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自民党の一強状態は決して最良の状態ではない

 多くの国民が選挙の際、自民党に投票するのは、「自民党に何かを期待している」という意味での積極的投票ではない。「自民党以外に投票すべき政党がないから、自民党に投票する」という消極的投票が多い。その証拠に、東京都知事選挙では自民党が擁立した候補が敗れた。何が何でも自民党を支持したいという層はそれほど厚くない。

 だが、政党支持率をみても自民党が一強状態が続いている。いったい、これはどういうことなのか。

 簡単に言えば、野党がだらしない、ということに尽きるのだが、この自民党の一強状態が決して日本にとって最善、最良の状態ではないと警鐘を鳴らす好著が出版された。池田信夫氏の『「強すぎる自民党」の病理』(PHP新書)だ。

 池田氏の主張は明快だ。

 現在の日本政治の状況を「老人の老人による老人のための政治」であると喝破する。私自身も老人による若者虐めに等しい現状を嘆く一人なのだが、こうした事実を指摘すると、逆に老人虐待をするのか、といういわれなき批判を受ける。

 だが、現実は若者にとって過酷だ。詳細は本書に譲るが、政府サービスや社会保障と負担の差ひとつとってみても、若者は絶望的な気分に陥るはずだ。今の60歳以上では受益が負担より生涯で5000万円多いのに対して、今年生まれる赤ちゃんは負担が受益より5000万円多い。要するに現在の社会保障制度を維持し続ければ、今の60歳以上の老人に対して、今年生まれる赤ちゃんの生涯所得は1億円も少なくなるのだ。

 生まれた年代が違うだけで、一億円も格差が生まれるのは、異常な事態ではないのだろうか。

 しかし、この現状を正そうとする現実的な政治勢力は存在しない。

 その原因の一つは自民党が「日本型ポピュリズム」を具現化した政党に他ならないからだ。「バラマキ」を前提とした政治で、官僚を交えたボトムアップで合意形成を図り、責任の所在がはっきりしないシステムだ。増税のようなリスクを伴う決断を先送りにし、全会一致をよしとするシステムだ。

 こうした日本型システムの覇者が田中角栄だった。彼は、左派の目的であった労働者を豊かにするという目的を自らの目的とし、積極果敢に目的を実現し、さらに、福祉社会政策まで導入してしまった。だが、高度経済成長の時期にはうまくいった田中型システムも時間の経過とともに、天下りの温床、バラマキ政策となってしまった。

 こうした政策を本来であれば、野党が正さねばならなかったはずだ。しかし、、社会党は自民党と地下の部分で繋がっており、表面的に突拍子もない安全保障政策を掲げて自己満足するだけで、具体的には何もしなかった。

 小沢一郎の挑戦、小泉純一郎の官邸主導。民主党の政権交代・・・。それでも、日本の政治は変わったとはいえない。むしろ混迷を極めたの観がある。

 本書の中で最も面白かったのは、筆者が小沢一郎へとインタビューした際の逸話だ。
著者は問う。
「今でもグランドキャニオンの柵のような考え方は同じか?」
「まったく同じだ」
さらに小沢は言った。
「55年体制では自民党と社会党は地下茎でつながっていて、国会が止まったりするのは芝居。すべて実質的に全会一致だった。そうでなければ自社の連立政権なんかできるはずがない」
「そこまでわかっていたのなら、どうして自社連立に裏をかかれたのか?」
「あそこまで節操がないとは思わなかった。私も若かった」
筆者はこの誤算が「決定的な失敗だった」というが、同感だ。
また、小沢はこのとき次のように語ったという。
「オヤジ(田中角栄)も金丸さんも『足して二で割る』名人だったが、今はそれではやっていけない」
「昔は利益の分配をするのが政治の役割だったが、今は負担の分配をしなければならない。平等に引き算したら全員が文句を収拾がつかなくなるので優先順位をつけて切るしかない」
 見識ある主張だと言ってよい。
 だが、自社の連立を「あそこまで節操がない」と非難していた小沢だが、周知のように、今や共産党とまで手を握るほどまでの零落ぶりだ。

筆者の提言が興味深い。
「いっそ二〇年前の原点に戻って、徹底的な財政再建の鬼として霞が関を敵に回して『西南戦争』を挑んだほうがいいのではないか。最後は西郷のように散るとしても」

現在の問題を分析するために戦後史を振り返る本書の試みは面白い。

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