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相模原事件受け日本障害者協議会の藤井代表が会見(全文1)事件の概要と見解

 日本障害者協議会の藤井克徳代表が10日午後1時半から、東京の外国特派員協会で記者会見を行った。

 藤井氏は日本の障害者運動をリードしてきた存在で視覚障害がある。7月26日未明に起きた相模原殺傷事件では、知的障害者ら19人が犠牲になった。この事件の容疑者は「障害者を抹殺したい」と語ったと報じられるが、会見で藤井氏は「この事件はけっして特別なケースではない」と警告する模様だ。

【中継録画】日本障害者協議会の藤井克徳代表が会見 相模原事件を受け

事件の概要について

相模原事件受け日本障害者協議会の藤井代表(左)が会見

藤井:Thank you very much. My name is Katsunori Fujii. I cannot speak English. それじゃ、通訳の方、よろしくお願いします。今日のテーマは、相模原市で起こった障害者施設の殺傷事件に思う。そして、副題は私たち、ナイフの刃先は私たちにも。そして、日本社会が放つ警鐘、で話をさせていただきます。

 私は今、説明ありましたようにまったく全盲状態でありますんで、お手元に配った講演用、講演の原稿ですね。これと全部が一致でないことをあらかじめお断りしておきます。それではお話に入ります。日本に在住する誰もがあの日の朝のニュースに自分の耳と目を疑ったと思います。私たちはあらためて、19人の同胞の死を悼み、そして27人の死傷者の1日も早い回復を祈っています。心の傷はやまゆり園の関係者はもちろんですけども、知的障害者や精神障害者を中心に、日本中の全ての障害者に及んでいると思います。

 事件から2週間余がたちました。私の手元にはたくさんの意見や感想が寄せられています。障害当事者の声をまとめますと次の3つの衝撃に集約できます。第1はたくさんの死亡者を伴う、現地からの生々しい報道への衝撃です。元職員とはいえ、自分たちを守ってくれるはずの職員が容疑者であったことが衝撃を増幅させています。

 第2の衝撃は、容疑者が衆議院の議長宛に出した手紙に、障害者は生きてても仕方がない。安楽死をさせたほうがいい。これへの衝撃です。まるでナイフの刃先が自分たちにも向けられてるように感じ、自分らしいという人間の価値そのものにナイフが突き刺さった。そんなことを感じてる人が少なくありませんでした。

 第3の衝撃は、これは精神障害者に走っている衝撃です。容疑者は精神科病院の入院歴があると報じられ、精神障害者の多くが、また精神障害者への偏見や差別が増してくんじゃないかという怖さを持っています。また、措置入院制度の見直しが取り沙汰されていますけども、これもまた、隔離政策がいっそう進んでくんではないか、こういう不安が広がっています。

 まだ事件の全容が分かってはいませんけども、これまでの報道を基にして、現段階での私のこの事件への見解を述べたいと思います。見解に先立って強調しておきたいのは、この事件があまりに残忍で卑劣であるということです。防衛することができない多数の重度障害者を標的とし、そして防備体制の薄い、支援体制の薄い深夜に襲いかかりました。私たちは容疑者の行為を絶対に許すことはできません。

 このことを踏まえて、以下3つの観点から見解を述べます。見解の第1は、これが最も大事なことなんですけども、容疑者の言動から今回の事件は優生学思想と関係しているのではないかということです。優生学思想そのものは19世紀半ば以降、欧米の学者によって提唱されましたけども、私は今回の事件でまず連想したのは、ナチス・ドイツ時代に展開されたT4作戦でした。

通訳:19世紀って(※判別できず)。

藤井:19世紀ね。1800年代半ば以降。

通訳:はい。

この事件に関する3つの見解

藤井:第2次世界大戦の開戦日から1941年の8月まで繰り広げられた、ヒトラーの命令によるT4作戦は価値なき生命の抹殺藤井:第2次世界大戦の開戦日から1941年の8月まで繰り広げられた、ヒトラーの命令によるT4作戦は価値なき生命の抹殺の容認作戦とも言われ、ドイツ国内で20万人以上の障害者が虐殺されました。犠牲者の多くは知的障害者と精神障害者でした。ここでの価値とは働く能力でした。T4作戦以前には遺伝病子孫予防法に基づいて、約40万人もの障害者と病気のもとが断種を強行されました。T4作戦のあとにはそこで培われた殺害方法や装置が、あのユダヤ人大虐殺に引き継がれました。ドイツでは2010年の11月、この段階でドイツ精神医学精神療法神経学会ですね。DGPPN。この総括を契機にして、ドイツでこのT4問題について向き合いつつあります。

 私は昨年来、ドイツに三たび、3回、足を運び、人権や障害という視点からこのT4問題について光を当て続けてきています。光を当ててる矢先にこの、今回の事件が起きました。問題は容疑者がなぜこうした考え方に至ったのかであります。繰り返してはいけないT4作戦でしたが、こうした形で日本で表面化したことは実に驚きであり、戦慄であります。まだまだ闇の部分の多い今度の事件ですが、ぜひ真相究明を全面的に進める必要があろうかと思います。

