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10年ぶり学習指導要領改訂 「何を学ぶか+どう学ぶか+何ができるか」

学習指導要領が、10年ぶりに改訂されます。学習指導要領とは、文部科学大臣が告示するもので、幼・小・中・高・特別支援の学校で、学年ごと教える教科内容を定めるもので、法的拘束力を持ち、これにより教科書が作成され、教師は教えなければならないものとなります。教育は地方行政の責任ですが、同要領により全国標準が担保され、教育の根幹と言ってもいいものです。日教組や野党は、教育内容自体現場の教師に任せるべきだと長年主張し、同要領は大綱化、簡素化されてきました。しかし、授業時間や内容を削減して自主性に任せる「ゆとり」教育と相まって、学力低下、地域間格差という新たな問題が起きてきました。そこで、その流れを変えるために、10年前に教育基本法を改正し、それに沿って平成20年・21年に同要領が改定され、授業時間や内容が増やされました。

去る8月1日(月)に文部科学省の中央教育審議会特別部会が、新たな学習指導要領の審議のまとめ(素案)を公表し、同日自民党文部科学部会でも議論しました。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/1375316.htm

●改訂の方針 「何を学ぶか」「どう学ぶか」「何ができるか」

10年に1回の今回の学習指導要領改訂の目的は、10年前に改正した教育基本法の理念をさらに実現し、国際化・情報化等の激動・変化する時代に対応し、わが国の伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、志高く未来を切り開いていくために必要な資質・能力を確実に育む学校教育を実現していこうというものです。

そこで、これまで改訂の中心であった「何を学ぶか」という指導内容の見直しに加えて、「どう学ぶか」という教育手法、「何ができるか」という社会との繫がり、人間力や活用力の視点から学習指導要領を改善しようとしています。教職員のみならず、子供自身が学びの意義を自覚する手掛かりとしたり、家庭・地域、民間企業等において幅広く活用したりできるようにとの意欲作でもあります。

「ゆとり」教育によって学力低下が叫ばれ、10年前に教育基本法が改正され、それに基づく現行学習指導要領が改訂され、真摯な取組によって、学力は国内外の調査でも改善傾向にあることが明らかになっています。その一方で、判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることや、社会参画の意識、活用力等については課題として残されています。

そこで、育成すべき資質・能力の柱として次の3点が答申されています。

①生きて働く「知識・技能」の習得

②未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成

③学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」の涵養

学習内容を深く理解し、社会や生活で活用出来るようにするためには、知識の量や質と思考力の両方が重要であり、学習内容の削減は行わず、教師が子供たちに一方的に知識を教えるだけでなく、主体的能動的対話的に子供たちに学び考えてもらう教育手法の改善、いわゆる「アクティブ・ラーニング(AL)」の視点から学習過程を質的に改善することを目指しています。

●幼小連携で「小1の壁」を克服

具体的には、知識の量、学習内容を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善を図っていきます。

幼稚園、保育園、認定こども園の違いが教育内容の違いとならないように整合性を図り、全体として幼児教育の質を上げていきます。そして幼児教育から小学校への繋がりを円滑化します。小1では、生活科を中心とした「スタート・カリキュラム」等を通じて、「小1の壁」を乗り越えていきます。

●道徳の教科化に続き言語の重視、地図帳配布前倒し、プログラミング教育導入

小中の義務教育9年間を通じた資質・能力の育成を図ることを重視します。既に昨年道徳が教科化され、各教科との関連が重視されています。

英語教育ばかりが注目されますが、英語教育のみならず国語を含めた言語活動がより重視されると言った方がいいと思います。国語教育においては、小学校低学年で表れた学力差が、その後の学力差の拡大に大きく影響するとの指摘も踏まえ、学習の質に大きく関わる語彙量を増やし、語彙力を伸ばすための指導や、文や文章の構成を理解したり、複数の情報を関連付けて理解を深めたりできるようにするための指導が充実されるようになります。低学年から古典に親しむ学習も充実されます。

