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「働き方改革」夏の思い出を職場で話す効用 - 後閑徹

第三次安倍内閣の「働き方改革」が動き出した。国の制度改革は強制(規制)・誘導といった現実の組織を飛び越えたところからやってくる。しかし、仏作って魂入れず、という言葉があるように、働く現場がどれだけ自主的な改革をするかが改革の成否を分けるポイントとなる。ここでは、明日からできる、誰でもできる、職場で出来る改革の話をしてみたい。

■職場を構成するメンバーの変化


総務省の労働力調査によれば、雇用機会均等法が成立した1985年の女性雇用者数は1,548万人に対し、2015年では2,474万人。結婚・出産により女性が離職するいわゆるM字カーブの底は49.0%から約20ポイント上昇している。この30年で、わが国の女性就労人口の特色であるM字カーブは未だ存在するものの、M字の谷をフラットにさせ、着実に台形へと形を変えてきている。

統計からも明らかなように、職場の構成は、現在、マネジャー層である40~50代が仕事のいろはを叩き込まれた1980年代・90年代とは明らかに異になっている。当時より、女性の比率が増え、かつ、子どもをもつ女性が職場に増加している。

また、高齢社会の進展に伴い、65歳以上の要介護者は2013年で569.1万人。この10年で198.6万人増加し(内閣府 平成28年版高齢社会白書)、家族の介護を理由とする離職・転職者は年間10万人に達している(総務省 平成24年就業構造基本調査)。要介護者を抱えた労働者もまた、職場に増加していることことなる。

さて、このような職場の構成メンバーの変化に対応し、仕事の仕方・働き方は大きく変わったといえるだろうか。

職場の構成メンバーが大きく変化しているにもかかわらず、仕事の仕方や働き方が大きく変わっていなければ、どこかにそのひずみが生じているはずだ。変化への対応は、ビジネスモデルや事業領域の設定のみではない。働き方や、これに直結する組織の在り方もまた、時代の要請に柔軟に対応する必要がある。

■このまま滅私奉公でやっていけるのか

 
かつての職場は、いうなれば仕事と私生活を切り分けた二元論のもとに成り立っていた。私生活の中心である家事・育児・介護を女性に背負わせ、寿退社という暗黙のルールがこの二元論を支えた。

これは、文字通り「滅私奉公」だ。家庭の事情を仕事にもち込むことは、眉をひそめられる行為となる。「亭主、元気で留守がいい」という防虫剤のCMが1986年、「24時間戦えますか?ジャパニーズ・ビジネスマーン」と勇ましく歌った栄養ドリンクのCMが流行ったのは1988年のことである。

しかし、子どもをもつ女性も仕事を続けるようになった現在、育児・家事・介護という私生活の諸事情は職場にもち込まれるようになった。最早、24時間は戦えないのだ。仕事と私生活の二元論は成り立たず、弁図のように重なり合うようになったのが現在である。職場は、仕事をする場所に加えて、仕事と私生活の調整を図る機能をもつことが求められるようになったのである。
職場の機能変化

■もっと職場に私生活の話題を

 
職場が仕事と私生活の調整機能を果たすための簡単、かつ、有用な方法が、私生活の話題を職場で話すことだ。セミナーや研修でこの話をすると(もちろん、より詳細に)、「確かに時短を上手に利用している人は職場のみならず、お客様とも子どもや家庭の話をよくしている」、との感想を漏らされるワーキングマザーがいたり、受講生の方が大きく頷いてくれたりする。

私生活の状態を職場の情報として共有する。抱えている悩みや希望、感情や感覚、様々な個人的事情を職場メンバーが知る。ひとりで抱え込んでいた私生活と仕事の両立に関する悩みは、背景を伴って理解されるだろう。自己開示は、勇気のいることだが、もし、それが妥当なものであれば、対話者間の距離を縮め、共感を生み、相手への理解を深める効果がある。そして、成果を上げるために職場・組織の仕組みを変える責務を負うマネジャーの背中を強く押すことだろう。

目標管理のための期首・期末面談だけが職場のコミュニケーションであってはならない。感情の交流を生み出すのは、インフォーマル(非公式)なコミュニケーションだ。始業前、ランチの時間、営業先への移動時間、ちょっとした休憩時間でも構わない。そういうときこそ、仕事の話ではなく、私生活を話題に挙げよう。家庭の愚痴を言い、苦労や喜び、感動を伝え、夢を語り、悩みを相談し、それぞれの事情を共有する。職場のメンバーを大切なパートナーに変えるために。そして、助け合う職場に変えるために。

夏季休暇は、仕事からひと時離れ、仕事以外の自分のパーソナリティーに出会う時間であったはずだ。久しぶりに帰る実家の懐かしさ、子どもの頃の思い出、自宅でくつろぐ楽しさ、子どものひと夏の成長やパートナーの笑い話etc. 感情・感覚を伴った私生活を職場の話題にのせては如何だろうか。

職場環境の改善は、マネジャーのみならず、職場のメンバー個人も努力するべきことだ。時代の流れに合わせて職場も変わらなければならない。働き方改革を、まずは身近な職場から始めては如何だろうか。

【参考記事】
■インタビュー事例紹介 職場の男女格差/仕事以外に生きがいを探す(後閑徹 人材・組織開発コンサルタント)
http://redesign64.jugem.jp/?eid=120
■補:なぜ女性活躍推進法で男性の働き方が変わるのか?後閑徹 人材・組織開発コンサルタント)
http://redesign64.jugem.jp/?eid=88
■「男性と違う何かをする必要はない」(NBA女性コーチ)は正しい (後閑徹 人材・組織開発コンサルタント)
http://sharescafe.net/47154584-20151209.html
■マタハラ降格判決から学ぶ組織人間の危険性(後閑徹 人材・組織開発コンサルタント)
http://sharescafe.net/46987171-20151123.html
■ワーキングマザーにこそ必要なボスマネージメント(後閑徹 人材・組織開発コンサルタント)
http://sharescafe.net/48964013-20160629.html

Redesign Academia 代表 人材・組織開発コンサルタント 後閑徹

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