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【オバマのフェミニスト宣言】

周囲の女性たちの間で話題になっている米オバマ大統領のエッセイがあります。This is What a Feminist Looks Like(フェミニストはこんな顔)。タイトルの下に自らの若いころの写真を掲載。要はフェミニスト宣言です。


(1980年、Glamour)

東京の友人が「日本の『女性活躍推進』は労働力と経済の課題としてとらえているのに対し、オバマさんは人権と理想の社会の課題ととらえている」と総括。まったく同感です。

ワシントンの友人が「同じ女性誌でも、Vogueではなく20代が対象のGlamourに寄稿したのが興味深い。若い女性へのエール」とうれしそうに語っていました。

文面にyour generation refuses to be bound by old ways of thinking(皆さんの世代は古くさい考えに縛られることを拒否している)」とあるので、確かに若い女性を意識したのだと思います。

すごく温かく、希望の持てる良い文章なので、友人の呼びかけに応じて、約1500語の英語のエッセイを翻訳してみました。

原文はこちら。オバマ大統領の55歳のお誕生日に公開されました。

http://www.glamour.com/story/glamour-exclusive-president-barack-obama-says-this-is-what-a-feminist-looks-like

大統領というのは、いろいろとたいへんだ。でも、良いことだってある。全米の素晴らしい人に会えること。国家の行く末に大きな影響力を持てること。エアフォースワンに乗れること。

大統領になって予期しなかった最もありがたいことは、職住接近(living above the store)だろう。

それまでの人生を振り返れば、長い通勤時間に忙殺された。イリノイ州の州議会議員の頃は、自宅のあるシカゴから州都スプリングフィールドへ、上院議員になってからは首都ワシントンへ。理想としている夫、父親になるためにいっそうの努力が必要となった。

しかし、この7年半、通勤時間はわずか45秒に短縮されたのだ。リビングルームから執務室 (Oval Office)まで歩く時間だ。その結果、私は2人の娘が知的で、おもしろく、思いやりがあり素晴らしい若き女性に育つのを間近で見ることができた。

巣立ちに向けて準備する様子を見るのはつらい時だってある。しかし、娘たちの将来に希望を見出すことができる。それは今、女性であることが特別に感じられる時代だからだ。この100年、 50年、あるいは8年の進展の結果、祖母の時代の女性と比べて娘たちの人生は格段に良くなった。

大統領としてのみならず、フェミニストの立場からそう言いたい

私の半生の間で女性の雇用をめぐる環境は大きく変わった。仕事の内容が限られ、しかも安月給だった時代から、労働市場のおよそ半分を占め、スポーツ、宇宙、ハリウッド、最高裁判所などあらゆる分野でリーダーになるところまで来た。

私自身、女性が身体について、教育について、キャリアについて、財産について自分の意思で選択する様子を見てきた。クレジットカードひとつ作るのに夫が必要な時代は遠い昔だ。事実、既婚・未婚を問わず、かつてないほど女性は金銭的に独立をしている。

なので、ここまでの道のりを過小評価してはならない。そんなことをしたら、正義のために闘ってきた人たちに失礼だと思う。

一方で、アメリカ、さらに外国での女性、そして女の子たちの将来を良くするためにやるべきことはまだまだ残っていることも事実だ。同じ仕事であれば男女の間の給与の差をなくし、こどもを産むための権利を守るなど政策でできることは引き続きやる。それでも、法律とは無関係な変革(changes)も必要だ。

実際問題、最も大事な変革は最も難しいかもれない。それは、自らを変えることである。

このことは、6月に開催した第 1回目のWhite House Summitで時間をとってお話しした。ここまで来たことは間違いないが、男性や女性はかくあるべきだというステレオタイプに今なお縛られている

私にとってのヒロインの1人は、下院議員だったShirley Chisholmである。アフリカ系アメリカ人として初めて主要政党の大統領候補を目指した女性だ。かつて彼女はこう言った。「女性を感情的にも、性的にも、心理的にも、ステレオタイプに押し込めることは、お医者さんが『女の子ですよ』と言った瞬間から始まる」。

こうしたステレオタイプ的な考え方は、女の子たちが幼い頃から自らをどう見るかに影響することが分かっている。女の子らしいという、ある一定の枠内で見た目や行動を意識しないと、評価が下がるのではないかと感じる。男女のストレオタイプはあらゆる人間に影響するのだ。

私にとって人生を左右する重要な人物は常に女性であった。母親は、発展途上国で女性をエンパワーすることを仕事にしてきたシングル・マザーだった。私を育ててくれた祖母は、銀行でキャリアを積んだが、ガラスの天井にぶつかるのを見た。

妻のミシェルが仕事と家庭を両立させる姿を見てきた。ほかのワーキング・マザー同様に彼女も、仕事と家庭という二律背反のトレードオフについて、世間からどう見られるか心を痛めた。その一方で、夫である私の選択についてはとやかく言われることはない。

娘たちが幼かった頃、私は州議会議員として、さらに法律を教える大学教授として、家にいることは少なかった。振り返ってみると、手伝いはしたものの、しょせん自分のスケジュールがあき、自分の条件がそろった時にしかしていなかった。子育ての負担はおおかた、そして不公平にもミシェルにのしかかったのだ。

