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日本が破綻するという論は、ホラー小説を楽しむのと同じ。実際に起こったら大変だけど、そんなことが起こるわけがない - 「賢人論。」第23回(前編)高橋洋一氏

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「賢人論。」第23回(前編)高橋洋一さんは「「日本が破綻する」という論は、ホラー小説を楽しむのと同じ。実際に起こったら大変だけど、そんなことが起こるわけがない」と語る

東大数学科を卒業後、元大蔵省(現財務省)に入省し理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(首相官邸)等を歴任した高橋洋一氏。小泉内閣、第一次安倍内閣ではブレーンとして「ふるさと納税」や「ねんきん定期便」など様々な政策提言をしてきた氏に、我が国が抱える社会保障問題の本質に迫った。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/松川周一

有識者をはじめとする多くの人は、国に騙されている。財政破綻なんて、言っていることはホラー小説と同じ

みんなの介護 “日本の財政は破綻する”という声が多々聞かれますが、今日はそんな話をふまえた上で、経済政策に明るい高橋先生にお話を伺えればと思います。

高橋 日本の財政が破綻するなんて、みんな嘘ばっかりついていますよ。ある人は何年か前に「3年後には破綻します」と言っていたのに、当たっていないでしょう?

みんなの介護 破綻する、と予想した人がいたんですね。

高橋 今から5年くらい前、「あと3年で破綻する」という本がありましたが、全然破綻していないじゃない(笑)。

みんなの介護 先生がおっしゃる「破綻しない」というのは、どの程度先を見越しての話でしょうか?

高橋 すっごい先なんてね、はっきり言うとわかりませんよ。30年先のことなんて検証しようがない。そりゃ、とんでもない人が来て、とんでもない政策をしてしまえば破綻させるのは簡単です。言ってしまえば、破綻させようと思えば破綻させられますよ。10年間のうちにとんでもない政策をしてしまったら、破綻してしまうでしょう。

ただし、健全に運営していたら日本の破綻はしないというのはわかっていたし、データを見ても明らかです。私なんかは「まともな政策をすれば、客観的な指標にもとづいて、破綻はしない」とずっと言っています。

こう言うと、「では、何年先なら破綻するんですか?」と聞いてくる人がいるけれど、私が言っているのは「5年、10年くらいのスパンだったら破綻しない」ということ。これはずっと言ってきています。合理的にやっていれば、日本財政は破綻しないというのが私の考えです。

みんなの介護 世の中としては、なぜ、破綻をする方向に議論が傾くのでしょうか。

高橋 普通にしゃべっている人たちは、知らないで言っているだけですよ。財務省は本当のことを外に言わないわけですから。“日本の財政が大変だ”と国民に思わせたいのが財務省の本音です。

“経済破綻本”といって経済本によくあるパターンなんだけれど、書店にたくさん並んでいます。日本の財政が破綻する、と本に書いている人はたくさんいるんです。私が思うに、こういった破綻本はホラー小説と同じ分野で、本を買っている人はホラー小説を読むのと同じ感覚なんですよ。ホラー小説は現実には起こらないから成り立つでしょ。ホラー映画だって実際に起こるわけじゃないから見られるわけで、本当に起こったら大変でしょう。

「賢人論。」第23回(前編)高橋洋一さん「「日本の財政が大変だ」というのは、増税するために財務省が言っているだけ。みんな騙されているんですよ」

そもそも、ほとんどの人が財政破綻の定義をわかっていない

みんなの介護 そもそも、「破綻」の定義が曖昧ですよね。高橋先生が考える「破綻」の定義を教えてください。

高橋 私は「バランスシート(国の貸借対照表)を見て、資産合計よりも負債合計のほうが大きくなったとき」とはっきり言っています。今は資産のほうが大きいから大丈夫ですよ。こうやって定量的な定義でもって分析しているから、予想は外れません。「破綻する」と言っている人に限って、このバランスシートが読めないんだと思いますよ。

なぜ私がここまで言えるのかというと、1995年に日本政府のバランスシートを作った最初の人物だから。大蔵省(現財務省)にいた当時、みんながどうしようもなくわけのわからない議論をしていたので、私が「バランスシートがなかったら議論ができないんじゃないか」と言ったんです。そしたら「作ってくれ」ということになって。作ったら作ったで、みんなビックリしていましたよ。私が作ってから10年くらいは非公表にしていたんですが。

みんなの介護 非公表にしていた、その理由は?

