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民進&共産 一日限定の連立内閣もありうるのでは? - 南部義典

憲法によって国家を縛り、その憲法に基づいて政治を行う。
民主主義国家の基盤ともいえるその原則が、近年、大きく揺らぎつつあります。
憲法違反の発言を繰り返す政治家、憲法を無視して暴走する国会…。
「日本の立憲政治は、崩壊の危機にある!」

そう警鐘を鳴らす南部義典さんが、現在進行形のさまざまな具体的事例を、
「憲法」の観点から検証していきます。

 民進党は、国の集団的自衛権行使に道を開いた「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(2014年7月1日閣議決定)の内容が、国民の間でこのまま定着しても構わないと考えているのか、それとも、民進党を中心とする内閣が誕生した後、この2014年閣議決定を撤回し、同年6月30日以前の憲法解釈(いわゆる1972年政府見解)に戻し、ことし3月に施行された安保関連二法を廃止する法律案を国会に提出し、成立させることまでを思い描いているのでしょうか。…この点、じつは方向がはっきりしていないことを、旧民主党、旧維新の党の頃から、私はとてももどかしく思っています。

 この曖昧さは、先週からスタートした民進党代表選挙においても、3名の候補者の主張の中で、しっかり温存されています。「立憲主義を守る」「安倍総理の手法には反対」という認識では共通しているものの、憲政史上の一大事件であった2014年閣議決定の是非について、野党第一党としてどういう態度、方針で臨むのか、各候補者の口から何も語られていません。きょうまでのところ、各メディアもこの点を深掘りしていませんし、キャスター、記者の方々は、問い質すことさえしていません。一本のボルトに、一個のナットが中途半端な位置で止まっているだけで、実際には何も締め付けていない、そんな場景が、いまの民進党に重なって映ります。

 今月26日に召集される臨時国会では、衆参両院の憲法審査会の議論が再開すると報じられています。候補者3名はいずれも、民進党として平常心で憲法論議に臨む姿勢を否定していません。本当にいいのでしょうか。2014年閣議決定に対して、法的、政治的な決着が付いていないはずなのに、憲法改正の原案づくりがテーマに上るかもしれない憲法審査会に、何の条件もなく顔を出していいものかどうか、私は不思議な思いに駆られています。議論の入口、順番が逆ではないか、と思うのです。

連立内閣は、一瞬一時のためだけでもいい

 今回の代表選挙では、野党共闘のあり方が改めて争点になっています。次回の衆議院議員総選挙で議席の過半数を取ることは、野党第一党にとって最大の目標です。一党単独で政権を獲得するのか、他の野党との連立による内閣を実現しようとするのかで活動方針も変わってくるのでしょうが、民進党は、政策(対案)をわかりやすく提示することに、もっとエネルギーを注いでいくべきです。国民に提示すべき政策の中には、2014年閣議決定をどう評価し、扱うかということも含まれるはずです。

 しかし、この問題を外して、かつ、その他の野党との協力関係を抜きにして、「もう一回、勝たせてください」と繰り返すだけでは、有権者はうっとうしく感じるだけです。私は、次回の総選挙において手堅い野党共闘がなければ、与党を過半数割れに追い込むことは厳しいと認識しています。政権交代とはすなわち、野党による連立内閣を誕生させることであり、その目的は言うまでもなく“立憲主義を死守する”ことです。

 野党共闘論は一般に、民進党目線で、日本共産党その他の野党に連立内閣への参加を呼びかけることの是非、政治手法の選択として論じられています。そして、連立内閣がいったん誕生した後は、その枠組みがある程度の期間、継続することを前提に議論されています。最近では例えば、産経ニュース「起こりうる『民共連立政権』の未来予想図とは 渾身の連載で『民共連携』の功罪を考える」 及び当記事で紹介されている関連記事が、2018年秋、民進党と日本共産党の連立内閣が誕生した後、日本の政治・社会が徐々に瓦解していくというストーリーを描いています。年月が経てばたつほど、両党の思想、政策の矛盾があらわになり、国民が大混乱に陥るという展開です。