 見解の2つ目は市民の常識、いわゆる普通の感覚でこの事件を捉えてみたいと思います。普通の感覚から事件の舞台となった施設の実態、そして事件後の対処方法を見るといくつも違和感があります。1つは舞台となった場が、入所施設という特殊な場であったことです。集団でかつ長期にわたる生活形態は、障害のない青年層、あるいは壮年層にはあり得ないと思います。大量の、今回の殺人が大規模な生活形態と関係があったかどうか。これも検証の対象です。問われるのはここを利用している家族ではありません。施設から地域へ、このことを加速できないでいる障害者政策、あるいは行政にあろうかと思います。ちなみに厚労省の発表によりますと最新データで、日本には知的障害者が74万1000人、このうち施設に入ってる者が11万9000人となっています。

 見解の3つ目は昨今の日本社会の特徴、そして昨今の障害者施策との関係についてです。

 すいません、見解の2つ目のうち、ごめんなさい、まだ続けてます。違和感があった、普通の感覚と見て違和感がある2つ目は、死亡者、死んだ方の氏名が伏せられてることです。この国では事故やあるいは事件で死亡した場合には、氏名を公表するのが常であります。故人の氏名や故人の情報、これによって手の合わせ方が変わると思います。今のままでは、グループの死、顔のない死、これでは1人1人を悼むことはできにくいと思います。

 3つ目の違和感は、難を逃れた障害を持った人たちの、その後の暮らし方であります。報道によりますと、約90人がやまゆり園の体育館で生活をしているといわれています。一般的に考えて凄惨、かつ自分たちの仲間が死んだ現場で、同じ敷地内に2週間以上も生活というのはありうるでしょうか。

 見解の3つ目は今の日本社会の特徴、そして今の障害者政策との関係についてです。むろん事件とこれらを単純に結び付けることはできません。しかし日本の社会で起こったことは間違いのない事件であり、舞台となった日本社会の現状を触れないわけにはいきません。現代の社会を端的に言うと市場万能主義、あるいは競争原理が幅を利かせると言っていいと思います。こうした風潮が今回の事件に関係がいささかでもあるのではなかろうかという懸念を持たざるを得ません。

 市場原理をベースとする政策は規制緩和、あるいは自己責任論という形で障害分野にも影を落としています。こうした流れと関係しながら福祉労働者、この支援者ですね、の労働条件は極めて劣悪に抑えられています。こうした中で障害者を支える現場で何が起こっているのかですが、1つには専門性の劣化が進んでいます。また公募をしても職員が集まらないという慢性的な職員不足や、あるいは正規職員がいないことからくる余裕のなさによって職場の人間関係が希薄になっています。

※全文2へ続く

今回の事件を契機にして私たちは何をなすべきか

 もう少し時間をいただきまして、それではこれから今回の事件を契機にして私たちは何をなすべきか、これについて簡単にコメントをします。直ちに行うことと、そして本質的な課題とを区分けして対処すべきです。直ちに行うことの基本は、容疑者の直接的な動機を中心に真相を解明することでしょう。また、これに加えて事件の発生、あるいは拡大。これについて施設の、あるいは法人の不備がなかったか。また、政策上、行政上の盲点がなかったか。そのほか想定されるあらゆる角度から、冷静で厳正な検証を行うわけです。

 並行して本質的な課題に迫るべきです。その点で気掛かりなのは事件後の日本政府の対応です。例えば政府は措置入院制度を見直す旨を報道してますけども、拙速な対応はむしろ新しい混乱を招くのではないかと思います。いわゆる社会防衛的な政策だけでは決してあってはいけないと、こう思います。この半世紀を振り返ってみても、日本の精神障害者の政策は絶えず大きな事件とセットで動いてきました。事件とあるべき方向を区分けをして論じる、そういう政策手法を採ってほしいと思います。

 同じく厚労省は、障害者施設の防犯策の強化を強調しています。これも釈然としません。大事なことは、もちろん防犯策は大事ではありますけども、もっと本質的な改善策と併せて提言するときにその趣旨が生きてくると思います。防犯策のみの強化は地域との隔絶の新たなきっかけになりかねません。

 本質的なこれからの政策のポイントを2点、簡単に述べます。障害者政策に関しては、社会防衛的な視点、あるいは集中管理的な視点、これと決別をして、言い換えれば地域で暮らすための質と量の政策を飛躍的に拡充することです。施設から地域へ、医療中心から生活中心へ、もはやスローガンであってはなりません。政治の表舞台で論じ、ゴールを明確に設定すべきです。

 もう1つの本質は社会の在り方であり、強者の論理、これとの決別です。かつて国連は、一部の構成員を閉め出す社会は弱く、もろいと明言し、また、障害者権利条約の第17条では、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有すると明記されています。こうした視点に沿って社会の標準値を修復、修正すべきかと思います。

 19人の命は戻ってはきません。しかし、私たちにできることはあるはずです。今度の不幸な事件をインクルーシブな社会、分け隔てのない社会をつくるための新しいきっかけにすべきです。このことを市民社会全体として追求し、また私たち当事者、あるいは障害者団体も全力を挙げていくことを決意して、私のお話をこれで終わります。
 Thank you so much.

神保:(英語)。日本語で聞いていただいても結構です。どなたかいますか。

女性:あちらで手を上げられてる方が。

 

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