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災害が起きたら言葉を交わそう

 このところ、立て続けに日本列島を襲っている台風。

 珍しい気圧配置の影響で、どうも日本列島がちょうどいい台風の通り道になっているようで困りものである。

 特に記録的な台風となった台風10号は、南西諸島周辺をうろついた後、岩手県に上陸。そのまま北海道を通り、広い地域に多くの被害をもたらした。統計開始以来、台風が最初に岩手県に上陸したのは初めてということである。(*1)

 僕の記憶では、台風があまり北海道を通ったという記憶がないので調べてみると、北海道は日本の他の地域と比べると台風が接近した数が少ないようだ。(*2)

 今回の台風10号が十分に強い勢力を保ったまま上陸したことや、台段あまり台風が通らない地域だということで混乱が起きたのか、やはり大きな被害が出てしまったようだ。僕がこれを書いている時点で、死者だけで16人にのぼることが発表されている。(*3)

 すでに台風は去っても、橋や崖の崩落などで身動きが取れなくなっている集落などもあり、まだまだ安心できない状況にある。

 そうしたなか、北海道新聞が、なんともやりきれない記事を配信していた。

 各地で川が崩落し、町職員や業者が通行止めをする準備などをしている中、自ら走ってきて、崩落した橋から川の中へと転落する車があったというのだ。作業をする人たちは止まるように何度も身振りやライトで伝えたが、気づいてもらえなかったという。(*4)

 この記事を見て「止めようとしている人がいるのに、気付かなかった。ドライバーの自己責任だ」と批判することは簡単である。

 しかし、夜の山道、台風が周囲の木々を大きく揺らし、豪雨で前も余り見えず、音もかき消される中、現場の状況を冷静につかむことができない人もいるだろう。崩落した橋の向こう側にライトが見えれば、そこに車があるから大丈夫だと思い込み、そのライトが点滅していても、その意味を余り気にもとめずに進むかもしれない。日頃よく通っている見知った道であればなおさら安全だという勘違いをしたまま進んでしまうということもあるだろう。

 もちろん、通行止めにするという対処が遅かったという話でもない。

 普通の通行止めや、工事による車線変更であれば、計画的に、あらかじめ手前の方から警備員が車に合図を出しながら、徐々にカラーコーンを広げていき、安全に作業帯を確保することができる。

 しかし、今回は台風である。深夜に台風の風雨が吹き付ける中、ともすれば自身の安全すら危ういままで作業を行った人たちに、感謝こそすれど、落ちた車を止められなかったことを責められる権利のある人は、誰も居ない。

 ただ、台風の中、いろいろな人がいろいろな事情で安全な場所に留まることができず、その結果としてこうした事故が起こったことは残念だし、ひょっとしたら止められた事故だったかも知れないと肩を落とす方々も、大変無念であったことだろう。

 さて、起こってしまったことは巻き戻しようがないのだから、こうした事故があったことを知った我々は、その教訓をどう活かすべきか。

 ドライバーは、こういう事故の可能性があることを知り、台風などが接近していたり、地震があった直後は、まずは安全な場所に避難し、なるべく移動をしないことが再重要だ。もし移動しなければならない時は、通り慣れた道でも周囲にいつも以上に気を使い、わずかな異変にも気づくことができる慎重さが必要だと肝に銘じるべきだろう。

 特に山間の橋など、他に迂回手段がないような場所では、道路管理者や警察やその場に居た誰かが橋の崩落に気づき、すぐに通行止めにしようとしても、崩落した橋を渡ることができず、片側でしか通行止めができないような可能性があることは頭に叩き込むべきである。

 そして、なるべくその場その場にいる人達と言葉を交わし、付近の状況などの情報を少しでも多く得ていくべきだ。車というのは個室みたいなもので、つい自分一人だけの空間であるように考えてしまう。しかし見渡せば周囲には人がいるはずだ。その人たちに言葉をかけるだけの慎重さがあれば、すでに崩落した橋に突っ込むような事故は起こさずに済んだはずなのである。

 災害にあった地域では、刻一刻とその場の状況が変わる。見知らぬ人とでも情報交換をすることで、新しい情報が手に入る。普段は人と話すのが苦手な人でも、災害の時は何気ないことだけでも言葉をかわすことが自分の助けにもなるし、相手の助けにもなる。  災害の時こそ助け合いの精神を忘れないようにしたい。

*1:台風10号追跡動画 迷走11日間を一気に1分で(ウェザーニュース)
*2:台風の平年値(気象庁)
*3:【台風10号】北海道・岩手で4遺体 死者16人に - 産経ニュース
*4:「止まってくれ」制止届かず 台風で橋崩落、車3台転落 北海道十勝(北海道新聞)

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