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【モノマネから開拓者、中国IT】

ライドシェアの米Uberが8月1日に中国市場から撤退を決めました。滴滴(Didi Chuxing) というライバル会社に敗北し事業を同社に売却。Uberも滴滴も利用したことないので興味津々(^_^)

Uberと滴滴、Twitter と微博 (Weibo)、Google と百度(Baidu)、Facebook と人人網(Renren)いった具合に中国の新サービスってマネッコでしょ、と思っていたら、そうバカにしたものではないと今週号の The Economist。

(すべてThe Economist)

表紙は空で方々に拡散していくドラゴンで、Trailblazers, China’s world-class tech giants (and why Uber lost)(開拓者、中国の世界的なIT企業とUber敗北の理由)とあります。

巻頭のChina’s tech trailblazers(中国のIT先駆者)はざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。 WeChatがuniverse(経済圏)を作り上げ、中国で生まれたアイディアがシリコンバレーで活用されていると伝えています。ちょっとびっくり(≧∇≦)

Googleは退散。Facebookは遮断。Amazonは苦戦中。中国のIT市場が別世界だということを示す事例は枚挙に暇がないが、とどめを刺すかのように、今月1日、ライドシェアリングのUberが中国事業を中国のライバルの滴滴(Didi)に売却することを決めた。Uberのチャイナ・ドリームは、先駆者たち同様に死んでしまったのである。

教訓は明快だ。中国は、遠く孤立した一種のガラパゴスで、そこでは地場企業のみが繁栄する。中国企業は、政府による規制やGreat Firewall (中国から外部へのインターネットのアクセス制限の俗称)によって外部競争にさらされない。

保護されるため、イノベーションは必要なく、西側のビジネスモデルをコピーすれば良いのだ。要は、中国は閉ざされた市場で、中国企業は甘やかされ、技術はモノマネだということだ。

Uberの退散も一見、このパターンに沿っている。7月末に政府が新たに採用した補助金をめぐる規制の結果、中国のドライバーにインセンティブとして年間10億ドル(約1000億円)を支払っていたUberが屈服した形だ。しかし、状況をよく見てみると滴滴にとっても中国のIT企業全体にとってももう少し前向きな姿が見えてくる。

中国市場は孤立化しているという事例では、外資はたいてい参入を阻止されているか規制に縛られている。中国政府は一部では競争を制限もしている。このため、西側企業のできそこないの中国クローン(subpar clones of Western firms)が跋扈している。 検索のBaiduしかり、Facebookを模倣したRenrenしかり。

とは言え、批評家が言うほど、中国市場が閉ざされているわけではない。世界最大のメッセージサービスのWhat's AppはFacebookの傘下にあるが、中国で自由に使える。実際問題、中国のWeChatに負けているが。

AppleのiPhoneにとって中国は最大市場である。そして、Uberは、ライドシェアの世界最大市場の中国でシェアを伸ばす努力をしたが、事業譲渡する代わりに滴滴の株式の17.7%を保有することになったのは残念賞としては悪くない(not a bad consolation prize)。

中国側も鎖国しているわけではない。SnapchatやLyftといったアメリカのスタートアップに投資をしているし、フィンランドのSupercellやイスラエルのPlaytikaといったスマホのゲーム会社を買収してきた。



中国市場で存在感を示せば仕返しもあるが、勝利できれば別である。Uberは中国市場でのシェアを10%以上にすることに苦しんだが、滴滴は地場のカルチャーをよく理解し、ソーシャルメディアとうまく連携して、事業開始当初からタクシーの運転手をアプリに組み込んだ。

Great Firewall(インターネットアクセスの制限)があるにしても、WeChatのような機能を提供している企業は中国以外では見つからない。月間の利用者は7億人を超え、メッセージの送受信、音声電話、検索、さらに支払いを一括してできる。駐車代の支払いから病院の予約、さらに出前やコーヒー1杯の支払いまで、何でもできる。

WeChatはアプリというよりは、スマホのオペレーティングシステムと言っても良い。中国のモバイル利用者がオンラインで過ごす時間の内、 3分の1以上がWeChatに使われている。HSBCは、WeChatを800億ドル(約8兆円)の価値があると評価している。 中国の利用者にとって、西側のアプリは絶望的なほど古いのだ(To Chinese users, Western apps look hopelessly backward)。

中国のIT企業はしょせん西側の模倣に過ぎず、自らイノベーションなんてできないと見下したような指摘に対して、 WeChatこそ反論の材料である。しかし、ほかにもある。

Alibabaは、第三者を介して支払う仕組みを巧みに作り上げ買い手と売り手の信頼を得ることで、中国でインターネットショッピングを普及させた。そして今、膨大な顧客データベースを活用して、ローンに必要な信用度の点数化やデジタルマーケティング、ビザ申請者や出会い系サイトの利用者の審査も行っている。

滴滴のアプリは、バスのオンデマンドサービスや新車によるテストドライブをリクエストするなどの新手の機能までついている。中国版Twitter のSina Weiboは、Twitter にない支払い機能を持ち合わせている。中国企業は、支払いやゲームによる収入が多く、西側の企業に比べて広告への依存度が低い。

その結果、中国と西側の新しいアイディアの行き来は双方向である。FacebookがMessangerのアプリで支払いや電子商取引を囲い込もうというのはWeChatの着想だったし、Snapchatがメッセージアプリからメディアポータルまで始めたのも同様だ。

また、Google, Facebook, Microsoftがそろいもそろって突然、チャットボット(消費者とメッセージをやりとりするソフトウェア)に熱を入れているのも WeChatが発端である。

今や西側の消費者は、中国のサクセスストーリーに基づいてスマホの新たな体験ができるのだ。スマホを使った将来のビジネスのヒントを得ようとするならば、シリコンバレーだけでなく中国に足を運ぶ必要があろう。

政策当局者も中国の事例を研究するべきだ。デジタル分野で勝者総取り(winner-takes-all digital markets)のメリットとデメリットを見る上で、中国ほどふさわしいところはない。

WeChatを見れば分かるように1つの独占的なアプリが登場し、そこに支払い機能もつくと、利用者にとってはとてつもなく便利である。しかし、独占は危険もはらむ。Uberの撤退によって滴滴がライドシェア市場の90%を占め、ライバルもいないことから、利用者は値上げを、ドライバーは賃下げを今後迫られるだろう。

デジタル時代では、便利さと独占をどうバランスさせるのかとい課題が規制当局に突きつけられている(How to strike the balance between convenience and dominance is the great question for regulators in the digital age)。



教訓は分かっている。RenrenやBaiduに比べて、滴滴やWeChatは強烈な競争によって力をつけた。中国のIT開拓者たちが真のグローバルチャンピオンを狙うのであれば、競争は受け入れるべきである。世界よ、目を離すな(Watch closely, world)。

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