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日本人は大学に進学する人が非常に少ない。社会を変えるためには、大学で、何が原理原則にあるかを学ぶ必要があるのに - 「賢人論。」第14回(後編)出口治明氏

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中編「世代間の不公平を宣伝するのは、社会に無用の対立を引き起こし、不安を煽るだけ」では、日本の社会保障体制が抱える問題をずばり指摘。税と社会保障の一体改革の必要性について、鋭く斬り込んでいただいた。まさに“賢人”。出口治明氏の含蓄のある言葉には、深い説得力がある。さて、そんな出口氏のインタビューも遂に最終回。今回は、人材不足など多くの問題を抱える介護業界のことを中心に話を伺った。

取材・文/篠塚祭典(編集部) 撮影/公家勇人

日本は大学に進学する人が非常に少ない。生産性を上げるためには、大学で考える力を養う必要がある

みんなの介護 中編「世界の中での日本の現状を知るには、世界の平均値との比較が参考になる」では、日本の現状を知るにはOECD(先進国34ヶ国が加盟する国際機関)平均と比較すると現状がよくわかるというお話を伺いました。指摘された社会保障と税(国民負担率)以外にもOECD平均と比較して、気になる日本の現状の数値はありますか。

出口 教育です。日本は、教育のためにお金を使っていない。2013年の政府支出における教育関連支出の割合は、OECD平均に比較して圧倒的に低く、主要国の中では最下位のグループです。

みんなの介護 最下位のグループなんですか!?では、教育予算をどのように使っていくべきだとお考えですか?

出口 学費をゼロにして、もっと多くの人が大学に行くべきだと思います。社会を良くするためには、自分のアタマで考える力を大学で学ぶべきです。日本は大学に行く人が少なく、さらに大学でも勉強しない。ついでに言うと、大学院に行く人はもっと少ないのです。

みんなの介護 大学全入時代なんてことも言われますが、実際は違うんですか?

出口 確かに一昔前より大学進学率は上昇していますが、それでも2010年の日本の大学進学率(51%)は、OECD平均(62%)に比較して10ポイント以上少ないのです。加えて、勉強しないことでも有名です。これは、日本の採用基準が主たる原因のひとつだと思います。

グローバル企業は、大学の成績で採用します。自分で選んだ大学の学部で良い成績を修めた人は、自分で選んだ職場でもいい仕事をする確率が高いと考えるからです。しかし、日本は面接でアルバイト経験やサークル活動だの、運動部の成績などを聞いて「コミュニケーション能力がある」とか、「頑張った」とか言って採用したりしています。これでは大学生が勉強するはずがありません。

今、日本が抱えているさまざまな課題を解決していくには、物事の一部だけを取り上げて問題視するのではなく、社会全体がうまくまわるような整合性のとれた“解”を導き出さなければなりません。そのためには、他の先進国以上に勉強をして、卒業してから成績重視で通年採用を行うシステムに変えていくべきです。社会全体のリテラシーをあげる教育をしていかなければなりません。



介護についてのリテラシーをあげるには、世界の良い例をみることです

みんなの介護 「みんなの介護」は、家族の介護をされている方や、介護職員の方にも多く見ていただいています。そこで伺いたいのですが、介護についてのリテラシーを上げるためには、どういったことが考えられるでしょうか?

出口 日々の介護や、業務に追われて目の前のことで手いっぱいになってしまうと思うのですが、時間があれば世界の良い例にも目を向けていただきたいと思います。

聞いた話ですが、北欧の介護について興味深いものがあります。認知症の人が20人いるとして在宅で介護するとしたら、単純に考えて、それぞれ介護する人が20人必要です。でも20人の認知症の人がコレクティブハウスに一緒に住むと、上手くいけば介護をする人を3~4人まで減らせるそうです。男女が大体半々くらいとすると、みんな互いにいい格好をしようとするそうです。

みんなの介護 男女を意識するということですか。

出口 そうです。例えば夜徘徊するおばあさんがいて、そのおばあさんを好きなおじいさんがいるとすると、そのおじいさんが徘徊するおばあさんをケアするそうです。人間は認知症になっても感情がありますから。

最近の研究でわかってきたことですが、人間の脳は氷山の見えている部分と同じで、意識できている部分は多くて2~3割。これまで意識できていない部分は遊んでいると考えられてきたのですが、これは間違いで、実はフル回転しているそうです。

みんなの介護 意識できているか、できていないかという違いだけですか

出口 認知症は意識できている2~3割の部分がおかしくなっているだけらしいので、認知症の人にはわからないだろうと思って邪険にしたりすると、実は意識できていない7割の部分で「この人は私を嫌っている」と感じるそうです。そして、仕返しをするらしいのです。分かっていてもトイレのことを言わなかったりして、わざと手間をかけさせたりするなど。

みんなの介護 特別な設備や費用がいるのではなくて、人の本能とか無意識の部分を使うとか、そういった工夫ひとつで生産性が上がったり、解決できる部分も大きいんですね。

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