高橋 作った当初は「絶対に外に話すな」と口止めされていたから、しゃべらなかったんですね。2005年の小泉政権の終わりぐらいのときに公表されましたが、このとき、特別会計にはかなりの金額があると指摘したんです。それに対して、“埋蔵金だ”と言われたんですけどね。バランスシートは政府単体ではなく、日銀などを政府子会社として含めた連結ベースでみますが、今の状態をざっくり言うと、資産1250兆円、国債1350兆円。わずか100兆円の債務超過ですが、徴税権がありますから。

みんなの介護 徴税権というと、国が国民から税金を徴収できる権利、ということですよね?

高橋 そうです。その権利を資産化すると、毎年、少なくとも収入の15倍くらいの価値になります。みなさんが払っている税金を合わせると毎年40兆円くらいになるので、15倍にすると600兆円ですね。これはファイナンス議論の問題なんだけれど。さっき言った資産合計と合わせると、負債を上回るでしょ?もちろん政府が一切の義務を免れるかというとそうでもないから、徴税権すべてを資産というつもりはないけれど、大部分は資産とみてよいから、破綻しないわけ。

私が大蔵省にいたときに、日本政府の資産など全部を合わせる連結のバランスシートを作ったので、今公表されているそれらを見ても、「まったく大丈夫だ」と言っています。おそらく、多くの「破綻する」「破綻しない」と言っている人は、破綻の定義をわかっていないのでしょうし、こういう分析もできていないですよ。

多くの人は何をもって財政破綻というのかもわからずに、信じて、乗っかるんですよ。なぜ私がこういうことを言えるのかというと、大蔵省にいたときに知識人たる者をたぶらかすことを仕事としていたときもあったからです。私も昔はそういうふうに言っていたから、みんな騙されて、「社会保障が大変です」って言っていました。“みんなよく騙されるなあ”と思っていましたよ。

みんなの介護 現に、「社会保障が大変だ」という風潮になっています。

高橋 だから、財務省としては「日本の財政が大変だ」と言いたいんですよ。「財政が大変だ」「社会保障も大変だ」って言わないと、増税できないでしょ?そういうロジックを組み立てるために、ほとんどの人がわからない財政の話をするわけですよ。みんな、騙されているだけです。

みんなの介護 年金の支給開始年齢が上がっているとか、年金を減らされるとか…。

高橋 だから、騙されているだけですよ。年金を真面目に検討したら、ある程度減るのは仕方のない話ですよ。なぜなら、将来の保険料がどのような形で決まるかというと、人口×保険料だから。人口が少なくなったら保険料も減るんですよ。で、払う給付を少なくするときのやり方としては、給付の年齢を引き上げるか、給付カットの2通りしかないんです。それくらいは予想できた話ですよ。

人口が減るなんて2、30年前から予測されていたことですよ。社会保障は、人口が減る以上は仕方がないとしか言いようがない世界です。保険料を払ってくれる人が少ないから、しょうがないですよ。だから、これらを前提として他のことを考えたほうがいい。

私が言っているのは、将来の保険料と将来の給付がイコールになるという、保険数理の話をしているだけです。どうしようもない要因で将来の保険が少なくなったら、給付を減らすという、保険数理から考えると単なる調整であって、しかも、それを一気に行うのではなく何年も掛けてゆっくりと調整する、これは破綻でもなんでもありませんよ。

みんなの介護 将来年金をもらえるかどうか不安に思っている人もいると思います。今、国民年金だと月額5万5000円程度が平均ですが、「自分が65歳になったときにはかなり減っているんじゃないだろうか…」と。

高橋 実質価値で言ったら、年額ではせいぜいマイナス何万円くらいですよ。もし本当に知りたければ、年金機構に聞けば教えてもらえます。でも、下がり幅はその程度だから、ちょっと減るぐらいで、そんなの財政破綻でもなんでもありません。繰り返しますが、人口が減っているんだから、予想されていたとしか言いようがありません。ちょっと腹が立つかもしれないけれど、極めて数理的なロジックでしゃべっているだけ。

みんなの介護 つい感情的になってしまいそうな話題ですが、理論立てて考えると納得せざるを得ませんね。

高橋 私は数字の話を言っているだけですから。例えば、消費税を増税したとしても、消費税の年金に対する影響なんてほとんどありませんよ。基本的には、年金は保険料でやっていて、国庫負担は半分入っているけれども、すべて消費税というわけではありませんから。消費税が上がった、下がったとかで「年金が大変だ」という言い分は、感情論でしかありません。

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