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未来を見据えたスキルセットの転換と世界最適配置を目指す

文:キャプラン株式会社 代表取締役社長 森本 宏一

未来に向けて、いま企業が直面する課題は何か、その課題に対する処方箋はあるのか、さまざまな角度から考える連載企画「未来を創る人事」。第4回は、付加価値創造型人材を育成し、世界レベルで最適配置していくための人事のあり方を考えます。


「世界最適配置」で競争を勝ち抜く


現在、そして将来的な市場を考えたとき、日本国内は人口減少が進む一方で、世界では人口が70億人を超えてますます増加し、デジタル革命によって人々が国境を越えてつながっていきます。製造業で開発・生産・販売を複数の国にまたがって行うことも珍しくありません。
つまり、地球を一つの資源、一つの市場と捉えてベストな経営をしなければならない時代に突入しているのです。

そのような環境では、要員計画も変化します。これまでの日本企業は、日本国内で採用を行い、国内の拠点でローテーションして人材を育成してきました。しかしこれからは、必要とする人材を世界中から採用し、タレント/スキルを可視化して、目標管理や評価・報酬管理を行うことが求められます。
国籍の違いや、入社年次などにかかわらず、会社の成長に必要な人材を抜擢する。そんな「世界最適配置」ができなければ、真にグローバル化した競争を勝ち抜くことは難しくなるでしょう。

こうした動きに伴って、人事の仕事も進化が必要です。これまでのような給与・労務などの仕事にとどまらず、いかに世界中の優秀な人材を発掘し、モチベートし、活かしていくかを考え実践する「スーパー・キャリアコンサルタント」としての役割が求められるようになると考えられます。

そのためにも、タレントマネジメントシステムのような日々進化する最新ツールを使いながら、異文化や異なる価値観を理解した上で、自社のフィロソフィーやカルチャーをグローバルで浸透させ、企業の成長を目指していく。それがこれからの人事に求められる仕事ではないでしょうか。

求められる「付加価値創造型人材」


市場が変わり、ビジネスのあり方が変われば、個人に求められる能力も変化します。
これまで求められてきたPC操作や翻訳・通訳などのオペレーティブな仕事は、早晩AIが実用可能なレベルで行えるようになると考えられます。

そのとき一人ひとりに求められるのは、「付加価値創造型」の人材になることです。新しいモノやサービスを創造し、今までにない価値・イノベーションを生み出し、情熱をもって人に伝える発信力を持つこと。さらに、異なる文化や価値観を持つ人とチームワークを組んで、多様性を活かしながら成果を導くことも必要です。

近年、アメリカで子どもの頃からプログラミング教育に力を入れたり、日本でもアイデアソンやハッカソンに注目が集まっているのは、こうした価値創造の力を高めるためだと考えられます。

「こんなものがあったらいいな」と思うものを企画し、プレゼンテーションし、実際に作ってみる。発想はもちろん、チームワークやリーダーシップの発揮にも役立ち、人を喜ばせる経験にもなるこうした手法は、これからの教育・研修の大きなヒントになると考えています。



「世界標準」と「多様性」への視点


企業から私たちにいただく教育・研修のニーズの変化にも、付加価値創造型人材への期待を見て取ることができます。英語、異文化理解、外国人のマネジメントの3つをセットとして学ぼうという傾向が表れており、英会話も交渉やプレゼンテーションなどビジネスで実践的に使える英語スキルが求められるようになっています。
また異文化理解についても、欧米やアジアだけではなく中東やアフリカなどを含めた広い視野で検討する企業が増えています。

さらに、研修のロケーションも3つに拡がってきました。
一つは、日本にいる日本人にグローバルな視野を持ってもらうためのもの。
二つ目に、海外にいる駐在員やローカルスタッフに対するグローバル教育です。日本から見たら海外の人材でも、現地ではローカル人材ですから、グローバル人材として育成することが必要なのです。
そして三つ目に、グローバルに活躍できるリーダー教育。これは世界から選抜したリーダーを、シリコンバレーやシンガポールなどに集め、イノベーションマインドや急成長する市場のパワーを体感するために行うものです。

このようにグローバルスタンダードに対応していく一方で、企業は今後、個人の価値観や考え方の多様化にもよりいっそう目を向けていかなければなりません。シリコンバレーなどでは、一社に雇用される形態から、ポートフォリオワーカーとして数社と契約して仕事をする人が増えています。世界を旅しながら仕事をするエンジニアやコンサルタントがいたり、1年のうち9カ月働いて3カ月休むという人もいます。

そこまでの大きな変化でなくても、仕事や家族生活への意識・考え方は、一人ひとり異なります。
そのため、軸としてのグローバル人事制度は必要ですが、ローカルの人事が現実にある多様性のギャップに対応し、きめ細やかなフォローや仕組みづくりをするという両輪で回していかなければならないと感じています。

〝おもてなし〟という強みを世界へ


グローバル化というのは、何も海外で働くことだけを指すものではありません。観光立国を目指す日本では、異文化の方と触れ合い、ともに働き、ビジネスをする機会は今後ますます増えるでしょう。
2012年に836万人だった訪日外国人は、15年には約2000万人に増加、市場規模は約3.5兆円になっています。企業が今後も拡大が見込まれるインバウンド需要に対応していくことは不可欠になります。

日本の〝おもてなし〞は長い歴史をかけて培われた文化・精神性によるもので、海外から見ると高付加価値なものと映ります。
ですから、おもてなし=無償の精神・無料のものではなく、高付加価値のサービスとしてビジネス化し、対価を得て、おもてなし人材の給与にも反映していくべきだと考えています。

そのためには、おもてなしのスキルを総合的に判断し可視化する必要があると考え、キャプランでは2016年4月より「グローバルおもてなしマイスター認定資格制度」を開始しました。
接遇・語学・異文化理解に関する事前研修を受講後、認定試験を受験し、合格者を認定するこの制度で、より質の高いおもてなし人材を育成していければと考えています。

さらに、日本のおもてなしを海外に輸出するという動きも表れています。日系企業の海外進出時だけではなく、海外資本の企業からの問い合わせも増加しています。各国の伝統的な考え方を尊重しながら、おもてなしをはじめ、語学やビジネススキルの研修を提供しています。

企業が、そして働く一人ひとりが世界を相手にチャレンジできるよう、これからもパソナグループは教育・研修を通じてスキルセットの展開をサポートしてまいります。

(2016年7月発行「HR VISION Vol.15」より)

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