようやく本当に自分がやりたいことができるときになったのに、その時期を楽しまないで、私は死にたくないんです。

「賢人論。」第11回(中編)小黒一正さんは「今の時代に大切なのはフローじゃなくてストック。資産をつくっていうという発想がなければ超高齢社会を乗り切れない」と語る

これからの社会では、「街」というストックの資産を形成することを重視する必要性がある

みんなの介護 こうした「地域包括ケア・コンパクトシティ構想」を実現するためには、国としても大きな予算が必要になってくるのではないでしょうか?

小黒 確かに、それはそうでしょうね。でも、社会保障全体で見ると、社会保障のお金ってものすごいたくさんあるんですよ。今で110兆円くらいある…そのうちのたった1%を「地域包括ケア・コンパクトシティ」の実現に回すだけで毎年1兆円、5年で5兆円もの予算を確保することができると考えたら、十分にいろんなことができるでしょう。要は、社会保障費の資源配分をちょっと変えるだけでいろんなことができるんじゃないか?という提案をしたいんです。

みんなの介護 理に適っていると思いますが…それができない理由は?

小黒 お役所は縦割りだから。

みんなの介護 なんだか、その弊害をいろんなところで耳にします。

小黒 ただ、そうした弊害があったとしても、きちんと考えなければならないことがあります。それが、フローとストックという考え方ですね。

人口が減少していくことが確実な高齢化していく社会は、ストックを重視しなければならないんです。一般企業で言うと、PL(損益計算書) とBS(貸借対照表)というものがあって、人口減少や高齢化で重視しなければならないのがBSの方。

みんなの介護 PLは「ある一定期間における経営成績を表す財務諸表」、BSは「ある一定時点での財政状態を表す財務諸表」という認識で良いでしょうか?

小黒 その通りです。例えば100人の人口が50年かけて半分の50人になると仮定しましょう。その場合、流通させるお金、つまりフローを重視するのではなく、その50年の間にどれだけの資産や貯蓄、つまりストックできるかということをしっかり考えなければなりません。だけど今の状態は、その発想がまったくない。しっかりした資産をつくっていくという発想をしなければ、これからの超高齢社会を乗り切ることはできないと思います。

みんなの介護 その資産というのが、小黒さんが提案する「地域包括ケア・コンパクトシティ」であり、それを実現する街、ということですね。

小黒 そういうことです。例えばCCRCなんかは、以前の総務大臣でもある増田寛也さんもやった方が良いと仰っているんですが、なかなか上手くいかなくて。やっぱり一番重要なのはまちづくりみたいなものであって、全体をコーディネートする意志をもって、何年間もやり続けないと。10年、20年のスパンで、ストックをいかにつくっていくかを考えなければならないですよね。

あわせて読みたい

「介護」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    17時に新橋で飲む人はどんな人?

    常見陽平

  2. 2

    カジノ反対派 ブーメラン続発

    木曽崇

  3. 3

    トランプ氏 蔡氏との会談の意味

    門田隆将

  4. 4

    つるの剛士を批判 リテラの矛盾

    和田政宗

  5. 5

    公営賭博だけは許す共産の謎論法

    木曽崇

  6. 6

    "首相はロシアの腹芸に騙された"

    江田憲司

  7. 7

    専業主婦手伝わない夫に非難殺到

    キャリコネニュース

  8. 8

    質の低い医療情報を好むユーザー

    赤木智弘

  9. 9

    インドネシアでクーデター未遂?

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  10. 10

    GPIF2.4兆円黒字 民進党の対応は

    吊られた男

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。