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シン・ゴジラの裏切り感


プログラムは映画鑑賞のあとで読みましょう

7月29日と言えば、Windows10の無料アップデートの最終日・・・ってのも世間ではあるのでしょうが、やはりわたしとしましては映画「シン・ゴジラ」の公開初日であります。行ってきましたよ。たとえ残像だらけのしょぼい映画館だろうと、初日にみたい、という欲望には勝てませんでした。

12年ぶりに作られたゴジラの新作。ウルトラ系以外の怪獣ものというだけでも本当に久しぶりです。その間、怪獣映画はアメリカで作られてきました。特に近年は「日本の怪獣映画に影響を受けた」と称する映画「パシフィック・リム」、そのものズバリである「GODZILLA」と立て続けに作られています。が、どちらも日本の怪獣映画に似せてあったのは表面的な部分であり、その醸し出す香りはどこか似て非なるものでした。むしろ怪獣ものを名乗っていなかった「ジュラシック・ワールド」に一番それに近い空気を感じたくらいです。とはいえ、前述の2作品が日本のゴジラの復活につながったのも事実であり、あれらにどう応えるのかが今回の最大の注目だったわけです。事前に公開されていたデザインを見る限り、正直期待半分、不安半分でした。

何か作りが異常です。セリフが大変多いうえに早口で、おまけにカット割りが非常に細かく、セリフの持つ情報を理解する暇を全く与えてくれません。それだけにある種の"お約束"である誰かがセリフを言い終わるまで他の人は話をしない、という映画では当然の演出が浮いて見え、見ていて落ち着きません。劇中意外と唐突にゴジラは現れます。そのゴジラが川をさかのぼる際に押しのけられる船の描写などは新鮮でいいのですが、全身を現したゴジラの姿は単に醜いだけでなく、従来の法則を無視する大変歪なもので、あれがゴジラとは脳が受け入れがたく、「実はゴジラの影響を受けた第二の生物の方で、ゴジラじゃないんじゃないか」と思ってしまったほどです。それだけに立ち上がってきたのはある意味ショックでした。あとになって考えてみれば、総監督の庵野秀明監督は海外のSFや怪獣映画にも詳しい人ですし、世界に売り出すためにゴジラをクリーチャーの定義に放り込むのは必然だったのかも知れませんが、そのときはなんか違うものを見ていた感のみでした。

とにもかくにも圧倒的なセリフの情報量。頭の隅にとどめながらついていくのがやっとで、後半ようやく怪獣らしい姿になったゴジラ(なんで一目で前半のクリーチャーもどきと同一体と分かったのか謎なくらい)が第一作のオマージュのごとくさまよう様子も、それを堪能する余裕がありません。展開は大変スピーディーですが、一方のゴジラ自体は後半になって巨大になったこともあって非常に動きが緩慢。前半の比較的うねうね動いていた状態でも見た目の凶暴さとは裏腹に作中でも「歩いているだけ」と言われたように、東京や神奈川に上陸しては歩いているだけで、自衛隊が攻撃をしかけてもなお反撃すらしません。もちろん歩いているだけで東京を壊滅させるほど被害をもたらす存在ではありますが、ある意味"歴代最弱"のゴジラとも言えます。ゴジラが本領を発揮するのは米軍が攻撃してきたとき、初めてです。自衛隊の兵器とは威力が違うのかダメージを受けたゴジラはついに口から熱線を吐いて反撃に出ますが、歴代のゴジラとは違って、当初は火炎を噴いて、その高温のあまりプラズマ気流のようになってビーム化するという表現をとっています。この辺り、真っ暗になった都心での戦いとなっているのが新鮮。過去のゴジラをはじめとする怪獣映画は街の明かりやサーチライト、怪獣が起こした炎で照らされていてナイトシーンにも関わらず明るくなっていることがほとんどだったので、まだ怪獣映画にチャレンジする表現方法が残っていたことを証明する、本作の白眉と言っていいシーンでした。そしてひとたび封印が解かれるや、その火炎の威力たるや”歴代最強"と呼んでいいほどすさまじく、ゴジラ自身も制御できていないというオマケ付き。序盤の早すぎてタルい展開を覆す衝撃が画面から存分に伝わってきます。

ストーリーは案外過去の作品を包み込んだものとなっており、主に84年度版「ゴジラ」に1998年のトライスター版ゴジラの要素を加えたような感じでしょうか。どちらも基本巨大怪獣はゴジラしか登場しない"これからの最初"を目指した作品であり、たたき台としては格好だったのでしょうか。監督の樋口真嗣氏は84年度版ゴジラに特撮スタッフとして参加していたそうなので、「俺ならこうしたかった」という思いが多くあったのかも知れません。それを込めた作品と言っていいでしょう。最近の日本のVFXには欠かせない白組や東映系で仕事をしている尾上克郎氏らが存分に仕事をした特撮は現在の日本の技術の集大成と言ってよく、前半などまだまだCG臭い表現も少なくないですが、それはハリウッドなども怪獣に手を付ける限り大差ないので現状これ以上を望むのは難しいといえる印象です。ただ、表現方法がかなりアニメっぽくて「完成された究極生物」として一度も「怪獣」と呼ばれなかった本作のゴジラとやや矛盾する印象もありますが、言うならば庵野監督や樋口監督の取りたかった「怪獣映画」を作ったのが"シン・ゴジラ"であって「ゴジラ映画」ではなかったのかも知れません。ゆえに、「こんなゴジラが見たかったか?」と言われればナイトシーンを除いておおむねノーです。ですが、表面をまねて本質が異なる海外の怪獣映画よりも本質として怪獣映画の柱を持って仕上げた"シン・ゴジラ"の方が怪獣映画としての満足感は充実したものとなりました。ある意味裏切られた感もありますが、それが決して不満につながらなかった映画であったことは改めて書いておきましょう。

音楽の一部は伊福部昭氏による特撮映画向け曲をオリジナルのまま利用しています。ゴジラ上陸場所が神奈川ゆえにゴジラ第一作のモチーフが使われている「メカゴジラの逆襲」を使ったり、怪獣大戦争マーチと一部モチーフが共通している「宇宙大戦争」の曲を使ったりと非常に凝っているのですが、音質に明らかな差があるのと、編曲を一切行っていないので必ずしも映画の展開とマッチしていない感も拭えず。

なお、本作はVSシリーズ移行毎回何かしら投げかけられていた「なぜゴジラはやってくるのか」について描写することはほとんど皆無でした。今回の映画は登場人物が政府関係者ばかりで一般市民的視点が一切ないため、登場人物にしてみれば現れたゴジラの対処や撃退が大事なのであって、その理由などどうでもいいことなのは当然です。ただ、一応表現や無数のセリフの一部に、少なくともわたしには「それ」と思わせるものを感じさせてはくれました。本当にセリフが多い作品なので、どのセリフ群が記憶に残ったかで各自の印象は大きくことなるでしょうし、多分気になるのなら各自で考えてくれ、ということなのでしょう。まだ一度見ただけなのでイメージを固めてしまいたくないのでここで書くことは避けますが、「現代に現れたゴジラ」ならば・・・というところです。


なお、映画とは直接関係ありませんが、Media Shakersが運営しているZunnyというサイトに掲載されているゴジラ破壊都市MAPというコーナー、データの一部提供とチェックをわたしが担当しています、と、言ってもほとんど何もしてないに等しいですが、当ブログの名前だけは掲載されています。よかったら一度見てみてくださいな

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