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東大・浜田純一総長への「東大秋入学+ギャップイヤー」インタビュー記事から想うこと(1日付朝日朝刊)

2011年09月01日 18:30

砂田 薫

7月1日に全国紙が一斉に報じた、入試日程を変えないで行なう東大の「全学秋入試+ギャップイヤー(4月〜9月)」であるが、その提案者である浜田純一総長へのインタビュー記事が、9月1日付朝日朝刊「オピニオン欄」の1面に掲載された。見出しは「国際化待ったなし、脱ガラパゴスへ。知識より弾力性」だった。

同質集団には、非日常性や異質なものが必要



要旨はこうだ。国内市場が縮小傾向にある中、大学は国内だけを射程に置いた教育だけでは、「ガラパゴス」的な存在になる。グローバル人材を育てるために、大学教育の国際化は避けて通れない。
“タフな東大生創り” を掲げている浜田総長は、「東大生は知識量ではタフだが、これからはレジリエンス(弾力性)、すなわちしなやかさも必要」と言う。この力は同質集団の中では育ちにくく、海外や異文化に触れ合う中で、“あっ”と驚く経験が必要で、それがギャップイヤー導入への想いにつながっているという。企業にも組織にも絶対がない時代。「個人の力がモノを言う社会になり、そこではギャップイヤーを利用して、自らの力を鍛えて次の仕事を探すという感覚が必要だ」と説く。

”秋入学+ギャップイヤーの有用性”を訴える総長



「あえて入試と入学の間にギャップを作ることで、人生の中でのギャップの意義を認めるように日本社会に対して意識改革を求めていく。秋入学とギャップイヤーの有用性を訴えて、資格試験の時期や制度について、改正や柔軟な運用も求めたい」と力説し、明快な意思と覚悟を感じる。

また、ギャップイヤーの過ごし方も、「バックパッカーによる海外放浪、ボランティア、企業への(長期)インターン、それから(大学側から)メニューも提示する」となかなかワクワクする寛容さと自由さが覗く。これなら、現在都会の中高一貫校出身者が半数を超えるといわれる多様性とは対極にある現状で、1学年3000人もたくましく就学前に「空白期(GAP)」を糧に大きく成長するのではと期待を抱かせる。スケジュールとしては、「年内に学内組織の『入試時期の在り方懇談会』の報告書が出たら、企業や社会に向けて問題提起をする」と言う。ここまでは、総長の本気度を示す素晴らしいビジョンがある。自ら果敢に困難にチャレンジしようとする姿勢と勇気も賞賛したい。

在任中の4年で実現へのロードマップを確定すべき



ところが、実現へのロードマップのところに来ると、ちょっと急ブレーキがかかるような気がする。
「活動を1〜2年続ける中で、着地点が見えてくる。任期中には難しいかもしれないが、5年をメドに緊張感を持って検討すべき」。東大の総長の任期は4年で、浜田総長は4月に着任したばかりだ。これは、問題提起を社会に行い、推進している浜田総長が、実行までの道筋を立てないで、誰が後をやり、引き継ぐというのだろう。だから、任期の4年で決着させてほしい。

5年のロードマップでは“Not invented here” の懸念



英語に、“Not invented here”症候群という言葉がある。「いいんだけど、俺が考えたわけでないから、責任は持てないし、知らない」という心をヒダを表す言葉だ。東大が「教育は国家百年の計」のテーマにチャレンジするこの大変革が成功したら、推進してきた前任者、失敗でもしたら後継者という評価になるなら、誰が積極的に関わるだろう。また、そんな「手柄」みたいな次元でなく、日本の高等教育の国際競争力の低下や弱体化は、浜田総長自身も痛感しているから、ここまで進展を遂げてきたのではないだろうか。検討終了が5年先なら、実現はまたその先であり、はたしてそこまで待てる悠長な話なのだろうか。

大学の国際競争力の低下は、大学だけの問題ではなく、「社会問題」と捉えるべき



よく引用されることの多い「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」の最新2010−11年版の「世界大学ランキング」では、アジアのトップは香港大学にさらわれ、3年前はベスト100にかろうじて4大学が入っていたのに、今回は東大と京大の2大学のみ。それが日本の高等教育のポジションなのだ。ここまで落ちると、各大学の問題というより、立派な国力低下の社会問題で、皆が問題意識を共有すべきだ。だから、浜田総長だけがやっかいな問題を抱え込む、あるいは大変な目に合うことは、私はよしとしない。

産業界も高等教育におけるグローバル人材育成に期待



幸いというか、産業界だって、高等教育の低下傾向はとりわけグローバル人材の文脈で理解していて、この東大の試みを歓迎している。6月に発表された経団連の「グローバル人材提言」はその例だ。文科省だって、あるいは政府だって、日本のトップ大学の果敢な挑戦を後押しするべきだし、他大学も積極的に関わって、これからの日本の大学の競争力向上のために、何ができ何をなすべきか、今まで以上に議論し、実際に行動に移してほしい。
 「産官学」に加え、「民」、これはこの場合、社会一般や親御さんを指すが、大学の改革を理解し、困難を認識し、サポートする立場でありたい。

”教育環境の整備”は広くおとなの責任



浜田学長は、記者からインタビューの最後に、「そこまでして、この問題に取り組もうとしている理由は?」と聞かれ、明確に答えている。「若い世代に対する責任です」―― これからの日本を担う若者の教育環境を整えるのは浜田学長ひとりだけでなく、広く各セクターの成熟したおとな全体の責任に他ならない。

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