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渋滞学の第一人者・西成活裕教授が解明した「渋滞を解決する方法」

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◇休暇分散で渋滞は減らせるが…


土屋:お盆の時に、みんながこの記事を読んで「よし、車間距離をあけよう」と思ったら、何割くらい渋滞は減るんでしょうか。

西成:5月、8月、12月という、日本の大渋滞の時期、これを解消するのはなかなか難しい。というのは、完全にキャパオーバーなんですね。これが最初に言った「どうやっても起きる渋滞」です。道路にも容量があって、だいたい1時間に2000台しか通せないんです。だから2000台以上が集まったら絶対に渋滞します。それが5月8月12月の特定の日に起こるんです。これは、そうならないようにルートや時間を分散させないとダメ。

土屋:そうすると、地方ごとに休日をずらしたほうがいいって話になりますね。

西成:実は民主党政権時代にそれを提案したことがあるんです。ある政府関係者が「渋滞解消の特効薬はないですか。政府としてできることがあればやりたい」と言ってきて。政府だったらできると思って言ったのが「休暇分散」だったんです。

私はドイツに住んでいたのですが、ドイツというのは州ごとに休暇が全部違うんですね、フランスもそうです。カレンダーに赤、黄色、青って色がついていて、赤はこの州が日曜日、黄色はこの州が休みとか。だから国民全部が一斉に動くことがないんです。例えば冬はみんなスキーに行きたい、みんなが一斉に動くと渋滞するけど、分散していれば車の量も減るんです。

でもそれを言ったら、国民から全否定されちゃって。日本人は真面目だから、関東と関西で休暇をずらすとしますよね、そうすると関東の会社が関西の会社と取引してたら、「来週までにお願いします」と言っても「こっちは休暇だから」ってことになる。「それなら取引はナシに…」ともなりかねない。

ドイツはどうしているかというと、「休暇だから」と言うと「しょうがない、じゃあ待つわ」って。それはお互いさまだからなんです。

土屋:そうかそうか。

西成:ドイツは有給休暇の取得率が9割を超えてるんです。日本は5割、半分前後なんです。仕事を休むという文化がまずあって、それから休暇分散をやると国民も納得するんです。「休んでいるなら仕方ない」という国なんです。

土屋:日本人は仕事仕事、ドイツ人はゆとりがあるじゃないですか。どっちが経済効果があるかというと?

西成:一人あたりのGDPはドイツの方が高いです。考えてみたらおかしいですよね。ブラックと言われながら一生懸命働いて休日も仕事のメールしてて。ドイツ人は平気で2週間くらいいなくなりますよ、「彼女とバカンスだ」なんて言って。だから共同研究しているとイライラするわけですよ(笑)。でも「しょうがない、彼女と一緒なら邪魔しちゃいけないか」って。日本だったら、2週間いなかったら帰ってきた頃もう机がないですよね(笑)。この国民性の違い。

土屋:日本人は行列するのが好きなんですかね。並ぶことが苦じゃないというか。他の国より渋滞が嫌いじゃないのでしょうか。

西成:たぶん嫌だとは思うんだけど、仕方ないと思っている。満員電車だって嫌だけど、これに乗らないと会社に行けないし、タクシー代を毎日払うわけにはいかなし、嫌だけど我慢しちゃう。それがずっと続いているんだと思います。

◇電車は1本待てば空いている

土屋:それで言うなら、電車もちょっと待ったほうが…。

西成:そうなんです。「電車は1本待ったほうが空いている」という定理も証明しました。

土屋:それは僕もわかります! 「電車が遅れています」ってホームに人が溜まっている時は、1本見送るだけで混雑具合が全然違います。

西成:混んでる電車と空いてる電車があった時、混んでる電車は人の乗り降りに時間がかかるじゃないですか。そうすると発車が遅れて車間距離があくんです。空いてる電車はすぐに発進できるので車間距離が縮まる。その状態である人が駅に着いたとき、当然だけど車間距離が広いところに遭遇するチャンスの方が、車間距離が短いところよりも高くなりますね。これは厳密に確率論で示せます。

土屋:電車に乗ってると「前の車両と間隔が短いので時間調整します」ってアナウンスが入りますもんね。

西成:そうです、最近は鉄道会社もなるべく間隔が等距離になるように、意図的に駅で電車を止めています。

◇渋滞解消のコツは「スローイン・ファストアウト」

土屋:車間距離を空ける以外に、一人一人ができることはありますか?

