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YouTube vs 米音楽業界:争いの内幕

By STEVE KNOPPER


ベック、テイラー・スウィフト、カレブ・フォロウィル(キングス・オブ・レオン)などの有名アーティストは、YouTube上で配信される音楽作品の規制を求めて米議会へ嘆願書を提出した。RollingStone

ネットの動画配信ビジネスはアーティストを潤わせてきたはず。ではなぜ、テイラー・スウィフトをはじめとするアーティストたちは離れていくのだろうか?

2015年、Deadmau5(デッドマウス)は、自身の代理人であるディナ・ラポルト弁護士へ「YouTubeのこれ、なんとかしてくれ」とSkypeでメッセージを送った。その時YouTubeのとあるチャンネルには、アルバム曲、リミックス、ライブの全編を撮影したものなど、400もの動画が不正にアップされていた。「私は弁護士補佐と一緒に6時間もかけて、400件ものコンテンツ削除依頼を送りました。その後チャンネルは一旦削除されましたが、2日後にまた復活していました。これは私のクライアントにとって大問題です」と、ラポルト弁護士は述べた。

10億ユーザー以上を抱えるYouTubeは、今やネット上で最もポピュラーな音楽配信ソースとなっている。一方、テイラー・スウィフト、ポール・マッカートニー、ベック、キングス・オブ・レオンなどのアーティストにとっては頭痛のタネとなっている。彼らは米議会へ公開書簡を送り、何百万本もの動画を不正に公開しているYouTubeを規制するための法改正を要求した。「アーティスト側に選択肢はない。アーティストが好むと好まざるとにかかわらず作品が不正にYouTubeで公開されてしまっている」と、イーグルスやヴァン・ヘイレンのマネージャーも務めたアーヴィング・エイゾフは指摘する。エイゾフもまたYouTubeに対し、(1)アーティストへのロイヤリティ支払額があまりに低いこと、(2)不正コンテンツ削除の不完全性、の2点についての改善を正式に求めている。

音楽ビジネスは以前と比べて勢いが衰えている。アルバムのセールスも10年前の60%にまで落ち込んでいる。一方でYouTubeはその存在感を増し、アメリカ国内で18歳〜24歳のインターネットユーザーの実に98%がYouTubeを利用したことがあるという調査結果が出ている。YouTubeによると、同社の広告収入から30億ドルがアーティストやコンテンツ・クリエイターへ支払われているという。「YouTubeは若者にとって現代のラジオになっている」と、キングス・オブ・レオンやチープ・トリックなどのマネジメントを手がけるケン・レヴィタンは言う。

しかし前出のエイゾフは、「ラジオと違い、YouTubeは悪質なビジネスパートナーだ」と指摘する。YouTubeは不正流出したコンテンツや質の悪いライブ映像の公開を許している。しかも、SpotifyやApple Musicなど他のストリーミング・サービスとは比較にならないほどロイヤリティの分配率が低く、「スーパースターであっても、YouTubeから得られる収入は笑えるほど少ない。YouTubeのロイヤリティ計算方法は非常に複雑で、1配信あたりの正確な金額も不透明である。計算方法を複雑にしてアーティストを煙に巻くやり方は、昔のレコード会社と同じだ」と、エイゾフは言う。

1998年に成立した米デジタルミレニアム著作権法(DMCA / Digital Millennium Copyright Act)により、YouTube等の配信サイトはアーティスト側の承諾なしにコンテンツを配信できる。同法では、リクエストに応じてコンテンツを削除可能な状態にしておくことを条件に、他者が著作権を所有するコンテンツをネット上で配信することが許されている。しかしYouTube時代ともいえる現在、アーティストの代理人は、毎日新たにアップされる星の数ほどの動画をモニタリングする必要がある。これに対しYouTubeは、6000万ドルをかけて開発したデジタル認証技術を使った "Content ID"プログラムというコンテンツ検証システムで不正コンテンツを特定できる、として問題に対処している姿勢をアピールしている。

「YouTubeは私のビジネスを崩壊させ、世界中で盗人を育てながら稼いでいる」 ──スティーヴ・ミラー

「Content IDプログラムでは、著作権のあるコンテンツの99.5%をカバーできている。これ以上に優れた著作権管理システムは他にない。他の誰も著作権管理のシステムなどに手をつけていない頃から10年近く、このシステム開発に費やしてきた」と、YouTubeのチーフ・ビジネス・オフィサーであるロバート・キンクルは胸を張る。

一方でエイゾフは、「YouTubeの言う99.5%では十分ではない」としている。エイゾフの試算によると、不正にアップされた動画の再生回数は1日あたり4800万回もある。つまり、残り0.5%の違法動画に対する手動での削除依頼には、依然として膨大な労力が必要とされる、ということである。

膨大なコンテンツ管理を民間企業に委託するアーティストもいる。クイーンは、音楽配信サービスを提供するBelieve Digital社に依頼し、40名体制で不正動画の削除依頼や課金手続きにあたっている。同社CEOのデニス・レイドゲイラリーは「我々は、不適切だと思うものはブロックし、有用なものには課金する。これは、以前は存在しなかった重要な収入源だ」と言う。中にはスティーヴ・ミラーのように「YouTubeは私のビジネスを崩壊させ、世界中で盗人を育てながら稼いでいる」と、あきらめてしまっているアーティストもいる。YouTube上には、ミラーの『グレイテストヒッツ1974〜1978(原題:Greatest Hits 1974-1978)』のフルアルバムなどが不正にアップされている。

エイゾフは、「YouTubeがやろうと思えばコンテンツを100%管理することは可能なはずだ」と指摘する。事実、ポルノ動画をブロックし、オリジナル・コンテンツの視聴に対し月額10ドルの課金を行うことができている。「テイラー・スウィフトの件にしても、無料公開できるものと有料コンテンツとをアーティスト側が選択可能にすべきだった」とエイゾフは述べている。彼はYouTubeと親会社のGoogleに対し、DMCA法改正を求める米議会へのロビー活動に一緒に参加することを提案している。しかしこれまでの所、両社はこの提案に乗る気はないようだ。フォーチュン誌には、『アーヴィング・エイゾフへ:YouTubeが変わる必要はありません。あなたが変わるべきです』という見出しの記事が掲載されている。

電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)の知的財産担当役員で、デジタル著作権管理を推進するコリーヌ・マクシェリーは次のようにコメントしている。「エイゾフさんは、近年状況が改善されてきているということを忘れているようです。これまで著作権所有者は、自分たちが享受したものに満足していないと思います。1997年であれば、アップロードされた音楽を削除させるためには裁判を起こす必要がありました」。

これに対してエイゾフも負けていない。「我々が生きているこの時代はGoogleが牛耳っている、と思っている人もいるようだ。彼らの政府への影響力は大きいのかもしれないが、ハードルが高そうだからといって闘いから逃げる訳にはいかない」。

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