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日本の社会福祉には“健全な競争”という概念が決定的に不足している - 「賢人論。」第13回(中編)竹中平蔵氏

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「賢人論。」第13回(中編)竹中平蔵さんは「日本の社会福祉には“健全な競争”という概念が決定的に不足している 」と語る

竹中平蔵氏は、前編「年金というのは、生きるリスクに対してかける保険」において「そもそも日本人は、社会保障に対して誤解をもっている」と語った。常に“経済”と共に人生を歩んできた竹中氏が、社会保障費と財政との関連性について言及する中編も必見。「社会福祉法人は一部、既得権益の世界になっている。その在り方から見直さなければならない」と語る、その真意とは。

取材・文/篠塚祭典(編集部) 撮影/伊原正浩

他の国を見てください。消費税で社会保障をしている国なんて他にありません

みんなの介護 竹中さんは以前から消費税の増税分は社会保障に当てるべきではないとおっしゃっていますが、その理由はどんなところにあるのでしょう?

竹中 他の国を見てください。消費税で社会保障をしている国なんてないですよ。理由は簡単です。社会保障というのは所得の再配分ですから、消費税ではなく、所得の再配分をしやすい所得税でするのが理に適っているんです。

みんなの介護 社会保障というのは、怪我や病気、失業などの問題に対して国が貧困者を救い、生活を安定させる社会的サービスを給付する制度ですよね。つまり、所得の再分配。

竹中 その通りです。一方で、消費税について考えてみると、お金持ちも貧しい人も、生活するにはある程度のモノを買いますね。所得の差ほどには消費の差というのはないので、所得の低い人にとっては、その所得に対する消費税という税金の割合が大きくなってしまうんです。

所得税を上げるというと国民は大騒ぎするんですが、日本は消費税が他の国に比べて低いと1990年頃から20年間に渡って国務省が国民にずっと刷り込んできて、国民はそこから社会保障を捻出すると言われても疑わない。でも、きちんと考えたらおかしいんですよね。

みんなの介護 本当は所得税を上げるのが理に適っている…けれども、それだとなかなか国民の理解が得られない、というわけですね。

竹中 国民に理解してもらいたいんだけど、メディアがバイアスをかけて伝えるから(笑)。私も政府の中にいましたけど、政権運営というのは、ある意味、国民世論とメディアの戦い。野党との戦いじゃないんですよね。

話は飛びますが、この前の安全保障の議論なんかも、ひどいと思いましたよ。政府がとっている方針は極めて穏やかで控えめで、世界を見渡しても常識的だと思うんです。でも、日本で言うと「戦争する気か?」って。

徴兵制に繋がるなんて言う人もいますが、今、徴兵制をとっている国なんて、ごく一部です。今の戦争って、全部ハイテク技術だからプロフェッショナルじゃないと戦えないんですよ。昔のような肉弾戦みたいな戦争なんてほとんどないんですから。

みんなの介護 だけど、メディアのバイアスがかかってしまって、そう伝わってしまったということですね。私たちも正しく伝えていかなればなりませんね、身につまされる思いです。

「賢人論。」第13回(中編)竹中平蔵さんは「急激に平均寿命が伸びたことに対して政府にも、そして国民にもその備えができていない」と語る。

介護職の人材不足問題については、長期的には外国人労働に頼るしかない

竹中 先ほどメディアの問題を指摘しましたけど、国民も正しい情報を知ろうともっと努力する必要があります。日本国民は、特に経済に対するリテラシーが低いです。

日本人は貯蓄していると言われるけど、実際していないですよね。私は団塊の世代の一番下の世代ですけど、すごい数の介護難民が出てくるんだろうなと思います。

人は一人前になるのに18年とか20年かかるでしょ?その間にはものすごいお金と時間がかかるわけですが、同様に人が幸せに、安らかに死んでいくには、ものすごいお金と時間がかかるんです。そのための蓄えを、高齢者がしていますか?

みんなの介護 一部で貯蓄できている人がいますが、そうでない人との差がどんどん開いてる感じはありますね。いわゆる下流老人と言われてしまっている方々には、これからどういう救済方法があるでしょうか?

竹中 今のところ生活保護しかないですね。格差の問題は深刻ですが、統計で見る限り、日本の格差は世界の中ではまだましですよ。

でも、日本人はすごく無駄使いしていると思いますね。「そんなお金の使い方で、あなたの老後って本当に大丈夫なの?」と聞きたくなってしまうくらい。急激に平均寿命が伸びたことに対する社会の備えができていない。もちろん、政府にもできていないし、国民にもできていない。

みんなの介護 介護の現場でも、急激な高齢化に対応しきれていません。要介護者の増加に対して介護職員の確保が追い付かないという問題があります。

竹中 介護職の人材不足問題については、長期的には外国人労働に頼るしかないと思います。ところが、移民は嫌だと言う人が圧倒的に多い。あれもイヤ、これもイヤと言っているだけですよね。「じゃあどうするんですか?介護保険料を上げますか?」という話です。介護報酬を上げるかどうかに関しては、制度の問題なんですから、国民に聞けばいいですよね。それが民主主義ですから。

私の子どもがアメリカで学校に通っているときに、こういう手紙がきたんです。「学校の運営費は、スクールタックスという地元の税金で賄われている。色々物の値段の高騰があって、今まで外国語の授業の選択肢は3ヶ国語あったが、2ヶ国語にしていいか?」と。つまりサービスの質を下げて良いですかということですよね。「それが嫌なら税金を上げるか、どちらか選んで」という手紙でした。

みんなの介護 明確ですね。国民がどうするかという決断をして、その決断に国民が責任を負わなければならないということですね。

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