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社内で「共通の敵」をつくるのが、仲間をつくる早道か

東京大学大学院教授 ロバート キャンベル 構成=大高志帆

アメリカとイランは真の仲間なのか


 傲慢な上司や使えない部下を「共通の敵」として悪口を言うと、急速に距離を縮めることができるのは事実です。つい愚痴大会をしてしまう人もいるのではないでしょうか。ただし、このやり方で生まれるのは、結びやすく、ほどけやすい“かりそめ”の結束力。新しい職場での“とっかかり”としては重宝しますが、長期的な仲間づくりには適しません。よく言われることですが、「共通の敵」はシーンによって変わるもの。たとえ飲み会で“仲間”になったつもりでいても、ランチタイムには自分が標的にされるかもしれません。


職場の人間関係で困っていること

 とはいえ、これを悪いことだとは言い切れません。ビジネスの現場では、さまざまなルートから情報を手に入れることが大切です。そのためには、ある程度いろいろな人とコミュニケーションをとっておく必要があります。どんな噂話にも加わらず、「悪口は悪だ!」と徹底的に排除すれば、清廉潔白なイメージはつくでしょうが、「付き合いにくい人だ」と思われるのも必然。孤立すれば、必要な情報すら得られなくなってしまうでしょう。孤立するくらいなら、多少ネガティブな会話に加わることも必要悪の範疇だと思います。

 たとえば、今のアメリカとイランにとって、シリアとイラクを占領しようとする武装勢力「イスラム国」は、一掃すべき共通の敵。そのため、水面下でアメリカとイランは共闘しています。現時点のお互いのメリットを考えれば、構図自体は理に適っています。しかし、今後アメリカとイランが友好的な関係を結ぶのは、簡単なことではありません。「共通の敵」でつくれる仲間は、つまりその程度のものなのです。

人の本質を見極める日本人のセンサー


 根本的に話を覆すようですが、私自身は職場で仲間をつくるために動いたことがありません。もちろん、一緒にプロジェクトに携わるのですから、同僚の信頼を得ることも、快適に働けるような気遣いも必要です。「ちゃんと仕事をしているのだから、まわりに多少不快な思いをさせても仕方がない」ということはないのです。これは、ビジネスマンとしてのマナーのようなもの。しかし、「好かれよう」という目的のもとに動いた途端、すべての行動にムリが出ます。簡単に言えば、疲れてしまうのです。頑張って“完璧な自分”を演出し、徐々に“ボロ”を出して落胆されるくらいなら、ストレートに素の自分で勝負したほうがいい。職場での人間関係は、非常に長きにわたるものです。日本人は人の本質を見極めるセンサーが鋭いので、理想的な自分を演出しても、早晩化けの皮がはがれてしまうでしょう。

 経験から言って、自分が人間的に他人を惹きつけられるかどうかは、淡々と仕事をこなす過程で見えてくる性格や能力次第。ユーモアのセンスが合うか、尊敬できるスキルがあるか……。周りを見ると、強力なリーダーシップを発揮する優れた人物はみな、他人のことを批判もするし、評価もします。仕事については批判しても、人間的な部分では褒めるなど、バランスがいい。そして、批判したあとに「もっとこうすれば」と建設的な意見を付け加えます。こうすることで、批判も役立つアドバイスに変わるのです。このような堂々とした態度は、自分の専門分野に自信があるからこそできること。反論されても構わない、と思うから発言にもコソコソしたところがないのでしょう。

 「お互いに快適に働くための気遣い」は努力次第なので、ビジネスマンならぜひとも実践してください。ただし、“本物の仲間”をつくるための近道はどこにもありません。



東京大学大学院教授 ロバート キャンベル
東京大学大学院教授。テレビではMCやコメンテーターも務める。著書に『ロバート キャンベルの小説家神髄─現代作家6人との対話』など。在日25年以上。

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