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築地移転先の新市場は法律上の「汚染区域」――豊洲問題は都知事選の争点だ

豊洲移転反対デモに参加する水谷和子さん。2015年9月、東京都内。(撮影/永尾俊彦)

豊洲移転反対デモに参加する水谷和子さん。2015年9月、東京都内。(撮影/永尾俊彦)

「どうして都は333カ所の未調査箇所を報告しないんですか!」

6月28日、東京都庁で開かれた豊洲新市場の「土壌汚染対策工事と地下水管理に関する協議会」の閉会を座長が告げた直後、傍聴席に座っていた一級建築士の水谷和子さんが叫んだ。

水谷さんは、東京ガスの工場があったことからベンゼンで環境基準の4万3000倍などの土壌汚染が発覚した豊洲の汚染対策の問題点を都に開示させた資料をもとに追及している。土壌汚染対策法(土対法)施行規則は、地下水を通しにくい粘土層の上端(帯水層の底面)にベンゼンなどの有害物質が溜まりやすいことからその土壌の採取と測定を義務付けている。

だが、水谷さんが開示させた資料から、都は約300カ所もの区画で土壌採取をしていないことが明らかになった。

しかし、この日の協議会ではモニタリングの結果が全地点で環境基準を下回ったと報告され、学識経験者や市場関係者らの委員から「地下水管理システムはほぼ完壁」「都はもっと安全宣言をPRすべき」などの評価が相次いだ。

結局、水谷さんの叫びは無視された。都は、11月7日に豊洲新市場を開場するが、豊洲地区は現在土対法の「汚染区域」に指定されており、その上に市場を開くことになる。この問題は都知事選の重要争点だが、「再検討」を表明したのは鳥越俊太郎候補だけだ。

【土壌汚染対策費858億】

都(市場)は豊洲の土壌汚染調査を2008~9年に行なった。だが、2010年に改正土対法が施行、帯水層底面の調査が義務付けられた。だから、都は帯水層底面の調査を追加調査する必要が生じたが、一部しかやっていなかった。ただ、土対法施行規則では、改正前に行なわれた調査が、「試料採取等と同等程度」と認められるときは「試料採取等の結果とみなす」とされている。その判断は都の場合は、環境局が行なう。

都(市場)は、土対法に従い、国が指定する「指定調査機関」の応用地質㈱に、改正前に行なわれた都の調査を調べて「土壌汚染状況調査報告書」を作成させ、これに基づいて都(市場)は土対法で定められた汚染区域の指定を都知事(環境局)に申請し、区域指定された400カ所について都(市場)は土壌汚染対策工事を実施する中で帯水層底面の汚染の確認と除去をし、2014年に完了した。

この一連の流れを審査した都の環境局が問題なしとしたことから都(市場)は「安全だ」と言う。

しかし、都(市場)は応用地質に業務を委託した2010年12月の仕様書で、ボーリング調査と汚染土壌の掘削除去を400カ所に限定して発注していた。それで、水谷さんは「これは裏を返せば都(市場)が残り約300カ所は帯水層底面の調査をしなくていいと示唆したも同然です」と主張する。

これに対し、都(市場)の担当者は、「それはまったく違います。約400カ所は(2011年11月に)区域指定された後に汚染土壌を掘削除去する区画で、約300カ所は区域指定前に都の環境局が調査不要とした区画です」と反論した。その理由を環境局は、「帯水層底面の調査と『同等程度』と判断しました」と説明した。

だが水谷さんは「環境省に確認したら、帯水層底面の調査をせず、その上で調査が止まっている場合『同等とみなす』ことはできないと即答しました。違法な状況調査の依頼者も審査者も同じ都知事。依頼者が指示すればなんでもやりますでは、指定調査機関制度と土対法は終わりです」と批判した。アンパイアがプレーヤーなのだ。

都は、なぜ300カ所もの帯水層底面調査をしなかったのか。

東京中央市場労働組合の中澤誠書記長は、「調査する区画が増えれば土壌汚染対策費がかさむので減らしたんだろう」と推測する。

土壌汚染対策費は586億円の予定だったのが現在858億円、総事業費は4316億円だったが、現在5884億円に膨張している。

(永尾俊彦・ルポライター、7月22日号)

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