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自殺を考えたマイケル・フェルプス(Michael Phelps)選手の葛藤と克服,そして東京オリンピックの可能性

前回の記事「SMAP解散報道のあり方とオリンピックの放送」は好評だったようである。

今日もオリンピック放送,特に海外トップアスリートに関する日本メディアが報じない情報を紹介したい。

31歳になったマイケル・フェルプス選手は,2016年のリオオリンピックでも偉業をさらに更新し6競技で5つの金メダルと1つの銀メダルを獲得した。

現時点までで生涯通算23個のオリンピック金メダル(生涯通算28個のオリンピックメダル)を獲得している。

余談ではあるが,金メダルの数については,「競泳は出場種目が多いからズルい」などとロシア人の友人が言っていたので,私は嫌味も込めて,「ドーピングなどをすることなく,同じ日や近接した日時に予選と決勝に多数エントリーする中で,各種目の決勝にベストコンディションで金を取るんだからその事実だけで凄いのであって出場種目が多いからメダルが取れるというのは失当」と反論したところ,不服そうであったが,納得していた。

このようにアメリカ嫌いのロシア人も羨むマイケル・フェルプス選手の偉業であるが,日本がメダルを獲得できなかったこともあってか,男子400mメドレーリレー決勝に関してはそれほど報じられていない

また,前回のロンドンオリンピックの際にも「マイケル・フェルプス(Michael Phelps) 選手の偉業」との記事で海外メディアの報道を紹介したが,今回のオリンピックでも既存メディアの報道は,彼がいかに苦悩し,一時は自殺まで考えたものの,その失敗を再度乗り越え,この偉業を成し遂げたかにつき。あまり言及しておらず,深くないものばかりである。

そこで,海外メディアがどういう話を報道しているのか少し紹介しようと思う。

1.自殺まで考えたフェルプスの苦悩と復活

その前にフェルプス選手がいかに過酷なトレーニングをしてきたのかがわかるUnder Armourの動画を紹介したい。非常にレベルの高い美しい映像である。

この動画や彼の活躍だけを見ると,彼は完璧な人物のように見える。

しかし,私はフェルプス選手が怪物のような偉業を達成するような超人である一方で,人間らしさを持っている所が好きである。

トップアスリートとして君臨することのプレッシャーは私には想像を絶するが,そうした人間らしい弱さがあり,法違反なども犯してしまっているものの,その都度反省し乗り越え更なる偉業を更新してきたことはやはり賞賛に値すると思う。

以下の動画は,米国のスポーツニュースチャンネルESPNの「The evolution of Michael Phelps」というものであるが,個々でも触れられているとおり,彼は人生において,3度の大きな過ちを犯している。

[動画はこちらから]

1つ目は2004年に酒気帯び運転で逮捕されたことである。

2つ目は北京オリンピックの6か月後に報じられたマリファナ用水パイプを吸う写真の流出である(刑事としての立件も逮捕歴も本件についてはない点を言及しておく)。

そして3つ目が2014年9月に再び基準値の2倍(メリーランド州は0.08%が基準であるとところ,0.14%だった。ちなみに日本は呼気0.15mgで酒気帯びであり,血中濃度では0.04%程度で酒気帯びとなる)となる酒気帯び運転で逮捕されたことである。

上記3度の過ちは,彼の精神的な不安定さによるものだとされているが,これは9歳の際に両親が離婚し,その後,父親が自分の競泳イベントなどに約束したにもかかわらず表れなかったり,15歳の時に何の前触れもなく新しい奥さんを連れてくるなど自分のことを考えず,むしろ自分を捨てたと感じてきたという親子の感情に起因しているという。

このうち,特に注目すべきはロンドンオリンピックで偉業を達成した後の転落とそこからの反省とリオでの復活であろう。

ロンドン五輪の後,彼は彼自身が成し遂げた偉業の重みから一時的に競泳を離れ,パーティー三昧をし,30パウンドも体重が増え,プールの外での自分の存在価値を見いだせずに"自由"を謳歌し,現役選手としての生活からは遠ざかった結果,2014年9月30日の早朝酒気帯び運転で再び逮捕されるという過ちを犯してしまった。

しかし,彼がやはり凄いのはそこから反省し,自分の弱さを克服し金メダル4つと銀メダル1つを取る偉業により,再びリオ五輪の場で世界を熱狂させた点である。

この2度目の失敗の際,ボブ・ボーマン(Bob Bowman)コーチも,これがマイケル・フェルプスとしての最後であり,マイケル・フェルプスの偉業はここで終わったと感じたと述べている。

