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パパ、スーパー戦隊は仕事なの?「スーパー戦隊とガバナンス」

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長男の目標が「ジュウオウイーグル」から「ザワールド」に代わり、次男も「ザワールド」になりました。二人の「ザワールド」希望者が自宅にいます。脆い精神性を真似て、部屋の隅っこで体育座りしたりしています。

スーパー戦隊を仕事にしていくにあたり、前回は「マーケティング」の在り方について議論し、非営利組織を経営運営するなかで検討すべき多様な観点について、有識者の皆様よりご示唆をいただいております。

今回は、子どもたちを対象にした野外活動や不登校の子どもや生活困窮状態にある子どもたちの学習支援などを行うNPO法人ブレーンヒューマニティー理事長であり、尼崎市参与の能島裕介氏(以下、能島さん)に、「スーパー戦隊とガバナンス」についてお話を伺います。

シビリアンコントロールレベルのガバナンス体制が必要

工藤:本日はよろしくお願いします。今回のテーマである非営利組織のガバナンスについては、能島さんからの示唆がきっかけでした。

能島さん:スーパー戦隊は詳しくないのですが、スーパー戦隊は民間の軍事組織であり、シビリアンコントロールに近いガバナンス方針がないと危ないのではないか、と考えたのです。

工藤:人類を滅ぼす戦闘力ある敵に対抗する組織として、その軍事力や戦闘力は人類の脅威にもなり得るということですね。

能島さん:はい、その意味で一般的なNPOや社団法人などの非営利組織と比較して、類まれなる軍事力を持つ組織であるがゆえに、その影響力も大きいはずです。そうであるならば、隊員が独走してしまうのは危険ですし、隊員が自らを統治することは軍事政権と同じような状態へとつながりかねません。

さすがにそれはまずいだろうということで、きっちりガバナンスを設計しておくべきだと思うのです。

工藤:ガバナンスの概念は非常に広く、多様であると思います。営利企業においてはその所有者である株主が経営者を選び、一定の権限を付与しながらコントロールしていきます。

また、広くは株主のみならず、従業員や取引先、お客様、地域社会などのステークスホルダーとの利害調整のための仕組みなども入ります。

能島さん:その通りです。そしてさらにその概念は広げることが可能です。ただし、議論が発散し過ぎるとよくないですので、今回は非営利組織のガバナンスのなかでも、スーパー戦隊活動における理事会と現場の関係性や仕組みについて検討したいと思います。

工藤:企業ガバナンスの要素のひとつが「取締役会と代表取締役・CEOとの関係性」であるとするならば、非営利組織は「総会・理事会と理事長や事務局長との関係性」と言えるでしょうか。

能島さん:シンプルな例としてはそうですね。この理事会がどのくらい主導権を持つのか。現場との関係性をどう作っていくのかについては、どの非営利組織も悩むと思います。さまざまな非営利組織にかかわっているのですが、その考え方や在り方はバラバラです。

工藤:多くの非営利組織に参画されている能島さんから見てもかなり異なると。

能島さん:理事会が力を持っていることもあれば、現場主導で理事会が承認機関になっているところもあります。今回はあまり触れませんが、総会に意思決定権が集中している組織もあります。非営利組織におけるガバナンス、組織統治は非常に多様です。

工藤:ガバナンスの在り方に正解はない。しかし、スーパー戦隊においては、人類を滅ぼし得る存在と互角以上の戦力を有する非営利組織として、ガバナンスの在り方は慎重に検討しなければならない。

理事会の決定を待つスーパー戦隊は見たくない

能島さん:理事会が力を持つのか、それとも現場が力を持つのかは、それぞれの団体の事業内容、活動内容にも大きく左右されるように思います。一般的にスーパー戦隊では、毎週日曜日、そして夏休みと春休みに突発的な危機が訪れるわけです。

ここまでスケジュールが決まっていますと、これは突発的な襲撃なのかどうか議論の余地はありますが、敵に遭遇した市民の表情や怯え方を見る限りにおいては突発性の高いものなのかもしれません。

工藤:特に夏休みや春休みにおいては数か月前から敵が出現することが盛んに宣伝されていますね。早めにチケットを購入すると特別な玩具が手に入るということで、私の自宅でも、目を輝かせる子どもたちの声がCMの度に聞こえてきます。

能島さん:突発的な危機が訪れたとき、理事会がガバナンスを効かせ過ぎていると隊員が即座に動けないことがあります。一方、自由度を高めすぎると隊員が暴走するリスクを抱えることになります。

目の前の危機に対して現場が柔軟に対応できる権限と、独断専行を許さない統治体制のバランスが重要です。正解なき課題であっても、スーパー戦隊という組織における最適解を実現するガバナンスの仕組みをどうしていくのかが私の問題意識です。

工藤:敵が街を破壊し、罪なき人々を襲っている最中、現場にいる隊員が理事会の決定をじっと待たなければならないというのは、想像しただけで足がすくみます。隊員としても助けられる命が目の前にあるのに動けないジレンマ、ストレスは相当のものだと思います。

能島さん:そういう意味では災害支援分野の非営利組織のガバナンスの在り方が参考になりそうです。突発的な災害に臨機応変に対応するため、理事会と現場の意思決定方法と権限構造がどのように決められているのか。私の知り得る範囲ですが、災害支援分野の非営利組織では、有事の際、現場の判断で動けるよう自由度を高めた仕組みにしています。

理事兼任はレッドかブルーか

能島さん:理事会の重要な役割の一つは、CEOや事務局長といった現場責任者の任命と評価です。責任者の選定とKPIの設定、どのような権限をどのレベルまで付与するのかを明確にしなければなりません。

