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「非常に強い台風」が接近していても会社に行くのはサラリーマンの鏡か? - 榊 裕葵 社会保険労務士

台風10号が30日から31日にかけて関東から東北を直撃することが予想されている。

■台風が来ていても出社すべきか

インターネットの書き込みなどを見ると、「それでも会社へ行くのがサラリーマンの鏡だ」という意見もあれば「危険を冒してまで出社するなんて社畜だ」という意見もあり、大型の台風のような自然の驚異に直面した場合、サラリーマンはどのように行動すべきか、様々な価値観に基づき議論がなされている。

このようなとき、会社としてはどのような判断・対応をすべきか、社会保険労務士としての観点から3点申し上げたい。

■経営者が事前に判断を示すべき

第1は、経営者があらかじめ方針を決め、社員に伝えることである。

今回の台風であれば、29日の月曜日は平常通り出勤できるであろうから、29日の終業時間までに、30日は全社臨時休業にするとか、やむをえない仕事がある社員以外は有給休暇の「奨励日」にするとか、通勤経路が危険な場合は本人の判断で出社をしないことを認めるとか、あらかじめ会社としての判断を示すべきであろう。

会社から明確な指示が無ければ、社員の中には「無断欠勤扱いになったらどうしよう」とか「仕事に対する責任感が足りないと思われないか不安だ」とか考え、無理をしてでも出勤をしようとする人も少なくないであろう。その結果、通勤途中に怪我をしたり、死亡したりするようなことがあっては本人にとっても会社にとっても不幸な結果である。

事業の運営に大きな影響がない場合は、社員が安心して出勤を差し控えられるよう、経営者は必要な配慮をすべきである。

なお、本段落の最後に補足である。台風が来る日を有給休暇の「奨励日」にするという選択肢を上記で提案したが、あくまでも取得の「奨励」にとどめ、取得を「強制」をしてはならない。法律上、有給休暇の取得日を決めるのは従業員の権利だからである。

■緊急連絡網を整備する

第2は、緊急連絡網を整備することである。

事情があって29日の時点で出社要否を判断できなかったり、一応の判断はしても当日朝になったら状況が変わったりすることも考えられる。

そのような場合に備え、会社から各社員に連絡ができる緊急連絡網をあらかじめ整備しておくことが望ましい。

一昔前は緊急連絡網といえば、順番に電話連絡でリレーをするというものであったが、昨今のIT技術の発達により、メーリングリストで一斉配信したり、LINEやFacebookメッセンジャーといったSNSや、あるいは社内のITインフラを用いたりして、緊急連絡事項の伝達は非常にスムーズに行うことができるようになった。

もちろん、社員のプライベートやプライバシーに配慮することは重要であるが、今回のような台風に限らず、地震などもいつ起こるか分からないので、災害に強い会社作り、社員の安全を守れる会社作りのためには、災害時に可能な限り連絡を取り合える体制を作っておくというのは非常に重要なことである。

■出社しなくても仕事はできる時代だ

第3は、台風を機に、「出社」=「仕事」という既成概念を打ち砕いてみてはどうだろうかということだ。

確かに製造業や建設業などでは、ほとんどの場合、出社をして現場に入らなければ仕事をすることは難しいであろう。

しかし、台風が来た時に帰宅難民になってしまうのは、大抵、都内に通勤するサラリーマンであり、デスクワークをしている方が多いと考えられる。

そういった職種の場合は、ITインフラの発達した現在であれば、台風の日に無理に出社をしなくても、在宅勤務の形でも少なからずの仕事を進めることができるにではないだろうか。

必要な場合には在宅勤務でも業務が進むようなインフラを構築することが、災害に強い企業づくりにつながるであろう。

たとえば、会計や給与計算は、ほとんどのソフトでクラウドに対応するようになったので、業務用のノートパソコンを持ちかえれば記帳や給与計算は可能である。経費の精算なども、写メで撮影した領収書をクラウド上にアップして、上司もそれをクラウド内で確認して承認プロセスを踏むといったような進め方が可能である。

会議の資料の作成なども、クラウド上のプレゼンテーション資料やレジュメを複数人で編集することも可能なので、スカイプ等で関係者をつなぎ、議論をしながら資料の修正などを行っていけば、会社の会議室でプロジェクターを見ながら会議をしているのとほとんど同じ環境である。

■どこで働いていても成果を出す人がサラリーマンの鏡

もっと言えば、そもそも「会社に来ている=仕事をしている」ではないであろう。

出社しても、休憩時間でもないのに勝手に離席して煙草をふかしたり、会議に出席しても終始ひと言も発言しなかったり、壁際の席であることを良いことに業務に関係のないネットサーフィンを楽しんだり、居眠りをしていたり、ということでは、仕事をしているとは言えない。

それよりも、出社はしていなくても、在宅勤務でキッチリと与えられた仕事をこないしている人のほうが当然評価されるべきであろう。結論としては、「どこで仕事をしていようが成果を出す人がサラリーマンの鏡」なのではないだろうかということである。

さらに言えば、我が国の労働に対する風潮が、「出社さえすればとりあえず仕事はしている」とか「在宅勤務はイレギュラーな働き方だ」という考え方から、「出社していようが在宅勤務であろうが、ちゃんとアウトプットを出してくれればどちらでも良い」という考え方に変わってくれば、子育て中の女性の仕事への復帰のハードルも下がるし、障がい者の方の労働市場への参画も進むであろう。

また、通勤ラッシュも緩和され、「風が吹けば、桶屋が儲かる」的には、痴漢被害や痴漢冤罪の減少といったところにまで在宅勤務の波及効果はあるのではないだろうか。

今後は通勤で台風の被害に遭われる方がいなくなることを期待したい。

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