 しかし、民進党と日本共産党は、もともと別の政党です。政策の同一性を完璧なまでに要求するほうが間違いです。現実に、自由民主党と公明党は、安全保障、社会保障の分野で、ことあるごとに意見の対立が先鋭化し、妥協に妥協を重ね、皮肉にも連立内閣の厳しさを教えてくれています。まして、統一会派を組んでいるわけでもありません。連立内閣の継続性を前提にする議論もいいのですが、むしろ、一瞬一時のためだけに成立させることも考えてみるべきでしょう。連立内閣が誕生し、その目的を達成した後、パートナー政党が離脱し、メイン政党による単独内閣に転じるというパターンもありえます。

 具体的な提案として申し上げたいのは、2014年閣議決定を撤回するためだけに、民進党と日本共産党の連立内閣を組むということができないのか(もちろん、連立の趣旨に合意するその他の政党が参加することに、何も問題はありません)、ということです。たった一日、二日の間でいいのです。政策の幅をお互いに縮め、妥協を塗り重ね、連立内閣を長く維持することを前提に議論するのではなく、「2014年閣議決定の撤回」に限定し、志位委員長に国務大臣に就いてもらうことを容認できるかどうか…この点はどうしても民進党目線になってしまいますが、今回の代表選挙で論じ合ってもらいたいのです。3名の候補者は、日本共産党との連立を否定する意見で一致しているようですが、そこで話を終わらせてしまうのではなく、2014年閣議決定の評価、扱いという野党共闘論の核心に対し、態度を明確にするべきです。立憲主義を死守するため、一日、二日、日本共産党と連立内閣を組むことは、本当に容認できないことなのでしょうか。

民進党として“憲法論議の枠”が必要

 写真は、前原誠司民主党代表(当時)が2005年12月8日、米戦略国際問題研究所(ワシントンDC)で行った講演の内容を伝える、朝日新聞の記事です。

 前原氏は、日本のシーレーン防衛を念頭に「集団的自衛権の行使と認定され、憲法上行えないとしている活動について、憲法改正を認める方向で検討すべきだ」と発言しました。この発言は、民主党『憲法提言』(同年10月31日公表)で示されたばかりの「専守防衛の考え方を基本に、制約された自衛権を明確にする」との立場をゆうに超える内容であったため、発言の整合性(正当性)が大きく問題視されました。つまり『憲法提言』があったからこそ、党の代表といえども、許容される発言と許容されない発言があることを明らかにすることができたのです。

 あれから10年余り、前原氏は、民進党代表選挙の候補者として、まさか同じ趣旨の発言は繰り返さないでしょう。しかし、ことし3月に誕生したばかりの民進党には、『憲法提言』に相当する政策文書がありません。憲法論議の枠ないし幅が、半年近くたっても明確ではないのです。オープンに、何でも議論できる状況にあることはすばらしいことですが、人(議員)によって、語り口やニュアンスが異なるのでは、党に対する信頼は生まれません。また、すべての国民が「民進党は、非改憲の政治勢力である。」と確信しているわけでもありません。

 必要なのは、「民進党として、超えることがない一線」を明らかにすることです。国を成り立たせる根本の思想として、立憲主義を守り抜くことは当たり前すぎますし、憲法改正の要・不要だけが政治レベルで行う憲法論議の対象ではありません。党として、憲法論議の枠ないし幅を、できるだけ早く決定すべきです。また民進党は、立党の過程において、“立憲民主党”と新党名の候補を争うくらい、立憲主義の理念を重く受け止めていたはずです。今後、改憲勢力に対する「真の歯止め」に進化することができるのかどうか、代表選挙の帰趨を厳しく見守らなければなりません。

 第3次安倍・第2次改造内閣の発足(ことし8月3日)を受けて、本来であれば今頃、国会では新任の大臣から所信を聴取して、それに対する質疑を行うこと、さらに予算委員会の集中審議や党首討論を行うことを、野党第一党である民進党がリードしていなければならなかったはずです。しかし、代表選挙が行われるという事情を踏まえ、結果として、政治空白を作ることを許し、与党に対して休憩時間をプレゼントしてしまっているのです。安倍総理は現に、夏季休暇を二回取得することができました。あえて言えば、この点に対する国民のストレスをすべて期待値に変えられるぐらいの、高揚感に充ちた代表選挙を行ってほしいということに尽きるのかもしれません。私は、メディアが手つかずのチェックポイントを、さらに探してみようと思います。

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