記事

『君の名は。』は、何故ここまでヒットしたのだろうか

1/2
f:id:shiba-710:20160914120018j:plain

■「オタクとリア充」みたいなことじゃない

『君の名は。』を、もう一度観てきた。

www.oricon.co.jp

正直、ここまでヒットすると思ってなかった。興行収入ランキングは3週連続1位。累計では早くも動員481万人、興収62億円を記録している。すごいことになっている。『シン・ゴジラ』も社会現象的なヒットを巻き起こしたけれど、それを上回る成績。評判もすこぶる良い。

なので、今日は『君の名は。』について、ちゃんと書いておこう。僕も試写で観たときには絶賛モードだったけど、ここまでの現象を巻き起こすことは予期してなかった。

なんでこの映画はここまでヒットしたのか? 

批評家の東浩紀さんは『君の名は。』のヒットについて、『シン・ゴジラ』とあわせて、こうツイートしている。

togetter.com

その前後のツイートで東さんが引用している批評家の渡邉大輔さんはこう書いている。

『君の名は。』をその深部で規定しているのは、新海がその出自としてもっている、ゼロ年代の美少女ゲームのジャンル的想像力だといえると思います。
今回の空前の『君の名は。』現象が興味深いのは、かつて「10~30代の男性オタク」をおもな消費者にし、しかも男性向けポルノメディアのムービー制作にもかかわっていた新海が、明確にそれらかつての物語的/ジャンル的記憶に「原点回帰」して作っているはずの作品が、セカイ系も美少女ゲームもまったく知らない「10代の女性観客」を中心に、目下、前代未聞の大ヒットを記録しているという事実でしょう。きわめてニッチなファンに向けて、マイナーなジャンルから出発した作家が、ある種の「原点回帰」した作品で、破格のメジャー性=国民性を獲得してしまった。ここには、多くの「捻れ」が潜んでいます。

realsound.jp

 でもこれ、「オタクとリア充」みたいな話じゃないと思うんだよなあ。

『君の名は。』のヒットの背景には、新海誠監督が考えた「エンタテインメント性」の徹底がちゃんとあると思う。社会論というよりも、むしろ技術論として還元できる話だと思う。

たしかに渡邉大輔さんが指摘してる通り、「ループ的な物語構造」は、ある意味、今の時代の作劇としては定番のネタだと思う。『涼宮ハルヒの憂鬱』とか『時をかける少女』とか『魔法少女まどか☆マギカ』など、先例がたくさんある。

物語構造としては「ベタ」である。でも『君の名は。』が優れていたのは、それをどう見せるかという観点だったと思う。SF的な難解さよりも「胸キュン」を優先させる演出。そして、疾走感あるストーリー展開の巧みさなのではないかと思う。

■ エンタテインメント性とは「時間軸のコントロール」

新海誠監督は、この『君の名は。』を作るにあたって、エンターテイメント性を重視したことをインタビューで語っている。
今ならば、もっと鮮明にエンターテインメントを描けるという感覚はありました

kai-you.net

では、新海誠監督の考える「エンターテイメント性」とは何か。過去の作品と今作で大きく違うのは何か。それは「時間軸のコントロール」だ。美しい絵という「静的」な魅力はすでに自身の強力な武器として持っている。けれど今回に新海誠監督が意識したのは「動的」な魅力を映画にいかに宿すかだった。
とにかく見ている人の気持ちになって、できるだけ退屈させないように、先を予想させない展開とスピードをキープする。一方で、ときどき映画を立ち止まらせて、観客の理解が追いつく瞬間も用意する。それらを作品のどの場面で設けるか、徹底的に考えました。
『君の名は。』の上映時間である107分間をいかにコントロールするかは、僕にとっての大きな仕事でした。

前述のKAI-YOUのインタビューで新海誠監督はこうも語っている。

■「音楽×映画」の相乗効果

そしてやっぱり、その上で大きな役割を果たしたのがRADWIMPSの音楽だったと思う。

以前にもリアルサウンドの原稿で書いたけれど、『君の名は。』では、これまでのアニメーション映画の文法からは逸脱するような演出がなされている。

realsound.jp

主題歌は「前前前世」含めて全部で4曲。よく思い浮かべる「エンドロールに流れる歌」だけじゃない。歌モノの楽曲がストーリーの中に不可欠なパーツとして位置している。


RADWIMPS 前前前世 (movie ver.) MV

RADWIMPSのアルバム『君の名は。』の初回限定盤DVDに収録された新海誠監督とバンドとの対談では、新海誠監督はこんな風に語っている。

RADWIMPSって、アニメーション映画の中にどうハマるんだろう、本当に可能なのかなって。下手をすると、その強度みたいなものに飲み込まれて、「ラッドの映画だったね」ってことになっちゃいかねない。
だから、劇伴とかBGMとか主題歌みたいな考え方じゃなくて、神木隆之介さんや上白石萌音さんみたいな登場人物の一つとしてRADWIMPSの楽曲がある。そういう設計の仕方をしないと上手くいかないだろうなと思いました。
君の名は。(初回限定盤)(DVD付)
君の名は。(初回限定盤)(DVD付)

RADWIMPSの楽曲があったことが、新海誠監督の意識した「107分間をいかにコントロールするか」という狙いの照準を定める助けになったはず。実際、ビデオコンテを作ったこと、その時に音楽が重要な役割を果たしたことも以下のインタビューで語っている。

『君の名は。』のビデオコンテでは効果音も全部入れているんです。仮の効果音なんですけど足音とかも入れていて、どちらかというと絵を書くというよりは、音のトラック、音のリズムでどうやって107分間聴かせるかということをやっていきました
RADWIMPSとのコラボレーションの中で彼らが作ってくれた音楽というものが、物語の形を少しずつ変えていったというのはあります。今回音楽はすごく大きな要素だったので、彼らの疾走感というものが物語に出ています。例えば主人公の2人がお互いにスマホでやりとりをするだけではなくて、体に何かを書くというコミュニケーションは最初の脚本では無かったんです。RADWIMPSからあがってきた曲を聴いていたら、勢い的にスマホだけじゃおさまらずもっと外側に刻み付けるような行為をやらないとこの絵に音楽が乗らないという気持ちにさせられて、シナリオが変わっていきました。

www.sensors.jp

初回限定盤DVDの対談でも、物語と音楽が一体だったことを語っている。
最初にあげていただいた「前前前世」や「スパークル」があったから、それを聴きながらコンテを書いていったので。だからもう、初めから一体だった感覚はありますね。「この言葉なんだ、この作品で言おうとしているのは」というのが歌詞の中に沢山あった。

あわせて読みたい

「君の名は。」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    足立議員の生コン疑惑発言はデマ

    辻元清美

  2. 2

    「立派な国」ランキング 日本は

    長田雅子

  3. 3

    よしのり氏が文春デスク写真公開

    小林よしのり

  4. 4

    1億円稼ぐチャットレディに密着

    AbemaTIMES

  5. 5

    金正恩氏 ちびデブ発言に怒りか

    高英起

  6. 6

    よしのり氏「文春に完全勝利」

    小林よしのり

  7. 7

    山尾氏×望月記者 女の政治を語る

    NEWSポストセブン

  8. 8

    よしのり氏「文春から抗議文書」

    小林よしのり

  9. 9

    石破氏「民進解消で政治が前進」

    石破茂

  10. 10

    民進から資金? 無所属の会に疑問

    早川忠孝

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。