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センター試験後継の新テストに「国語」の記述式問題を導入したときに起こる惨状

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※ 最初に大事なお断りです。下記の記述は、現在公開されている情報と、中高・予備校・大学短大の試験現場についての知見を総合して、日比が予測的に書いたものです。個人の予測ですから、当然外れたり勘違いがありえます。また採点現場の事情について触れたところがありますが、いかなる大学の個別的事情も公開しているものではありません。あくまで「国語の採点」の最大公約数的実態と日比が考えるところを述べたものです。誤解なきよう、お願いいたします。

以下長文です。目次を示しておきます。結論だけ知りたい方は、Ⅲに飛んで下さい。私が本当に言いたいことは、実はⅢだけです。

  • Ⅰ 最初の確認
    • 確認A 同じ「国語」でもセンターとは出題の形式が大きく違う可能性
    • 確認B 国語の採点には「ゆれ」がつきもの
    • 確認C 入試日程の大枠は現在と大きく変わらない
  • Ⅱ 「記述式」導入でどうなる?
    • 1)大学の採点担当者は寝られるのか
    • 2)一人の解答を、複数の大学が採点する愚
    • 3)受験生の力は結局うまく測れない
    • 4)コンピュータ利用がキナ臭い
    • 5)新テストは2日間で終わらないかもしれない
  • Ⅲ まとめ

Ⅰ 最初の確認

確認A 同じ「国語」でもセンターとは出題の形式が大きく違う可能性

文科省の資料を読んでいる中で、新テスト(センター試験に代わるものとして検討されている共通テストのこと)の「国語」についての「記述式問題イメージ例」を見つけました。高大接続システム改革会議「最終報告」(平成28年3月31日)の参考資料として付されていたものです。全体像はリンク先pdfの66枚目から読むことができますが、部分のみ画像で下に示します。

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現在の一般的な記述式の「国語」の出題とは、かなり違っていることがわかると思います。多くの大学入試の「国語」の問題が、長文の評論などを読解した上で、その内容の正確な把握にもとづいた要約的な解答の提出を求めているのに対し、これは複数の文章や図表、グラフを読解し、それらを総合的に突き合わせ、異なった角度から見解を示すことを求めています。

これは、「国語」という教科で養成しようとしている力が、変化している(変化させようとしている)ことに由来します。上記の「たたき台」を出したのが、「高大接続システム改革会議」であることからわかるように、高校の指導内容と、大学入試の形式と、大学の入試選抜・教育・学位授与ポリシーとを、文科省は一体的に変化させようとしているのです。

確認B 国語の採点には「ゆれ」がつきもの

国語の記述式の採点は、難しいです。難しい最大の理由は、長文の解答文を評価しなければならないことに由来します。一般的な採点の方法は、おそらく次のようにされています。

  (a) 部分点の積算 + (b) ミスの減点

50文字なら50文字の解答文のなかに、答えるべき要素(出題文から読み取る)が2つとか3つとかあります。まずそれが確実に含まれているかどうかが、(a)。ただし、この「含まれ方」にグラデーションが存在しえます。含んで欲しい情報量を完全に網羅している解答から、部分的に欠落している解答、まったく不足している解答まであります。

そして解答文は、ミスを含みます。テンパった受験生が時間に間に合わせようと必死で書く解答です。誤字脱字。テニヲハの間違い。文章のよじれ。文字数不足。などなどなど、出てしまって当然でしょう。これを加味するのが、(b)

要するに、国語の記述式の採点は、文字数が多くなればなるほど、判断するチェックポイントがどんどん増えていきます。そしてチェックポイントのそれぞれに判断の「幅」が存在しえます。その「幅」の判断が人によって分かれ、その判断の異なりが積み上がると、最終的な得点に差が出てきます。

実際の採点現場では、この「ゆれ」や「幅」をできるだけなくす工夫をしているはずです。詳細な採点基準を設けたり、採点者ごとの採点範囲を工夫したり、などです。各校の中で出題・採点をするので、それができます。

後述しますが、センター後継の新テストでは、共通の問題に対し、それぞれの大学が個別に採点を行う可能性が出て来ました。さて、何が起こるか。

確認C 入試日程の大枠は現在と大きく変わらない

国立大学協会が、入試日程について検討をしています。「大学入学希望者学力評価テストの実施時期等に関する論点整理~とくに国語系記述式試験の取扱いについて~」(平成28年8月19日)という文書です。

これによれば、現在の1月中旬のセンター試験日程より前倒しする案は、高校現場の日程から難しい。後ろ倒しは検討していませんが、つまりそれはありえないので検討もしていないということでしょう。そうすると時期はおそらく現行通りです。

下図は、野田塾が作成した「平成28年度 国公立・私立・短期大学入試日程」です。

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国大協の日程検討は、当たり前ですが国立大の都合しか考えていません。私立大学・短期大学の入試日程は、現在上図のとおり。センターの追試験直後から、入試が始まっていることがわかります。採点、いったいどうなってしまうのでしょう。

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