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介護離職は年間10万人、介護者の残業を免除する制度はうまく機能するか?

 政府が介護離職ゼロに向け具体策の検討を始めています。介護者の残業免除を義務化するというものです。単体では評価できる施策ですが、本当に効果はあるのでしょうか。またこれに伴う弊害はないのでしょうか。

 厚生労働省は、家族の介護をする社員の残業を免除する制度を企業に義務付ける方針を固めました。就業規則に残業免除を明記するよう企業側に求め、指導に従わない場合には企業名を公表します。安倍政権は介護離職ゼロ政策を掲げていますが、今回の施策はこの方針に沿ったものと考えてよいでしょう。

 現在、家族の介護のために仕事を辞めるいわゆる介護離職は年間10万人に達するといわれています。また離職にまでは至らなくても、会社での理解が得られず介護と仕事で板挟みになるケースは無数に存在するでしょう。今回の措置は、残業免除について政府が方針を明確に示すことで、介護に対する職場での理解を促す狙いがあると考えられます。

 ただ、こうした制度が導入されても、介護を理由に残業を返上することは難しいとの意見もあります。日本企業の生産性は極めて低く、長時間残業をしないと業務がこなせないというのが現実だからです。特に国内のサービス産業は売上高が横ばいであるにもかかわらず従業員の数は増える一方です。つまり同じ売上高の仕事をより多い人数でこなしているのですが、こうした企業が売上高をさらに伸ばそうとすると、長時間仕事をする以外に選択肢がなくなってしまいます。そのような企業では、残業を返上した社員に対して様々な圧力がかかる可能性があります。

 残業免除は、とりあえずの即効性がある施策としては意味があるかもしれませんが、本質的には日本企業の生産性を向上させない限り問題は解決しないのです。

 また、介護制度そのものに対する矛盾を指摘する声もあります。日本の介護制度は、基本的に在宅介護が原則となっています。どうしても在宅での介護が難しいという状態になった時に施設に入るという考え方です。在宅でもホームヘルパーなどが派遣されますから、家族がつきっきりで介護しなければならないというわけではありません。しかし、施設によっては休日にはヘルパーが派遣されないケースがありますし、介護保険の利用金額上限などの問題があり、すべてをヘルパーに頼ることはできないのが現状です。

 中間層の場合、最終的な段階まで面倒を見てくれる施設は特別養護老人ホーム(特養)しかありませんが、特養の数は極めて少なく、入所には厳しい条件が設定されています。最新の基準では、要介護3以上の認定が必要となりますが、要介護3ということになると、立ち上がることや歩くことなど、身の回りのことができない状態であり、排泄、食事、入浴など、すべてにおいて介助が必要なレベルです。この状態になると、ヘルパーなどの支援があっても片手間ではとても対応できません。

 そうなってくると、家族のうちの誰かが仕事をやめないと、現実問題として介護には対応できないケースがどうしても出てきてしまいます。つまり介護離職という問題は、日本の介護制度そのものが作り出しているとも言えるのです。

 もし要介護者全員が施設でのケアを受けられるようになれば、介護離職や残業免除の問題もすべて解決するでしょう。しかし、施設でのケアに切り替えると、年間9兆円ともいわれる介護費用が倍増するという試算もあり、とても現在の財政状況では対応できません。どれかを取るとどれかが犠牲になるという状態からは逃れられないようです。

(The Capital Tribune Japan)

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