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課外活動やめたい-子どもの意見は尊重すべきか

By NINA SOVICH

 あなたの息子はフルートが嫌いだ。本人は今までも嫌いだったし、これからもずっと嫌いだろうと言っている。

 あなたは強くて意志の固い親だ。息子をだましたり、おだてたり、物でつったり、脅したりして、毎日フルートを練習させている。かなり上手に吹けるようになった。リサイタルもやるし、楽団にも入った。それから何年もたち、思春期を迎える頃になって、息子は「フルートをやめたい」と言ってきた。こんなとき、親はどうすべきか。

 「やめる」というのは、多くの人にとって受け入れやすい考えでない。一生懸命に取り組んで何かを達成することが大事だと言ってきただけに、とりわけ親はそれを受け入れたがらない。数えられないほどの時間を高価な習い事の送り迎えに費やしてきたことは言うまでもない。子どもが成長し、大学入試の競争が視野に入ってくると、「やめたい」という言葉は、親にとって恐怖の一語になり得る(訳注:米国では大学入試の際に課外活動が重視されるという背景がある)。

 だが、「断念する」ないし「やめる」ことには大きなメリットがある。そして、やめることは、子ども時代に最も多く学べることでもある。

 やめると決意することで、目標がかえって明確になったり、やる気を出させたりする場合がある。リスクが小さいときに「決定を下す」練習をし、大人になることへの備えができる。やめることで家庭内の緊張が緩み、親も子も学校にエネルギーを注げるようになる。このほか、貴重な余暇の時間が増える可能性もある。

記事中に登場するメリル・カドゥボスキーさん(左)、エイミー・リーさんはの3人の娘たち
記事中に登場するメリル・カドゥボスキーさん(左)、エイミー・リーさんはの3人の娘たち
Photo: Mark Kaduboski; Amy Lee


 アリゾナ州立大学のスニア・ルター教授(心理学)は、「それは子どもにとって難しいが、親にとってはもっと難しい」と述べる。

 専門家たちの意見は、小学生の大半には各種の課外活動に触れさせ、それを追求させるべきだとの見方で一致している。年齢が上がるにつれ、自然と選別が起こる。14歳にもなると大半の子はスポーツを5つもやっていないが、やめ方の指針は存在する。

 シーズンや学期の途中でやめさせるのは得策でない。親は、家族が伝統的にしていることについては、「やめられない」という線引きをした方が賢明だろう。例えばヘブライ学校(ユダヤ教徒向けの学校)や教会に通う、家族で休暇を過ごす、手伝いをするなどの習慣だ。さまざまな活動を始める前に、子どもの興味を理解することがカギだ。親のサポートも重要だ。例えば、父親が野球をやっていたなら、それに対する熱意や専門知識を子どもに伝えることができるかもしれない。

 サンフランシスコを拠点とするコンサルタントのエイミー・リーさんは、3人の娘の母親だ。娘たちは4歳くらいになったときに、ピアノ、ダンス、テニス、サッカーと図工の教室に通い始めた。リーさんは、決定権は母親である自分が持っているという育児哲学を持っている。

 リーさんによると、子どもが新たな活動に慣れるまでには通常は半年程度かかる。やめる場合もあるが、その場合は慎重にコントロールする。やめるプロセスには1年をかけ、話し合って徐々にやめさせるといったことも行う。例えば、練習量は減らしても良いが、レッスンには通い続けなければならないといったようにするのだ。

 リーさんは「子どもたちは、やめる際に十分に学ぶ必要がある」と話す。

 米バージニア州マクリーン郊外で子どもを対象にしたセラピーを行っているジェニファー・ウィーバー氏は、親の仕事は指図することではなく、決定するためのシステム構築を手助けすることだと述べる。

 また、親は「自分の子はこれが得意になるだろう」という思い込みを捨てるべきだという。

8歳のときにピアノをやめてスカッシュを習い始めたエバ・ロスさん
8歳のときにピアノをやめてスカッシュを習い始めたエバ・ロスさん
Photo: Christy Ross


 首都ワシントンに住むクリスティ・ロスさんは、子ども時代にピアノを習っていた。夫は本格的なミュージシャンだ。このため、娘は音楽に関しては天性のものがあると思っていた。そのため、娘のエバさんが3年間で3人のピアノ教師の間を転々とし、先生が来るとバスルームにこもるようになると当惑した。

 エバさんは8歳のときにピアノをやめ、スカッシュを習い始めた。それ以降、クリスティさんが子ども時代に使っていたピアノ、夫のバイオリン、マンドリンやギターが並ぶ音楽のための部屋は、おおむね沈黙したままだ。現在13歳のエバさんは、父親と一緒にスカッシュをしており、2人はこれを心から楽しんでいる。

 専門家の意見は、トゥイーン(8―12歳前後)になったら、子どもに決定を下させることが重要だとの見方で一致する。親は苦しい立場に置かれることになる。この時期は、子どもが社会的になり、学校の勉強が難しくなるほか、スポーツでも競争が激しくなってくる時期だからだ。子どもがサッカーをやめたいと言うのは、大人として自立したいという主張なのか、それとも、ポケモンGOがやりたいだけなのかを見極める必要がある。

 コネティカット州ウィルトン在住の弁護士、マーク・カドゥボスキーさんの娘、メリルさん(15)には、バレエをやめたいという悩みがあった。メリルさんは秋になると、「くるみ割り人形(米国ではクリスマスシーズンに多く上演される)」の練習に明け暮れていた。1週間のうち25時間をリハーサルに費やしていた時期もある。毎日時間に追われ、午後11時を過ぎるまで就寝できなかった。宿題は車の中でやっていた。「あまりにもきつくて、楽しめなかった」という。

 メリルさんはやめる代わりに、求められるものがもっと少ないスタジオを見つけた。自分は純粋なバレエではなく、演じることが好きだということも分かった。彼女は今年、ボイスレッスンを始める予定だ。カドゥボスキーさんは、娘が自分の助けになる先生や環境の選び方を学んだのだと述べる。「上手になるためには努力しなければならないことを学んだのであれば、やめても良いと思う」

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