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認可保育所と自営業、待機児童と保育料値上げ - 小石勝朗

 極めて私事で本当に恐縮ですが、8月に初めての子どもが生まれた。妊娠から出産に至る過程も大変だったが、新生児が家庭に来てからの生活は予想していた以上に大変だった(もちろん一番大変なのは妻に違いないです)。時にわが子が見せる愛おしい表情やしぐさに癒されながら、新たな気持ちで慣れない子育てに向き合おうと考えている。

 そんな中で、妻の妊娠中から気になり続け、実際に活動をしてきたのが、やはり「保育園」である。来年4月の入園を目指して、出産前の6月から認可・認可外合わせ20カ所近くを夫婦で手分けして見学し、認可外保育所のいくつかには申し込みを済ませた。それでも「予約順は30番くらいです」と告げられたり、「ほかのところにも申し込んだ方がいいですよ」と〝助言〟を受けたりして、気持ちの落ち込むことが多い。

 厚生労働省が2日に発表した今年4月時点の待機児童状況によると、私の住む自治体の待機児童数は約300人で、全国ワースト15に入っている。まあ、昨年は約350人でワースト10だったから、マシにはなっているのだけれど…。来年度に向けても、新設する保育所の定員は計170人ほどらしいから、待機児童の数はあまり減らないに違いない。それだけに焦りが募る。

 この自治体、長く普通交付税の不交付団体で財政的に苦しいわけではないし、都心部ほどには用地を探すのが難しいわけでもないのに、当事者からすれば待機児童対策に本気で取り組んでいるようには見えない。ちなみに、首長は元幼稚園長である。私の出身地で、高齢の両親の介護に備えるためだったとはいえ、結果的にこの自治体に転居した自分の先読み力のなさを悔いてはいる、

 そんな中、この自治体が発行した昨年の認可保育所の募集要項を見ていて、どうにも納得しがたい項目を見つけた。

 認可保育所に入れるかどうか(役所言葉で「利用調整」と言うらしい)は、各自治体が設けた基準項目から算定する指数(点数)で決まる。たとえば、保護者が「週40時間以上の就労を常態としていれば100点」といった形だが、その中に「職場が自宅または祖父母宅は5点減点」との記載があるのだ。

 認可保育所に志願する保護者の多くは「夫婦共働き、フルタイム」だから、同じ点数に大勢がずらりと並ぶことになる。だから、人によっては、少しでも点数を上げるためにあらかじめ認可外保育所に預けたり、減点を避けるために祖父母との世帯分離をしたりもするわけだ。ひとり親家庭は加点されるからと偽装離婚の勧めまで飛び交うのも、この点数制度のせいである。

 1点が合否を大きく左右する状態で、夫婦とも自宅が職場の自営業だったら、それだけで計10点もの減点である。たくさんの待機児童がいて、ただでさえ認可保育所が狭き門の自治体にあって、これでは自営業者やフリーランスはハナから認可保育所には入れません、と言っているようなものではないのか。

 もちろん、会社や役所で働いている人より自宅が職場の人の方が仕事量は少ない、と科学的な根拠を示されれば仕方ない。でも、役所に通うのが仕事みたいな公務員の方々には想像がつかないのかもしれないけれど、自宅での仕事って言ったって昔に比べればはるかに多様になっているし、その内容も複雑化・高度化している。連絡手段が電話しかなかった時代とは大違いなのだ。しかも、夜間や土・日曜の区別もない。

 そもそも、職場が自宅で物理的に0歳や1歳の乳児と一緒にいる時間が長いとしても、仕事に集中しながらその世話をするなんて無理である。これは、ちょっとでも体験すれば、すぐにわかる。公務員の皆さんが職場に0歳児や1歳児を連れてきて、仕事をしながら自分1人でどれだけ世話をできるか試してみたらいい。

 たしか昨年度に始まった「子ども・子育て支援新制度」は、従来の保育所入所の条件だった「保育に欠ける」に代わり、客観的な基準をもとに保育の必要性や必要量を認定する、って建てつけじゃなかっただろうか。「1億総活躍」なのだったら、それこそ多様な社会参加のスタイルを前提にすべきで、こんな基準で自営業者やフリーランスを排除しようとすること自体おかしい。

 私の住む自治体に限らず、同様の基準項目を置いてきた自治体には、今年の募集要項から外していただくよう強く望みたい。

 と、ここまで書いたところで、保育園をめぐり、個人的に納得しがたい出来事が新たに降りかかってきた。私の住む自治体が来年度から保育料を大幅に値上げする、というのである。たまたま覗いた議会の質問項目に入っていて知った。

 議会でのやりとりを聞いたところでは、平均値上げ率は10%。特に0歳児の上げ幅が大きく、平均24%にもなる。自治体の部長は答弁で「保育施設の整備や保育サービスを安定的、継続的に行うため」と、役所言葉でよくわからない説明をしていた。要は、待機児童対策に予算が必要だから、その原資にする、と言いたいらしい。

 あくまでこれは私の想像だけど、値上げの本音は、待機児童の数を減らすために認可保育所の志願者を減らしたい、ということではないかと受けとめた。

 比較的所得の低い世帯だと、月に数千円の値上げでも負担になって、保育所に申し込むのをやめよう、となるかもしれない。高所得だと月額2万円以上値上がりして7万数千円になる階層もあるらしいから、認可外の方が安くなり、そちらに流れるケースが出るかもしれない。まあ、値上げしたからと言って、認可保育所の志願者がそう減るとも思えないですが。

 個人的には、ある程度の受益者負担は仕方ないと考えている。0歳児は保育士が多く必要だから、保育料が高くなるのも合理的ではある。

 でも、この値上げは順番が逆だ。待機児童ゼロの道筋をつけてから値上げ、というプロセスを踏むなら理解する。しかし、受け皿は整備できていないし、解消のメドもつきません、でも値上げだけはします、では、「幼児教育・保育の無償化」まで議論されている今の時代の要請に逆行しているようにしか見えない。

 ちなみに、この値上げ、自治体の規則を変えれば良く、議会の議決はいらないらしい。すでに来年4月適用の方針を決め、議会には内容を報告しているようだが、自治体のホームページには現時点で何らの告知も見当たらない。志願者向けには、新年度の募集要項を出す頃にいきなり発表するつもりなのかもしれない。

 大勢の待機児童がいて、激しい競争の渦中で少しでも条件にかなう保育所を選ぼうと右往左往している志願者の事情を顧みておらず、情報公開の面からも問題を抱えた進め方ではないだろうか。

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