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これからの社会では、僕たち市民がアイデアを出し合って1人あたりのGDPを増やすことを考えていかなければならない - 「賢人論。」第14回(中編)出口治明氏

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定年制を廃止するべき」という主張から始まった、出口治明さんの「賢人論。」。中編となる今回のテーマは、年金の在り方について。賦課方式と積立方式の違いについて、また今後、超高齢社会を突き進む日本が考えなければならない財政の問題について言及。「これからの社会は、僕たち市民がよく考えてアイデアを出し、生産性を上げて1人あたりのGDPを増やすことを考えていかなければならないのです」と語る出口氏の真意とは?

取材・文/篠塚祭典(編集部) 撮影/公家勇人

世代間の不公平を宣伝するのは、社会に無用の対立を引き起こし、不安を煽るだけ

みんなの介護 前編「世界の先進国のなかで、定年制があるのは日本だけ。定年は年齢による差別」では定年制を廃止するというお話を伺いましたが、定年がなくなったとしたら、年金の支給年齢はどうなるのでしょう?

出口 自分で選んだらいいじゃないですか。定年制が廃止されても60歳で仕事を辞めたいという人もいるでしょうし、75歳まで働くぞという人もいるでしょう。個人の人生観の問題ですから、それぞれが選んだらいいと思います。

みんなの介護 出口さんは、様々なメディアで「公的年金保険は破綻しない」とおっしゃっていますよね。その根拠をお教えください。

出口 公的年金保険は破綻しません。年金は政府が支払うものですから、国債が発行できる限り、年金を払うことができます。年金が払えなくなったときというのは、国債が紙くずになったときです。国債が紙くずになったときというのは、国債を抱えたその国の大半の金融機関が潰れてしまっています。

国が信用できないから、自分で金融機関に預けようとしても、今の話でお分かりいただける通り、公的年金保険が破綻する前に皆さんが預けたお金は紙くずになっている。近代国家では、国より安全な金融機関は存在しません。これが国の格付けが落ちたらその国の金融機関の格付けが自動的に落ちる理由です。

みんなの介護 確かに、言われてみるとそうですね。

出口 年金について、世代間の不公平を唱える学者がいますが、全く意味のないアジテーションです。世代間の不公平は、人口ピラミッドの変化を言い換えただけの話で、高齢者を支える人数がサッカーチームから肩車になっているのに、どうして公平にできるのでしょう。

世代間の不公平を声高に唱える学者が本当にそれをけしからんと思っているのなら、こう言うべきです。「申し訳ないが、おじいさんおばあさんには早く死んでもらうようにして、移民をどんどん受け入れて早くサッカーチームに戻しましょう」と。そうは言わないで、世代間の不公平という耳障りのいい言葉だけを声高に叫ぶのは、社会に無用な対立を引き起こし、いたずらに不安を煽るだけではないでしょうか。

また、世代間の不公平をなくすために年金を積立方式にすべきだという学者もいますが、それも根本が間違っています。



世界の中での日本の現状を知るには、世界の平均値との比較が参考になる

みんなの介護 確認ですが、積立方式とは将来自分が受けとる年金を、前もって積み立てておくという方法ですよね。

出口 そうです。現行は賦課(ふか)方式といって、皆さんが納めている社会保険料は、現在、年金をもらっている高齢者に給付されています。皆さんが年金を受け取るときには、皆さんのお子さんやお孫さんが社会保険料を支払うのです。

これに対して、自分の年金をあらかじめ積み立てる方式を積立方式といいますが、積立方式には致命的な欠陥があるのです。

みんなの介護 欠陥…というと?

出口 例えば、あらかじめ3千万円積み立てると仮定します。でも、その3千万円の根拠はなんですか?3千万円あったら、死ぬまでなんとかなると考えているのです。つまりこの金額は、平均寿命をもとに算出しているのです。

でも、遺伝子治療が進展して平均寿命が10年伸びたらどうでしょう。足りませんよね。その時、積立方式はよそから財源をもってくることができない。このことは、ニコラス・バーという世界的に著名な年金学者が、「賦課方式も積立方式も差がなく、将来の年金の安定は分配が上手な良い政府をつくることと、経済成長をすること以外に方法はない」と言い切っています。これが世界の常識です。

みんなの介護 良い政府…というのがまず高いハードルになりそうで。例えばギリシャのように財政危機に陥ってしまうのではないかという不安があります。

出口 ギリシャのようになるかならないかは、僕たち市民の行動にかかっています。明日の政府をつくるのは僕たち市民であり、破綻しない政府を、僕たち市民が選挙に行って、投票率を上げてつくっていかないといけないのです。

例えば社会保障の財源の話ですが、現状の数字を有権者に見せて、よりよく理解してもらう。その上で「どうしますか?」と問えば、これは議論の余地がないと思うのです。

経済協力開発機構(OECD)という先進国34ヶ国が加盟する国際機関があります。いわば先進国クラブです。そのOECDが様々な指標や平均値を出しているのですが、世界の中での日本の現状を知るには、その数値との比較が参考になります。

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