そして、英語教育については、既に5・6年生で35単位の「聞く」「話す」の英語活動が実施されており、「読む」「書く」への欲求が高まっていると言います。そこで、5・6年生で70単位を教科化し、3・4年は35単位で英語活動が行われます。その他の授業時間を削減しませんので、英語の授業時間の確保が課題となっています。15分の短時間学習の設定や、60分授業の設定、長期休業期間における学習活動、土曜日の活用や週あたりコマ数の増など、地域や学校の実情に応じて組合せながら柔軟な時間割編成を可能とするとしています。国語教育との連携を図りことも盛り込まれています。

社会科における世界の国々との関わりや政治の働き等に関する学習の充実(地図帳配布を第3学年からに前倒し)、プログラミング教育を行う単元の導入(総合的な学習の時間や理科、音楽など)、文字入力やデータ保存などに関する技能の着実な習得(教育課程全体)など、各教科等における課題に応じた教育内容の見直しを実施します。

●中学からの部活動を改善

中学校では、義務教育9年間を通じた資質・能力の育成を図るとともに、その成果を高等学校で受け止め、子供の学習課題に応じて学び直しを行うなど、高等学校における「共通性の確保」を確かなものにしていくことが必要だとされています。

特に、昨今問題となっている部活動について、少子化が進む中で、持続させるためには一定規模の地域単位で運営を支える体制を構築することが長期的には不可欠。教員の負担軽減の観点も考慮しつつ、地域の人々の協力、社会教育との連携など、運営上の工夫を行うことが必要。保健体育科の運動領域においては、運動やスポーツを「すること」のみならず「する・みる・支える・知る」といった多様な関わり方を学ぶよう指導。こうした考え方に基づき、運動部活動においても、スポーツに関する科学的知見や多様な関わり方を学ぶような指導が重要。短期的な学習成果のみを求めたり、特定の活動に偏ったりするものとならないよう、休養日や活動時間を適切に設定するなど、 バランスのとれた生活や成長に配慮することが重要。こうした部活動についての考え方は、高校においても同様。

●高校では「歴史融合」「地理総合」「公共」が必修へ

高校では、些末な事実的知識の暗記が大学入学者選抜で問われることが課題になっており、そうした点を克服するため、重要用語の整理等を含めた高大接続改革等を進めていくことになっています。18歳選挙権付与、将来の成人年齢引下げを見通して、自民党からの提言を受けて、社会科では世界史必修から日本史と世界史が融合した「歴史総合」、「地理総合」、新科目「公共(仮称)」が必修となります。

外国語教育については、卒業段階における英語力の目標を基に、国際的な基準であるCEFRのA2~B1レベル程度以上(英検準2級~2級程度以上)の高校生の割合を5割とする取組を進めていくことになります。

一人一人の学びの成果を、学校段階を越えてつなぐため、小・中・高を通じて特別活動に「一人一人のキャリア形成と実現」を位置付けるとともに、「キャリアパスポート(仮称)」の活用を促進するとしています。

以上の学習指導要領素案は、中教審が年内にも答申をまとめ、文部科学省が今年度内に学習指導要領を改定する予定です。新指導要領の全面実施は小学校が平成32年度、中学校が33年度、高校(29年度改定)が34年度からとなります。

改訂される学習指導要領が確実に教育現場で実施され、効果を上げるためには、教える教員が今まで以上に重要となってきます。先進国で一番拘束時間が長く、子供たちと向き合う時間が一番少ないという多忙なわが国の先生方が、「自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努め」(教基法9条)て頂くべく、教員の養成・採用・研修の一体改革を推進する法案も準備中です。当然、教員の業務改善を踏まえた増員や、施設設備の環境整備も進めていきたいと思っています。

学習指導要領改訂について、ぜひ多くの皆様方のご意見を頂ければと存じます。

今日一日、「国づくり、地域づくりは、人づくから」をモットーに、全身全霊で頑張ります。

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