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今の介護はある意味“負のコーディネイト”になってしまっている。その定義から変えたいんです - 「賢人論。」第11回(前編)小黒一正氏

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元大蔵省(現財務省)官僚にして、法政大学経済学部教授。公共経済学を専門とする小黒一正氏は今、世代間衡平や財政・社会保障を中心に研究を進める中で、財務省主催の「財務総合政策研究所」で「持続可能な介護に関する研究会」の研究員としても活躍した。そんな小黒氏が提唱する「地域包括ケア・コンパクトシティ構想」の詳細について伺った。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/伊原正浩

「地域包括ケア・コンパクトシティ」で、死ぬまでのライフスタイルをコーディネートする

みんなの介護 小黒さんは、財務省が主催していた「持続可能な介護に関する研究会」のメンバーとしてもご活躍でしたね。どうして介護に興味を持ったんですか?

小黒 噛み砕いて言うと…もう少し年月が経って、我々の世代が老人ホームへの入居を考える時に、もう少しグレードアップして欲しいな、という思いがあったからです。もちろん、今、介護業界で頑張っておられる方も、真剣に問題に立ち向かっているとは思うんですが、もう一段階上のステップに行けるんじゃないか?と。

みんなの介護 それは、設備とか居心地…とかの面の話でしょうか?

小黒 狭義ではそれもありますが、もう少し広く考えて、「定義を変える」という感じでしょうか。今の介護ですと、介護が必要になった高齢者をいかにして面倒をみていくか…という、ある意味で“負のコーディネート”みたいになっていますが、その逆を考えたいんです。極論でいうと、財産などいろんなものを含めて、最期の最期、死ぬまでのライフスタイルをトータル・コーディネートする、という感じですね。

みんなの介護 それが、提唱されている「地域包括ケア・コンパクトシティ」なんですね。そうした住まいだったら小黒さん自身も入りたい、と。

小黒 長寿化はどんどん進んでいて、老後の時間は本当に長くなりましたよね、昔に比べて。その残った時間全体を含めて「元気なとき」「元気じゃないとき」を交互に繰り返したりするのは間違いないわけで、だからこそ生活全体のバリューを上げることを考えなければならないと思うんです。

私が今、一番注目しているのが、九州・中間市のウエルパークヒルズというコンパクトシティで、特養や老健、ケアハウス、病院が立ち並んでいて、有料老人ホームもあり、スーパーやアミューズメント施設、スーパー銭湯があって、近くに映画館もある。これらが、中心から徒歩5分圏内にあるんですよ。これが目指すべき形に一番近いような気がしています。

みんなの介護 近い…というと、これが理想というわけではないんですか?

小黒 そうですね。足りないものがいくつかあって…最も大きなものは、全体をコーディネートする司令塔のような人でしょうか。こうした取り組みを行うにあたって問題になってくるのが、それぞれを管理する所管がバラバラだということなんです。厚生労働省ひとつをとっても、介護を担っている局と医療を担っている局が違いますし。ですから、そうしたものをひっくるめて、全体をコーディネートする人がいないと成功しづらいと思います。


コンパクトシティ構想を推めるうえでは、エリアマネジメントをできる人材が不可欠

みんなの介護 この中間市のコンパクトシティは、民間の社会福祉法人の主導で行われているんですよね。

小黒 そうですね。構想から20年以上かけて、ようやく今の形になってきました。もともとは更地で、住所すらない場所だったことを考えれば、コツコツと積み上げてきたことに敬意を表したいくらいです。

みんなの介護 今、世間的には「地方創生」や「日本版CCRC」といった言葉が取り沙汰されていますが、これは国としての考え方ですよね?であれば、国主導の施策として推めていくものにはならないのでしょうか?

小黒 そうではなくて、国としては環境を整備するだけにとどめた方が良いんですよ。国がやろうとしても、さっき言ったように所管が大きすぎて統制が取れませんから。また、自治体レベルでやろうとしても、役所の人間はだいたい3年とか5年とかの任期で異動があるので、長期にわたって取りまとめてくれる人材を確保できないんです。

コンパクトシティ構想を推めていくためには、全体をコーディネートできる人、エリア単位でマネジメントできる人が必要になってくるので、地域包括ケアとあわせて街づくりを引っ張っていってくれる人材が、民間に必要になってくるんです。

みんなの介護 そういうことなんですね。それにしても、こうした中間市での取り組みのようなものが全国的に広まっていけば、言葉だけじゃなくて現実味を帯びてくるように思います。

小黒 今、注力されている地域包括ケアにしても、地方部に行けば、車で30分くらいかかるようなところでさえ、「地域でケアしましょう」となっていますよね。これはやはり非現実的で、介護に関わる人材が不足する中で、そんな移動距離をみて回るということにも限界があるでしょう。それでも頑張ってやっていこうと思っている人でも、頑張りすぎて疲弊していくのは目に見えています。

中間市の他に岐阜市では、岐阜駅の駅ビル「岐阜シティ・タワー43」でコンパクトシティを目指す施策が進んでいますし、流れとしては向いてきている気はします。ただし、無理して都市部などに作る必要はなくて、地方発信で良いと思います。

特に地方部などでは、今でもショッピングモールが続々とできるじゃないですか。あれは、土地が余っているからであって、そうした土地を有効活用するための施策としても、コンパクトシティ構想を推めていくことは理に適っていると思います。

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