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オンライン小売業者を苦しめる送料無料サービス

1ドル69セントのピーチヨーグルト1個は、緩衝材と保冷剤にくるまれた状態で使い捨て保冷バッグに入って送られてきた
1ドル69セントのピーチヨーグルト1個は、緩衝材と保冷剤にくるまれた状態で使い捨て保冷バッグに入って送られてきた
Photo: F. Martin Ramin/The Wall Street Journal


By BRIAN BASKIN

 オンラインで買い物をしたことがある人なら、次のような経験をしたことがあるのではないか。送料が無料になるよう、注文総額を増やすために靴下や電池といった常備品を買い物かごに追加する。数日後、追加した小さな商品が大量の緩衝材と共に大きな箱で別送されてくる。

 筆者は先日、ネット通販のジェット・ドット・コムで買い物した際にこれを経験をした。ジェットは米ウォルマート・ストアーズが先に買収を発表した新興企業だ

 まず筆者が買い物かごに入れたのは、赤ちゃん用のお尻拭き、靴下、その他の必需品だった。総額は約34ドルで、送料が無料になる35ドルには少しだけ足りなかった。そこで迷った挙げ句、1ドル69セントのピーチヨーグルト1個を追加することにした。

 大きな箱に丁寧に梱包されたお尻拭きと靴下などは翌日に届いた。次の日、玄関口に同じぐらいの重さの2つ目の箱を見つけた。その中身はと言えば、緩衝材と保冷剤にくるまれた状態で使い捨て保冷バッグに入った容量150グラムのヨーグルト1つだった。

 翌朝、筆者は1歳の娘がヨーグルトを食べるのを見ながら、ジェットがその注文で利益を上げることは可能なのだろうかと疑問に思った。

 その答えは、やはり不可能だった。

 ジェットのリザ・ランズマン最高顧客責任者(CCO)は、そのヨーグルトの送料について「1ドル69セント以上はかかっているに違いない」と述べた。

危険な賭け

 小売業者にとって送料無料サービスは危険な賭けである。顧客はそれに期待している。コンサルティング会社アリックスパートナーズが6月に実施した調査によると、送料の有無がオンラインでの商品購入の決断に「大きな影響を及ぼす」と回答した人は75%に上った。

 米業界誌インターネット・リテイラーによると、昨年末時点で送料が無料になる注文の総額は平均50ドルだったという。

 当然ながら、商品を梱包して顧客に届けるには費用が発生する。アナリストらは、より少数の小さな箱で発送することでコストを下げる一方、より大量の収益性の高い注文を受けられるかどうかがネット通販業界の勝敗を分けると指摘する。

 メーシーズやターゲットといった全米展開している小売り大手は最近、オンラインでの売上高が増加しているにもかかわらず、収益が低下してきている。ウォルマートが33億ドルで買収することに合意したジェットは赤字経営だ。「プライム」会員プログラムで送料無料ブームを引き起こした米アマゾン・ドット・コムでさえ、商品の保管や梱包、配送などからなるフルフィルメントコストの上昇ペースは売上高の増加ペースを上回っている。

 送料無料サービスは持続不可能だと主張する小売業者もいる。

 ディスカウント小売りビッグ・ロッツのデービッド・キャンピシ最高経営責任者(CEO)は6月に開かれた業界会議で、無制限の送料無料サービスの提供について「小売業者は自分たちの首を絞めている」と主張。「急に目を覚ましてこんなことはできないと言えるのか? われわれは送料を請求し始めざるを得なくなるだろう」と述べた。

最も高いのは空気

 ある商品の発送で利益か出るかどうは結局、梱包の仕方で決まってくる場合が多い。宅配業者はたいていの場合、中身がほぼ空であっても箱の大きさで料金を設定している。例外的に小規模な地域宅配業者に依存している場合もあるが、米国のオンライン小売業者は通常、ほとんどの発送にフェデックス、UPS、米郵政公社を使っている。

 一般的に大手小売業者は、異なる大きさの商品を梱包するために少なくとも5種類の箱を用意しているという。コンサルティング会社サプライ・チェーン・オプティマイザーズの上級副社長、ピーター・スターリング氏は一部の小売業者について、20種類の箱を用意することで利益を得ている可能性があると指摘する。

 「発送できるもので最も高く付くのは空気だ」とスターリング氏は言う。それ以上に無駄なのは、小さな商品が箱の中で移動しないように緩衝材で空間を埋めることだと同氏は付け加えた。

 サンフランシスコに拠点を置き、衣類やアクセサリーのレンタルサービスを会員に提供しているル・トートでは、セーターやジャケットといったかさばる洋服をいかに小さく折りたたむかで配送センターの従業員を評価している。事業部長のビジェイ・カーレ氏は、考えられる最小の箱で、しわにならないように商品を発送することが同社の目標だと話す。

 送料が高くなるカリフォルニア州北部以外の地域でも会員が増加している同社だが、カーレ氏によると、そうした取り組みやその他の工夫で、発送コストを5~7%節約してきたという。

ジェットで買ったヨーグルトを食べる筆者の娘
ジェットで買ったヨーグルトを食べる筆者の娘
Photo: Brian Baskin/The Wall Street Journal


 筆者の発注したヨーグルトが大きな箱で届いたのは、ジェットが冷蔵倉庫で取り扱っているのは2種類の箱しかないからだという。

 同社のランズマンCOOは、今回の筆者の注文のようなケースはごくまれだと語る。ただ、ゼロではない。「毎週決まってバナナを一房注文する女性もいる」とのことだ。

 小売業者が梱包の問題を解決する1つの方法は、小口注文の数を減らすべく、顧客にまとめ買いを促すことだ。ジェットの場合、多くの顧客は送料が無料になる35ドル以上を一度に注文し、そうした注文の「圧倒的多数」は採算が取れているという。

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