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若者に政治コンテンツを届ける難しさ〜18歳選挙権を取材した記者たちが見たもの

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7月の参院選では、新有権者となった18、19歳の投票率は45.45%(総務省推計)と、従来の20代の投票率を大きく上回った。この数字の背景には、多くのマスコミや政治家が「18歳選挙権」に言及したことで、広く注目されたことがあると言えるのではないだろうか。

今後も若者たちの政治や投票への関心を維持し続けるためには何が必要なのか。そのヒントを探るべく、全国の高校へ出向いて政治に関する授業を行ってきた原田謙介氏と、1年以上にわたって若者と政治を取材してきた2人の新聞記者による鼎談を実施した。

原田謙介(司会):NPO法人YouthCreate代表理事
松下秀雄:朝日新聞編集委員(政治担当)
小松夏樹:読売新聞編集委員(教育部)

■若者に政治コンテンツを届ける難しさ

松下氏

松下:私は1989年に朝日新聞に入社し、政治部記者として、政党や官邸、省庁の取材を担当してきました。その中で感じていたのは、永田町や霞が関の動きを取材するだけでは政治はわからない、そこに伝わりにくい沖縄や女性や若者たちの声を見落としてしまうということです。そこで以前から「政治断簡」というコラムで沖縄や女性や若者たちの問題を意識的に取り上げてきました。一方、今回の参院選では「読者と一緒に考える場にしよう」というコンセプトで作っている「フォーラム面」で、若者と一緒に政治を考える企画が立ち上がり、私もそこに参加しました。

小松:私も1989年に読売新聞に入社し、以来28年間、社会部を中心に記者としてやってきました。現在は教育部の所属です。

松下:同期ですね(笑)

小松:そうですね(笑)。私は昨年の春ごろから、主権者教育や18歳選挙権について社内で一体的な報道をすべく、部署間の取りまとめをしながら自分でも取材をしてきました。

原田:具体的には、どのような取材・企画を進めてきたのでしょうか。

松下:参院選に際して、新聞の読者には18、19歳が少ないという問題点もあり、まずどうやったら一緒に考える場を作れるのかが課題になりました。そこで、「Voice1819」というサイトを立ち上げました。

難しかったのは、自分から声を上げてくれない人たちにどうやってアプローチしていくか、という点です。ネットのインフルエンサー、アイドルや芸人さんといった、影響力のある方にも、ツイキャスやPeriscopeで中継するトークセッションにご出演いただいたりして、そうした人たちと接点を作れないか試みました。

「Voice1819」で心がけたのは、政治を身近に感じていただくことです。そのための工夫の一つが、高校生発案の写真コンテストです。「身近な風景も、実は政治と関わりがあるんじゃないの」という視点で写真を撮り、投稿していただきました。私自身は「Voice1819」に載せるコラムの執筆を担当しましたが、それも政治を身近に感じ、我がこととして考えるきっかけになればと思って書きました。

小松氏

小松:取材としてはまず高校や大学の現場に入り、先生方やNPO、専門家の方々がどのように主権者教育に取り組もうとしているのか、学校の定点観測もしながら探ってみました。高校の定点観測は、東京だけでなく、大阪・福岡でも毎日のように学校に記者が行って取材しています。

20歳の投票率が非常に低い理由の一つは、学校で全くと言っていいほど現実の政治を取り上げてこなかったからではないかと考えました。新聞社として何か役に立てばとも考えたので、取材をするだけでなく、我々が授業をさせてもらおうというプランを発案し、授業では新聞記事を教材にしようとしました。でも、新聞記事自体、そのまま教材にするには難しいということに気が付きました(笑)。できるだけ多くの人に理解してもらえるように記事を作っているつもりなのに、高校生には結構「わからない」と言われてしまうのですね。それは記者として、一番恥ずかしい。今の政治についてイチからよく分かる、授業でも使ってもらえるような教材化を前提とした記事を9月から教育面に掲載しました。偉そうにしない、でも媚びない、というイメージで。

新聞記者って、ともすると偉そうに見えるらしいです。政治の話なんかを私の娘、19歳位の時にすると、「偉そうだ」と言われてしまうんです(笑)

原田:どこまで目線も合わせれば良いのか、政治家も悩んでいますよね。かといって、媚び過ぎるのも良くないと思っています。僕も授業では「そうだよね、忘れちゃったよね」「知らなくて当然だよ」ではなく、「習ったはずでしょ?復習して下さい」とあえて言ってみることもあります。

松下:新聞って、ちょっと難しい言葉を使ってしまったり、プロの世界でのみ通じるようなことを書いたりしがちですよね。私も「朝日小学生新聞」に記事を書くことがあるのですが、そのためにむしろ勉強し直して、こっちの方がわかりやすい記事だなと思ったりしますから(笑)

これまでの新聞は、読者にある程度の知識があるという前提で書いていた部分があると思います。自分自身を振り返ると、永田町の人、霞が関の人に読まれることを意識して正確さにこだわりすぎたり、専門用語を使うと「プロになれた」ような気がしてうれしくなったりして、内輪に向けた記事を書いていなかったか。18歳だけでなく、一般の大人の方にもわかるような言葉で書いていたか、という反省があります。

また、一つの紙面にたくさんのニュースを詰め込もうとする余り、わかりにくくなっている面もあります。「一昨日の記事で伝えたよ」という前提で説明を省くと、それを読んでいない読者が付いて来ることができない。どれほどの量のニュースを提供し、どこまでていねいに説明するかは、とても難しい問題です。ウェブと連携し、そちらでよりていねいに説明するという方法もあると思います。

小松:私も非常に苦労しました。高校生の教科書に載っていることは省いていいかな、というと、それではダメなんです。例えば「合計特殊出生率」などの用語は、毎回必ず分かりやすく意味を説明するとか。一方で、情報を100%提供するよりも、自分で調べたい、掘り下げたいと思ってもらえるような記事になれば、という気持ちで作っていた部分はあります。

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