工藤:それらを検討するにあたって大切にすべきことは何でしょうか。

能島さん:スーパー戦隊という非常に強大な有形力を持つ組織では、倫理規範が極めて大切であると思います。その意味では、理事会構成員である理事には弁護士を入れておきましょう。

工藤:理事の選任なくして理事会は成立しません。倫理規範の観点から弁護士という示唆がありましたが、他にはどのような人材が非営利組織となるスーパー戦隊における理事にふさわしいでしょうか。

能島さん:創業者自らがプレーヤーである非営利組織も多いと思います。その場合で言えば、もう少しマネジメントや仕組みづくりに強い理事がよいでしょう。創業者個人の能力やスキルだけで組織が成り立っているような個人商店のような非営利組織も少なくありませんが、それでは事業の大幅な展開は難しいかもしれません。

なので、例えば、さまざまな企業を見ているコンサルタントや企業経営者などを理事にすることで、創業者は現場を見る一方、社会状況や組織を取り巻くエコシステムを俯瞰して助言や意思決定に力を発揮していただくのはどうでしょう。

工藤:非営利組織を見ていると大学の研究者が理事になっていることも少なくないですね。

能島さん:スーパー戦隊の活動から考えれば、私は災害支援や災害救援を専門としている研究者がいるとよいと思います。また、最先端のテクノロジー、技術革新に明るい科学者も必要かもしれません。過去の先輩隊員から継承されるノウハウなども大切ですが、科学技術の進展により、より効果的に敵を補足したり、安全性を高めたり、ローコストで闘える可能性がありますので。

工藤:戦闘という意味では、私たちの背丈に近い体躯で闘うこともありますし、巨大化した敵に対して、こちらも巨大ロボットなどで応戦することもあります。採石場であればまだいいのですが、街中で不可避な戦闘になった場合、多くの被害、損害が生まれます。

能島さん:被害の大きさや範囲を考えれば、さまざまな利害調整ができるリスクコミュニケーションの専門家も理事に入れたいところです。もっと言えば、そのコミュニケーションを生かして、中立エリアで敵と対話し、落としどころを見つけ、協調できる世界を作ってほしい。武装解除を専門とするネゴシエーターも理事就任していただけると非常に心強いかもしれません。

工藤:国会議員などが理事を務めているNPOなどもありますが、政治家は理事に必要ありませんか。

能島さん:政府関係者などは非常に悩みます。民間組織ですし、その活動領域と活動内容を考えれば、政府からの資金調達も必要になります。理事に政府関係者がいるという理由で政府からの委託や補助が受け取れないことも考えられます。

また、選挙になれば立場が難しくなるかもしれません。複数政党から一人ずつ理事をお願いするというバランス重視も考えられますが、利害調整が難しくなります。そういう意味では政府もステークスホルダーのひとつと考え、ロビイストを理事にいれておく方が現実的です。

工藤:過去に「資金調達」もテーマとしましたが、財務や会計もしっかりやらなければなりません。緊急時に寄付を集めるときには資金使途を明示することは難しく、いつ戦闘があるかわからないため資金の出入りが安定しない可能性もあります。常に市民からの信頼を得られるよう透明性の担保も至上命題です。ウェブサイトなどを通じて、財務関係資料などもしっかり掲載していくべきです。

能島さん:理事というより監事の人選かもしれませんが、寄付を調達する上でその公開性、透明性を高めるためにも公認会計士の関与は大変重要です。それに加えて資金調達ができる理事も考えなければなりません。

工藤:理事に隊員も入るべきでしょうか。

能島さん:入ってもらったほうがいいでしょうね。

工藤:リーダーがよいでしょうか。

能島さん:リーダーだから理事、というのは安直ではないですか。

工藤:申し訳ありません。最初に思いつくのはリーダーであるレッドだったもので。

能島さん:こちらこそ失礼な言葉を使って申し訳ありません。リーダーだから理事なのではなく、理事としての適正、他の構成員とのバランスを考えたほうがよいと思うんです。レッドは猪突猛進、情熱型であることが少なくないのではないでしょうか。

非営利組織も、その立ち上げにおいては志や情熱のある個人から始まります。社会課題は、気が付いた人間が先頭に立って解決に臨みます。そして共感によってひとを巻き込んでいきます。非営利組織のリーダーとの交流が少なくないのですが、非常に人間味あふれるひとたちが多いです。

工藤:確かにリーダー、主にレッド色のひとは思考より行動が先に来るタイプが多い印象があります。そしてブルー色が多いと思うのですが、冷静沈着な隊員も概ね存在してきたと思います。

能島さん:これも理事構成によります。冷静沈着なブルー色の隊員が理事として向いていそうな気もしますが、他の理事が冷静な判断ができるということであれば、最初に現場に飛び込んでいくリーダー、主にレッド色のひとが理事でもいいという意見もあるでしょう。しかし、私は、主にブルー色の隊員が、隊員を代表して理事になる方が健全だと思います。

理事会が、主にレッド色であるリーダー、一般的にはCEOや事務局長に権限付与していくわけです。権限付与する側であり、権限を行使する側でもある隊員の性格が、とにかく熱く飛び込んでいくタイプであるのが危険です。独走したらどうするんですか!

工藤:落ち着いてください、能島さん。そうならないようにするため、私たちはスーパー戦隊とガバナンスについて議論しているんじゃないですか。

能島さん:取り乱してしまい失礼しました。続けましょう。

工藤:全方位で適切な人材を理事会に入れていこうとすると、理事の数が際限なくなりませんか。非営利組織にも、理事や評議員などを見ると、何十人ものリストが並んでいたりするところもあります。

能島さん:ありますね。理事の適正数もまた正解があるわけではありませんが、日常的な業務執行を判断していく理事は少数がいいと考えます。実際には、さまざまな利害調整やバランスを考えると理事数は多くなりがちになるのはわからなくもないですが。

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