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DIS(ディス)のたのしみ~ひきこもりでもニートでも貧困でもない、「普通」の人々?

■「代弁する」こと

前回の「キムタクとひきこもり」(それでも、ひきこもりはキムタクがきらいか?)はだいぶアクセス数があがったのだが、そうなるとやはり出てきたのが大量のDIS(ディス)コメントだった。

このディスは、「ディスられた」とか云々の表現でほとんど日本語になりつつあるが、英語の否定形のdisであり、たとえばdisrespect(尊敬の反対=無礼)などの頭につけられている表記だ。

そのDISコメントをいくつか読んでいくと、どうも何に怒っているのかわからない。が、僕の「上から目線」とか全体的にひきこねりをバカにしているとかの、僕のこの原稿の感じそのものに怒っているようだ。

それについては謝るしかないが、僕の偉そうな表現やその「クレイジー」ぶり(悪い意味で)はさておき、前回も書いたとおり、キムタクに怒っているのは僕ではなく、長年家にひきこもっている若者当事者自身なのだ。

僕は、ひきこもり支援者という立場上、そうした潜在的に「本当の声」を封印されてしまっている若者たちを「代弁する」ことが仕事のひとつなので、いつもどおり(上から目線でクレイジーに)語ったまでだ。

■ひきこもり男子たちは基本的にモテるキムタクがきらい

アクセスが延びる原稿は凄まじくDISコメントも伸びるので精神衛生に悪いため僕は読まないのであるが、今回は偶然目に入り、そのDISの意味があまり自覚できなかったため(要するに的はずれな批判に感じたため)、わりと落ち込むことなく読むことができた。

だからお礼を兼ねて、時間があればいくつかのDISコメントに「いいね!」していったのだが、その、存在の肯定としての「いいね!」とは別に、DISの意味内容はやはりイマイチわからないため、知り合いの元ひきこもり青年に聞いてみた。

長年の付き合いのその青年が言うには、まずは今回の僕の原稿はだいぶ「強引すぎる」とのことだ。ひきこもりとキムタクって、まったく関係ないじゃないかと彼は言った。

が、前回も書いたとおり、これまで僕が出会ってきた筋金入りのひきこもり男子たちは全員キムタクがきらいだった。その理由をまとめると前回の通り(モテるヤンキー嫌悪とルサンチマン)なのだが、まとめる以前に、とにかくキムタクのきむらと言っただけで、ヒッキー若者は眉をひそめる。

もちろん、目の前にいる元ひきこもり青年の彼も昔そんな表情をしたじゃないかと指摘したところ、「そうだったっけ、ゴメン」との返事。

その素直さはありがたいが、このように、当事者は当事者でなくなると、その頃のリアルな感覚を本当に忘れてしまう。だからそうなってしまった人は、当事者ではなく「ひきこもり経験者」だとこれまで何回も指摘してきた(「当事者」は語れない~どう「代弁」し、どう「代表」するのか)。

■一般の奴らにはわからない

もうひとつ、そのひきこもり経験若者が言うには、「しょせん、ひきこもりの若者の本当の気持ちなど、一般の奴らにはわからない」ということだった。

だから、そうした「ひきこもりの本当の気持ち」を伝えようとする僕(田中)がバカだ、ということなのだ。

それはそうかもしれない。僕はひきこもりを経験した「代表者」ではなく、結局はひきこもらないまま大学院まで修了してNPOの代表も10年も務めた「一般側」の人間である。僕の(ポストコロニアル的)思想が「当事者」や「経験者/代表者」の問題に接近させているが、根本的には当事者の気持ちはわかっていない。

それはそうなのであるが、これ(代弁行為は偽善)を徹底すると、経験者しか当事者の思いを代弁できなくなり、ムーブメント的には弱くなってしまう。

ここに、ポストコロニアルだろうがポストモダン哲学だろうが背景の思想はなんであれ、当事者を「代弁」してくれる存在を置かないと、当事者の潜在的な声は限りなく潜在的な存在としてそのままにされる。

だからこそ僕のような、表現形式はまたまだ未熟ではあるが、当事者の潜在的な声を「代弁」する者が必要になる。

■DISする人たちとは誰か

目の前のひきこもり経験者の若者は、そもそも「ディスる普通の人々(若者が多いだろう)」とは関わらないようにしているそうだ。それは長年の経験から、関わると経験者の自分自身が疲れるから、あるいは大きく傷つくからだと思う。

また、虐待された経験をもつ貧困若者たちも、こうした議論には関わらないことが多いようだ。その理由も同じで、そこに関わってしまうと、傷つくことがあるからだと推察している。

議論への参戦が、トラウマの再発動(PTSDの延長)につながり、大きく言って「いのち」の危険にもつながる(自傷の意)。だから、経験者たちは、DISる人たちとは関わらない。

では、DISる人々、おそらく普通の若者たちは、どんな人々なんだろう。ひきこもりのメンタリティに共感することなくその手の議論に(匿名で)参戦してネットを「炎上」させていく人々は、僕の推測とは逆に、やはり、ひきこもりなのだろうか。それは経済的に余裕のあるミドルクラスのニートなのだろうか。

どうもそうではない気がする。では、DISが楽しい、DISする人たちとは誰か。

今回は紙幅が足りなかったが、このDIS現象と、現代の「ヘイト」現象はつながると僕は踏んでいる。★



※Yahoo!ニュースからの転載

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