こうしたことから、女性が直面するチャレンジに対して分かっているつもりでいる。この経験がフェミニストしての私の考えを醸成したのだ。

さらに、2人の娘の父親であることで、男女のステレオタイプが社会に蔓延していることに気づかずにはいられない。カルチャーを通じて広がるちょっとした、あるいは明らかな社会の動きに気づく。女の子たちが見た目や行動、さらに考えまである一定の枠内にはまるよう、たいへんなプレッシャーのもとに置かれていることも感じる。

同じステレオタイプは、若いころの自分の意識にも影響した。父親不在で育った私は、自分は何者なのか、世間が私をどう見ているのか、将来どんな男性になりたいのか真剣に考えた。

男らしさ(masculinity)について社会のさまざまな見方を吸収することで、男性になる正しい方法誤った方法があると信じ込まされることは、いとも簡単だ。

しかし年を重ねるにつれて、マッチョな男、あるいはクールな男を目指すのは、若さと不安の現れで、まぁ自分とは違うと気づいたのだ。無理をしなくなったら、人生はぐっと楽になった

我々はバリアを突き破らないといけない。女の子は控え目に、男の子は積極的に育てようという姿勢は、はっきりものを言う女の子や涙をひと粒流す男の子を批判することにつながり、これを変え続けないといけない。女性であるが故に罰せられ、男性であることだけで有利になる世の中を変え続けないといけない

街を歩くにしても、オンラインで何か伝えるにしても、女性であるというだけで不正な待遇を受けることをよしとする世の中を変え続けないといけない。女性の存在、あるいは女性の成功によって男性が自分の地位が脅かされると教えられる世の中を変え続けないといけない。

おむつを交換する男性を称賛し、専業主夫を非難し(stigmatizes full-time dads)、働く母親を不利にする世の中を変え続けないと行けない。

堂々として、仕事が有能で、野心もある男性を称賛する一方で、女性であれば別という世の中を変え続けないといけない。そんな女性は今、生意気(bossy)と呼ばれ、成功に必要だと思っていた資質が突如、成功を阻んでいることに気づくのだ。

さらに白人でない女性や女の子(women and girls of color)に対する容赦ない視線を浴びせるカルチャーを変え続けないといけない。

ミシェルは頻繁にこのことについて話している。自らがキャリアで成功したあとも、悩んだという。見た目や行動が正しいかどうか、積極的すぎる、あるいは「怒っている」ように見えるか心配しなければなかなかった。

親として、こどもをこうした呪縛から解き放つのは学びの毎日である。ミシェルと私は娘たちに対して、ダブルスタンダードに気づいたり、男女の別や肌の色によって不公正な扱いを受けたと感じたりしたら、必ず声を出すよう (speak up)育ててきた。そういう待遇を受けた人を見た場合も同じだ。

その分野でトップまで上り詰めるロールモデルがいることは大事である。そして、父親がフェミニストであることも大事だ。だって、彼女たちが求める男性像がそうなのだから

性差別と闘うのは男性の圧倒的な責任でもある。夫として、パートナーとして、ボーイフレンドとして、真に対等な関係を築くためによく考えて真剣に対応しなければならない。

グッドニュースもある。全米、あるいは世界をめぐる中で、男女の役割に関する古くさい認識と闘っている人々と出会う。

大学キャンパスでの性暴力に終止符を打とうというIt’s On Us campaign(俺たちにかかっている運動)の若い男性から、アメリカの歴史上初めてとなる陸軍アーミー・レンジャーの女性まで、皆さんの世代は古くさい考え方に縛られることを拒否している。

さらに、時代遅れで厳格なアイデンティティに収まるよう人々に強要することは、誰にとっても〜男性、女性、ゲイ、ストレート、トランスジェンダー、その他の人々にとっても〜良くないということを皆さんが教えてくれている。こうしたステレオタイプは自分らしく生きることを邪魔をするのだ。

この秋、歴史的な選挙が行われる。アメリカの建国から240年、女性が投票権を勝ち取って約100年たって、初めて女性が主要政党の大統領候補となったのである。政治的な信条が何であれ、アメリカにとって歴史的な瞬間であることには違いない。これこそ、男女平等を目指す長い道のりをいかに歩んできたかを示す好例でもある。

女の子であれ、男の子であれ、これがみんなの素晴らしい遺産であると知ってほしい。多くのベンジャミン(100ドル紙幣に肖像がある建国の父のひとりBenjamin Franklin=白人男性)のみならず、多くのタブマン(新しい20ドル紙幣の肖像となることが決まったHarriet Tubman=黒人女性)がこの国を作ってきたことを知ってほしい。

そして、どんな女の子も望むように生きられるようなアメリカにするために最大限努力してほしい。21世紀のフェミニズムというのはこういうものだ。あらゆる人が平等に扱われて初めて、みんながいっそう自由になれるという理念である。

以下は、おまけ。

オバマ大統領がいかにこども好きかが分かります。

https://www.buzzfeed.com/davidmack/dad-in-chief?utm_term=.qsXvLyz3ZQ#.vnmBzZoOb8

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