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介護職の社会的評価を上げるには?

 介護労働安定センターより、2015年度の介護労働実態調査の結果が公表されました。今回は、2015年度の制度改正・報酬改定後としては初の調査となり、その影響も注目されます。

「社会的評価が低い」がじわじわ上昇中

 同調査の場合、対象となる経営主体や従業員規模別の比率が毎年やや異なるため、年度ごとの単純比較が難しい部分はあります。ただし、このデータが厚労省の審議会などで資料として取り上げられている点を考えれば、やはり重視せざるを得ません。そこで、調査対象に多少の誤差はあるとしても、見逃せない気になる傾向を取り上げたいと思います。

 ニュースでは、人手不足感が毎年強まっている点をクローズアップしましたが、その原因としてやはり「賃金が低い」がトップとなっています。この「賃金が低い」という回答は、対前年度比で4ポイント近く低下していますが、2年前と比較するとまだ高率です。処遇改善加算が引き上げられた効果は一定程度認められるものの、人手不足を根本的に解決するにはほど遠いと言わざるをえません。

 そのうえでさらに気になるのは、人手不足の原因として「社会的評価が低い」という回答が3年連続でじわじわと数字を伸ばしていることです。そもそもこの「社会的評価が低い」とは、どういう意味なのでしょうか。

イメージアップを目指すための切り札とは?

 ここ数年、介護職員による虐待件数が急増しているという調査結果や、虐待した職員が警察に逮捕されるといった事件がたびたび報道されています。こうした報道内容のクローズアップが、介護業務の「社会的評価を落とす」原因の一つかもしれません。その点では、マイナスの話題に過剰に反応しやすいマスコミ等の報道姿勢も問題の一つといえそうです。

 ただ、ここで考えたいのは、なぜ「過剰反応」につながってしまうのかという点です。その一つに、介護に対する社会的な認識の中に、「プロとしての業務」よりも「家族が行なうことの代行」という考え方が今も強く残っているからではないでしょうか。つまり、「介護業務の(家族ではできない)専門性」という社会認識が醸成されておらず、報道する側もプロの介護業務の素晴らしさを描き切れないわけです。それゆえに、「わかりやすいマイナス事象」のクローズアップに走ってしまいがちとなる──こうした構図が考えられます。

 そこには、もちろん「報道する側の勉強不足」もあるでしょう。しかし、国として介護現場の人手不足を深刻にとらえるなら、施策面で状況を転換させることはできます。それは何かと言えば、「介護の専門性」を介護報酬で明確に評価することです。単に家族の介護離職を防ぐためというメッセージでは、「家族がすることの代行」のイメージからは抜け出せません。そうではなく、たとえば医療ではできない人的ケアによって、健康寿命を大きく伸ばし、認知症になっても社会参加を果たすことができるというレベルの話です。

基本報酬のアップこそ社会へのメッセージに

 厚労省などは、「そうしたアピールも随時している」と主張するかもしれません。問題なのは、それではその評価をなぜ基本報酬に反映させないのかという点です。2015年度のマイナス改定の際、個人的に主張してきたのは、「このマイナス改定は、国が介護の専門性を評価していないという社会的メッセージにつながってしまう」ということでした。

 「処遇改善加算を引き上げたのだから、手取りの賃金は増える。それでいいだろう」という発想は、介護人材の頭数さえ増やせばいい、つまり「専門性のあり方は横に置く」という考え方がどうしても透けてしまいます。社会というのは、そのあたりには大変敏感です。

 要は「お金を上乗せする」という問題ではなく、介護基盤をきちんと整えるという施策側の気概があるかどうかです。国が打ち出す予算や施策の一つひとつは、そこに強いメッセージが込められ、そこにかかわる人々の社会的評価を大きく左右します。この点が理解されず、「財政上のつじつま合わせ」に終始しては、国の基盤を整えることはできません。

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