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地域の人が協力しあって、支え合う交流をもつということが、改めて大切な時代になっているんです - 「賢人論。」第12回(中編)長谷川和夫氏

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「賢人論。」第12回(中編)長谷川和夫さんは「認知症予防で大切なのは、日々の運動習慣。そして脳への刺激」と語る

前編「私が痴呆に関して調べ始めたのは約50年前。当時はもちろん、痴呆症に対する薬もなかった」で、長谷川式スケールが完成した経緯をはじめ、認知症予防の方法についても言及した長谷川和夫氏。認知症診療の第一線で活躍してきた長谷川氏の言葉が深く刺さった前編に引き続き、中編では、認知症患者の介護にあたる家族や職員に対するあたたかなメッセージをいただいた。

取材・文/安濃直樹(編集部) 撮影/鈴木英隆

地域の人が協力しあって、支え合う交流をもつということが、改めて大切な時代になっているんです

みんなの介護 前編「私が痴呆に関して調べ始めたのは約50年前。当時はもちろん、痴呆症に対する薬もなかった」では、認知症対策として何より予防への意識が大切だというお話をいただきました。

長谷川 まずは、転ばないことが大事ですよね。転んで、骨折して、それから認知症になる高齢者は本当に多いですから。例えば大腿骨転子部骨折という大腿骨の付け根を骨折するような大怪我をおってしまうと、置換手術という大手術が必要になります。

そうなると専門病院で治療することになりますが、手術をして、術後の経過をみるのに一月半くらいかかります。その後リハビリをしなくちゃいけないから、リハビリ病棟に移ってさらに1~2ヶ月だから、合計3~4ヶ月くらいは拘束することになります。

高齢者にとって、大きな手術をして痛みに耐えたり、環境がガラリと変わったりするのは本当に大きなストレスですから、それをきっかけにして認知症になる人が多い。だから、転ばないように気をつけるっていうのが、まずとても大事になるんです。

みんなの介護 ということは、まず転ばないようにするための体力づくりや運動習慣が大切になりますね。

長谷川 そうですね。週に2~3回、いや1回でも良いです。その代わり、大股に歩くことを意識したり、あとは“ながら”の動作を意識すること。しりとりをしながら歩くとか、歌いながら歩くとか。運動とともに脳に刺激を与えるというのは非常に重要で、例えば麻雀や囲碁将棋、トランプなんかも良いですね。

みんなの介護 そうした遊びなんかは多人数でやることが前提になるので、そうした交流もまた、認知症予防に良さそうですね。

長谷川 そう。交流を活発にするということは非常に大切。一人暮らしだと人との交流がなくなりがちですが、寄り合いがあったときに出かけるとか、外に出て空気にあたるとかいうことは、簡単にできる非常に大切なことですね。

みんなの介護 今日は、先生が名誉センター長を務めておられる「認知症介護研究・研修東京センター」に伺わせていただきました。その敷地内では健康教室が開催されているなど、たくさんの高齢者と、支援する人たちが和気あいあいとされている光景に心が和みました。

長谷川 近所力とでも言うんでしょうか。昔で言うと、隣組というのがありましたよね。戦時中なんかは、焼夷弾が落とされたらみんなでバケツリレーをして水をかけて日を消し止めるっていう。地域の人が協力しあって、支え合う交流をもつということが、改めて大切な時代になっているんですよ。

「賢人論。」第12回(中編)長谷川和夫さんは「認知症の人の通院はなるべく普段の生活を知っている人が同行して日常生活を分析しないと」と語る。

認知症患者を地域で見守るには、感情的な交流をもつことが大切

長谷川 地域の見守りといっても、上辺だけのことじゃダメですよ。「こんにちは。どうですか、お元気でやっていますか?」「あぁ、元気でやっています」「そうですか。それではお大事にね。何かあったら言ってください」。それで別れちゃったりしたらダメ。

みんなの介護 そこまで他人の生活に入り込む形での“見守り”というのは、あまり聞かないですね。

長谷川 例えばですが、家に行って冷蔵庫を見てみたら、やたらトマトばっかりあったり。和室に行ってみたら畳に水気があったり…と、それはもうオシッコじゃないかと。そんなこともあるわけです。

それでね、話をするわけです。「お医者さんには行っていますか?」「ええ、もうちょっと角を曲がって左に行くと、かかりつけのお医者さんがいますから、2週間に1回はお薬をもらいにいっています」「あぁ。それはよかった」…って、そこで終わってはダメなんです。

みんなの介護 もう一歩踏み込んだコミュニティの形成が必要、ということですね。

長谷川 一人で病院に行くときなんて、よそ行きの格好をして、よそ行きの受け答えをするものですからね。お医者さんに「どうだい?」って聞かれても、「元気でおります、先生のお薬もちゃんと飲んでますから」って。そうじゃなくて、普段の生活を知っている人がついていって、日常生活をしっかり見て、医師に報告する人が必要ですよね。

みんなの介護 難しいですね…。関東圏、特に東京都心などは、そうしたコミュニティが希薄になっているのが現代社会の象徴です。

長谷川 私は徹底したアナログ人間でコンピューターは使ってないんですが、やっぱりコンピューターが発達してから人間関係が希薄になってきましたよね。

みんなの介護 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が発達した今、ネット上でのメッセージのやり取りが盛んになって、それで満足感を得ている人も多いと思いますが、それではやはりダメですね。

長谷川 そりゃそうですよ。だって、人と人とが会って、話をして、コミュニケーションを取るというのは、ただ単語を羅列して情報を交換するわけじゃなくて、その時の雰囲気や空気感を感じられるじゃないですか。情感…とでも言いましょうか。感情的な交流という人間にとってとても大切なことは、やはりコンピューターでは十分にわからないことがありますから。

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