西成:車の動きに素早く反応することです。目の前の車が加減速しますよね。それに対して後ろの車がトロトロついていくと渋滞を長くしちゃう。

例えば、渋滞から抜ける時を考えましょう。前の車が走り始めたら、車間距離があいてから加速しはじめる人がいるんですが、これは逆なんです。

渋滞から抜け出る時は、3台ぐらい先をみて連結列車のようになるべく早く走りはじめてください。「スローイン、ファストアウト」と言っているんですが、これが個人でやるべき最も大事なこと。渋滞を見たら車間距離をあけてゆっくり入って、終わったら連結列車のように素早く出る。適切な車間距離と短い反応時間、それが科学的には究極の渋滞解消方法です。

土屋:渋滞にはまると、自分が「くらっているものだ」という意識になるけど、自分が「作っているものだ」と思うようにするというのは大事ですね。

西成:これは国民の常識として伝えてください。これをやるだけで変わりますよ。

土屋:そういう制御って、自動運転でできないんでしょうか?

西成:ファストアウトに関しては、高級車に乗ってる方はご存知だと思いますが、ACCという機能があるんです。車をよく見ていただくと「ACC」というボタンがついているはずです。これは「アダプティブ・クルーズ・コントロール」と言いまして、押すと前の車にロックオンして自動運転してくれる機能です。もちろん車線変更はできませんが、アクセルを離しても前の車がゆっくりになったら減速するになるし、速くなったら加速する。

これがあると人間より速く動いてくれる。人間は認知・判断・行動で1秒くらいかかりますが、機械だと0.5秒以内でできますから。「ACC」を押していただくと、実はかなり渋滞が解消されるんですね。それが自動運転になるともっと究極ですから、渋滞を先頭から削る部分に関してはかなり速くなる。ACCの普及率が今1%くらいなので、「渋滞にはまったらACC」と、もっと宣伝して普及すれば変わると思いますよ。

土屋:最後に。あらゆる渋滞をなくすためには、どういう気持ちが大事なんでしょうか。

西成:結局、思いやり、譲り合いです。みんなで「我先に」と押し寄せるか「どうぞどうぞ」って譲り合っていくか、一度50人くらいで実験してみるといいですよ。譲り合ったほうが早く行けますから。

土屋:ありがとうございました。

プロフィール

■西成活裕(にしなり かつひろ)

1967年、東京都足立区生まれ。数理物理学者。東京大学先端科学技術研究センター教授/工学系研究科航空宇宙工学専攻教授。専門は数理物理学、および渋滞学。著書に渋滞学 (新潮選書)とんでもなく役に立つ数学 (角川ソフィア文庫)など多数。
■土屋礼央

1976年、東京都国分寺市出身。RAG FAIR として2001年にメジャーデビュー。 2011年よりソロプロジェクト「TTRE」をスタート。ニッポン放送「土屋礼央 レオなるど」、TOKYO MX2「F.C. TOKYO魂!」、FM NACK5「キラメキ ミュージック スター キラスタ」などに出演中。ニューアルバム「ブラーリ」が好評発売中。
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土屋礼央 オフィシャルブログ
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◇土屋礼央のじっくり聞くとシリーズ

「お坊さんも困ってる」Amazonお坊さん便の仕掛人が語る″ネットで僧侶″の必要性 - 土屋礼央の「じっくり聞くと」(第1回)
「とにかくやりたいことをやろう」立川流真打・立川志ららが落語家になったワケ - 土屋礼央の「じっくり聞くと」(第2回・前編)
「落語は書いて覚えるな」真打まで18年の修行道 - 土屋礼央の「じっくり聞くと」(第2回・後編)
ゲーム実況で生きていけるの?人気実況者・茸が明かす「稼ぎのカラクリ」- 土屋礼央の「じっくり聞くと」(第3回)
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