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介護の現場も、簡単な仕組みで劇的に改善できる可能性がある。要は「何をするか」ではなく「何をしないか」を考えること―「賢人論。」第16回成毛眞氏(中編)

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前編「日本の介護を…と、広く大きく捉えた瞬間に、全部が動かなくなっちゃう。それではひとつひとつの問題が解決しない」と指摘した成毛眞さん。政策決定の場におけるマーケティング視点の重要性も、同時に言及した。引き続きの今回は、介護業界が抱える問題にフィーチャーして「何をしないか、を考えることが大事」と語る。さて、その真意とは?

取材・文/篠塚祭典(編集部) 撮影/公家勇人

どうしたらこの人を幸せにできるか?という発想を拡大すればビジネスになるし、それが広がれば日本は変わるかも

成毛 前編「日本の介護を…と、広く大きく捉えた瞬間に、全部が動かなくなっちゃう。それではひとつひとつの問題が解決しない」では、物事を大きく捉えてしまうと前に進まなくなるという話をしましたが、社会保障や政策、介護事業だけでなく、その類のことはたくさんあると思います。

「目の前にいるこの人をどうするか?」「この人をどうしたら幸せにできるだろうか?」という発想で考えて、それを拡大すればビジネスになるでしょうし、そういうビジネスが増えていけば日本が変わるんじゃないかと思うんです。

みんなの介護 成毛さんが大の読書好きというのは有名な話ですが、だからこそそうした柔軟で合理的な発想が出てくるのでしょうか?

成毛 うーん、ほとんどは性格かな。物事を考えるときにマクロで考える人もいれば、感情的に考える人もいますよね。堀江(貴文)くんも同じようなことを言っていましたけど、私と彼の共通点というと、あまりないんですよね。年齢は私が60で、彼は40代。私は本が大好きで、彼は私が読まないマンガしか読まない。卒業した大学も違う。でも、考え方が似ています。共通点が見当たらないので、生まれもった性格なのかなと。

みんなの介護 性格…ですか。

成毛 つい調べたくなっちゃうんですよね。細かいところまで、ネットで調べ尽くしちゃいます。そういう性格なんです。今、私が興味をもっているのはセルロースナノファイバーとかメムスとかいうものなんですが。

セルロースナノファイバーというのは、木から作られる「鉄の5分の1の軽さで5倍の強度」の素材。飛行機やタイヤの素材、それから介護用オムツの素材にもなっている画期的なものです。

みんなの介護 さらに活用範囲は広がっていきそうですね。介護の現場でもとても有用になりそうです。

成毛 そう思いますね。メムスというのは、Micro Electro Mechanical Systemsの略称で、スマートフォンの中にはメムスのセンサーがいくつも入っているんです。例えば近接センサーというものだと、通話をしているときに画面の誤作動を防ぐため、今、耳に当てているんだということを察知できるんです。

それから、6軸センサーというものも入っていて、x軸、y軸、z軸、つまり上下左右前後の移動、傾き、そして加速度もわかります。20年ほど昔にジャンボ機に積まれていた慣性航法装置と同じようなもの、もしくはそれよりもっと性能のいいものが入っているんですよ。でも、そんなセンサーが秋葉原に行くと130円くらいで売っているんですよ。余談ですけど(笑)。

気圧センサーというものも入っていて、5cm違うだけで気圧が違って、その差を感知できます。これらのメムスセンサーを使えば、おばあさんが今、ベッドから落ちてしまったということも、隣の町まで徘徊して行ってしまったということもすぐわかるんです。

みんなの介護 メムスセンサーがうまく活用できれば、介護がずいぶんと変わりそうですね。


有限な時間の中で「何をしないか」を考える

みんなの介護 そういったものにどうやって目をつけるんですか?

成毛 ネット上の情報ですね。最先端の情報は、本よりネットの方が早いですから。セルロースナノファイバーについての本は、まだあまり出ていないと思いますよ。でも、そういう知識をもっていると、5年後に何が起きるかということを考えられるんです。

みんなの介護 年齢のことを言うのは失礼かもしれないのですが、60歳にして好奇心や知的欲求を多いに持っていらっしゃることが、若さの秘訣なのかなと。

成毛 そうかもしれませんね。肉体的な年齢はもちろんですが、精神的な年齢も重要ですね。あとは、年をとったことに気づかない人も結構いますよね。本人が気づかないまま生きてるもんだから、周りからも、どう見ても50歳にしか見えない70歳とか。

まぁ、でも学校の勉強はあんまりしなかったけど、若い頃から情報を集めることが好きでしたね。探しているプロセスが好きなんです。あとはものを書くのも好きですね。若さの秘訣…と自分で言うのもアレですが(笑)、介護予防の一環にはなっていると思いますね。

みんなの介護 テレビはあまり見ないですか?

成毛 見ますよ。週間で40本くらい録画していて、サイエンスものは好きなのでよく見ますし、報道番組や美術番組も見ます。ドラマを見ることもありますし。

みんなの介護 漫画が原作のドラマが増えていますが、漫画は読まれないんですよね?

成毛 読みませんね。何かをやめないと、本を読む時間がなくなっちゃうので。

みんなの介護 有限な時間の中で何をするかを考えることが大事、ということでしょうか?

成毛 いや、逆に「何をしないか」だと思います。有名な話ですが、スティーブ・ジョブズも、洋服を選ぶのをやめて、15年間黒のタートルネックを毎年25着ずつ買っていました。服を選ぶことに時間は使わない、と決めたわけですね。

みんなの介護 Facebookを開設したマーク・ザッカーバーグもそうみたいですよね。時間は限られているんだから、「しないこと」を明確にするのが大事なんですね。

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