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「図書館有料化」のススメ

■図書館業務における「官製貧困」

 先日、図書館で働く女性の貧困問題を扱った『月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」』という記事をネットで見かけたので、それとなく読んでみた。その女性は公共図書館に非正規雇用の図書館司書(嘱託職員)として勤務されており、年収は200万円程度と書かれていた。細かいことを言えば、月収17万円×12ヶ月=204万円ということらしい。(タイトルの13万円は税引きの手取り収入)

 この記事のタイトルにある「官製貧困」という言葉は、「一般的な正規雇用の公務員」と「非正規雇用の公務員(公共図書館司書は一応、公務員扱いになるらしい)」との間にある収入格差を表現したものだと思われるが、正規の地方公務員の平均年収が669万円ということなので、実に3倍以上の収入格差があることになる。ちなみに、図書館司書の7割位は非正規雇用であるらしい。

 この記事のコメント欄も読んでみると結構率直で辛辣な意見も書かれている。

 「そもそも正規公務員の給料が高過ぎるのではないか?」という意見もあるかもしれないが、今回は敢えてそのことには触れず、両者間の格差を無くすことだけを目的として思考実験的に話を進めてみようと思う。

 「公務員の世界にも同一労働同一賃金制度の導入を!」などと書いても、民間企業と同様に実現性は極めて乏しそうなので、全く違う観点から意見を述べてみたいと思う。その違う観点とは何か? ズバリ、「図書館の有料化」である。

 もっとも、「図書館法」というものによって公共図書館利用における対価は徴収してはいけないことになっているので、その法律自体を変えることを前提とした話になる。

 「図書館の有料化」と言っても、別に図書館を民営化せよというわけではなくて、高価な専門書の類いや児童書以外の本は、全て市販価格の数%の料金を手数料として徴収すればいいのではないかということ。書籍発行年度によって貸し出し料金の差別化を行ってもよいと思う。

 新刊の貸し出しについては以前にも書いたことだが、1年間貸し出し禁止にして、1年経過すれば10%、2年経過で5%、3年経過で3%という具合に徴収金額を徐々に引き下げていき、本の賞味期限が切れた頃(5〜10年)に無料にすればいい。

 その手数料収入の一部を非正規図書館司書の収入に当てればいいのではないかと思う。

 ついでに、その手数料の中に著作権料も含ませればいい。これまで蔑ろにされてきた著作権者への報酬も少しは発生することになるので一挙両得だ。

【関連記事】図書館に新刊本を置くことの意味とは?
      続・図書館に新刊本を置くことの意味とは?

■図書館の有料化で「官製貧困」と「官製不況」を軽減

 公共の電車やバスでも利用者に運賃を請求しているわけだから、公共の図書館が本を貸し出すサービスを全て無料で行わなければならない必要性も無いと思う。市販価格の10分の1以下で読めるだけでも十分な公共サービスだと言える。元々、公共の電車やバス、そして図書館というインフラは国民の税金で作られたものだが、本は違う。本は基本的に税金に頼ることなく、個人や民間企業が作り出した商品なので、本来ならば、無断・無料で貸し出せるアイテムではないと言えるかもしれない。

 こんなことを書くと、「法律で決められているのだから図書館の本は全て無料にするべきだ!」と反論してくる人がいるのだろうけれど、先に皮肉を言わせてもらえば、そういう融通の利かない人や時代にマッチしない法律が正規公務員と非正規公務員との間にある収入格差を生み出している一因ではないかと思える。

 たとえ、荒唐無稽であろうと、具体的な解決策を提案する方が、何の打開策も考えずに感情論だけで反論するよりも建設的だと思える。

 「図書館の本の貸し出しを有料にすれば、書店や古本屋の売上が落ちるのではないか?」と心配する人もいるかもしれないが、残念ながら、それは杞憂だろう。現在のように図書館が全て無料で本を貸し出していることの方が書店や古本屋にとっては有り難くないはずだから、有料にすれば、書店や古本屋の売上は上がり景気も幾分かは良くなると思う。

 図書館が無料で本を貸し出していることで書店の売上が落ちているのなら、図書館が有料で本を貸し出せば書店の売上は上がる。これは自明の理である。そして、図書館が無料で本を貸し出していることで「官製貧困」と「官製不況」が発生しているのなら、図書館が有料で本を貸し出せば「官製貧困」も「官製不況」も幾分か抑制することができる。これもまた自明の理である。
 
 公共図書館が国民の税金によって運営されているのであれば、現行のままでは無条件に収入を引き上げることは難しいと思う。現代のように街の書店が減少の一途を辿る中で、図書館だけがどんどん増加しているということ自体、よくよく考えれば不自然なわけで、本来であれば、書店の減少とともに図書館も減少しなければ、歪な社会構造となり、その歪みは必ずどこかにしわ寄せされることになる。

 非正規雇用の図書館司書もその中の1つに含まれるのかもしれないが、公共図書館のシステム自体を抜本的(法的)に変えることができれば、そのしわ寄せを幾分かは解消することができる。「図書館の有料化」こそが「官製貧困」を是正する最も有効で現実的な解決策だと思う。

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