この最悪の状況から彼を救ったのは,元アメリカンフットボールのボルティモアのチーム「Ravens」のRay Lewis選手と彼がフェルプス選手に渡した1つの本であったという。

Lewis選手やフェルプス選手の親しい友人はアリゾナ州フェニックスの郊外にある「The Meadows」というリハビリ施設に入ることを強く勧め,45日間,セラピーを受け,その合間にオリンピック選手にしては,2回のストロークで対岸に届いてしまう狭いプールで練習をしながら,内に秘めた弱さに向き合うリハビリをした。

また,Lewis選手が渡した「The Purpose Driven Life」という本が彼を救ったと語っている。

非常に面白いと感じたのは,この本を読んでフェルプス選手がこの地球上に自分が存在する意義(生きる目的)を感じ取ったという点である。

オリンピックで数多くのメダルを取り,世界中から認識され賞賛された選手でも,9歳の時のトラウマや度重なる自分の過ちなどから自分の存在を無意味に感じ,この本で自分の存在意義を再認識したというのだから,その人間らしい弱さを持っている点に驚いた

当時,フェルプス選手は自殺すら考えていたともいわれており,この本が彼を救ったとされている。

ESPNのインタビューでフェルプス選手は次のように述べている。

自分がいない方が世界が良くなると思った。それが最善のことだと思ったんだ。自分の人生を終わらせることが。

("I thought the world would just be better off without me," Phelps admitted. "I figured that was the best thing to do — just end my life.")

我々はトップアスリートになればなるほど精神的に図太く強くなるのではないかと思いがちだが,本当は孤独感や競技以外の場での自分の存在価値などを見いだせなくなったり,自分を追い込んでしまって精神的に逆にもろくなるのかもしれない

この本が契機となり,フェルプス選手は父親のフレッド氏との関係を再構築するに至っている。

ファミリーウィークというものがあるそうで,当初フェルプス選手は,父親に拒絶されることを恐れ,父親を呼ぼうとは思っていなかったそうであるが,この本を読み自分の長年の感情と向き合うために,父親を呼び長年の想いをぶつけたという。

その結果,長年の精神的な弱さの原因となっていた父親との関係を少しずつではあるが再構築でき,子どもが生まれたこともあって精神的にも克服したようです。

生後4か月の息子のブーマー君も今回はリオで観戦していた。

バタフライ100mの結果の直後に見つけた写真であるが,銀メダルは不満なのだろうか。険しい顔をしているのが愛らしい。

引退を表明しているフェルプス選手であるが,4年後,物心がついたブーマー君にフェルプス選手はその雄姿を見せたいと思うことはないのであろうか

2.東京オリンピック出場の可能性

注目すべきは,ライアン・ロクテ選手や母親のデビーさんが以下のとおりNBCの取材に対して述べている

ロクテ選手はNBCの「Today」という番組でフェルプス選手は2020年の東京オリンピックのプールにいるだろうと述べた。彼は4年前にフェルプス選手が引退を示唆した際にも同じ予測をし,それが当たっている

(Lochte guaranteed on NBC's “Today” show that Phelps will be in the pool at the 2020 Games in Tokyo. He made the same prediction four years ago and was correct.)

さらに,フェルプス選手の母親であるデビーさんも東京でのオリンピックの舞台へのカムバックについて,「そうなれば素晴らしいわ」と述べている。

(Even Phelps' mom, Debbie, got in on the act, telling NBC a Tokyo comeback “would be wonderful.”)

人間らしい弱さを克服しながら31歳でこれだけの偉業を成し遂げるのであるから,私はフェルプス選手には人間の限界に挑戦し,35歳でも金メダルを取り続け,本当の「絶対王者」として東京でもその雄姿で日本を沸かせてほしいと思うのは私だけではないだろう。

日本のメディアも折角来年東京でオリンピックを行うのであるから同じようなインタビューなどを繰り返すだけでなく,日本人選手以外の世界のアスリートを紹介したり,日本人選手のフェルプス選手のような人間らしい弱さとそれをどう克服しているのかといった深い報道をしてほしい

なお,以下の動画は,アメリカ五輪競泳チームが公開した車中カラオケである。選手の人間味が伝わってきて面白い。

また,フェルプス選手は全ての試合後にフェイスブック上でLive Streamを行いファンの質問やコメントに答えている。ちなみにPokemon Goはやっていないが選手村ではかなりの数の人がやっており「クレイジー(Crazy)」と述べていた。

このあたりも日本のように管理されすぎない選手の自由さがあるからこそ,アメリカにはフェルプス選手のような水の怪物と称される偉大な選手が生まれるのかもしれない。

ちなみに,フェルプス選手の絵文字もあるようである。

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