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ミレニアル世代CEO、失敗や苦悩も全部シェア

 悪いニュースは型通りの発表文に紛れ込ませる。これが多くの企業のやり方だが、シリコンバレーの起業家、リョウ・チバ氏(26)は詳細に語ることが一番だと考えた。

「私は誰もいない、暗い会議室で目を閉じ、3つ数えた。友達であり同僚である彼に解雇を告げる心の準備ができたと自分に言い聞かせた」

 これは、マーケティング関連の新興企業ティントの共同創業者であるチバ氏が、先月ブログに投稿した社員の解雇に関する文章の一部だ。

 チバ氏は3000ワードに上る文章の中で、ビジネス上の複数の失敗を認め、同社の財務状況や売上高や給与、さらに解雇をめぐる「厳しく醜い」プロセスの詳細を明らかにした。

「突然、私の心の弁が開き、失望や罪悪感、怒り、悲しみなどありとあらゆる感情があふれ出した」

 既存大手企業のトップは通常、チバ氏のように自分の心のうちをさらけ出したり、過ちを認めたりすることはない。しかし成功するケースが珍しいシリコンバレーでは、新興企業の当事者たちが失敗を振り返り、語ってきた。

 食事関連のアプリを提供するディシェロの共同創業者アレックス・フィッシュマン氏(37)は先月、2000ワードの文章をブログに投稿した。

「ある晴れた火曜日の午後、ドミトリと私は遅い昼食に出かけた」

 冒頭にはこう書かれている。この20年来の友人との会話は同社の選択肢をめぐる議論にまで発展し、創業1年半のディシェロはそれから72時間のうちに廃業することになった。同社は成果も挙げたが、フィッシュマン氏は「そこそこの成功は失敗よりはるかに悪い」と記した。今月17日には、廃業までの最後の36時間について新たに2300ワードの文章を投稿した。

 フィッシュマン氏はインタビューで、起業にまつわる情報をインターネット上で提供したかったと語った。「学びの場であったコミュニティーに恩返しすることにした」というフィッシュマン氏の文章を編集したのは共同創業者のドミトリ・フィンク氏だ。

 こうした文章がブログに投稿される理由について、新興企業向けの人材コンサルティング会社を経営するクリスティーン・マシューズ氏は「新興企業特有の団結心と、ミレニアル世代のシェア文化が結びついた」と分析する。ミレニアル世代の「トップは透明性を重視している」という。

 インタビューに応じたティントのチバ氏は中学生のころ、思春期のストレスについてブログにつづっていたと言い、正直であることとオープンであることに価値を置いていると語った。「ブログに毎日投稿していた悩み多き中学生が新興企業のCEOになりつつある」

 ソーシャルメディアのアカウント管理サービスを提供するバッファーの創業者兼CEO、ジョエル・ガスコイン氏(29)は先月、3500ワードの文章をネット上に公開し、10人の社員を解雇した理由を説明した。

 ガスコイン氏によると、楽観的な見通しや「エゴとプライド」などの理由から、社員をそれまでの3倍近い94人にまで増やしていたという。解雇は「市場が変化したことの結果ではなく、自ら招いたものだった」としている。

 ガスコイン氏は過剰な採用で秋までに資金が底をつく見通しとなったことを明らかにし、入居したオフィスが分不相応だったことも認めた。同社はスポーツクラブ利用への補助金や予定されていたベルリンへの社員旅行などの福利厚生を初めてカットし、ガスコイン氏自身の給与も40%削減した。

 責任を認めたガスコイン氏はインターネット上で称賛された。テクロノジー業界に投資するオム・マリク氏は「もっと多くの新興企業が同じようにするべきだ」とツイートした。マリク氏はバッファーには投資していない。

 解雇された社員も感謝している。入社後3カ月で解雇されたバッファーの元アカウントマネジャー、ティア・フォメノフ氏は、解雇に際して会社側が十分に理由を説明しないこともあると指摘。仕事ぶりとは関係ない解雇だったとCEOが認めたことを評価した。

 ベンチャー資金の流入が減ると、新興企業の様子が変わった。多くの企業が経済的に自立しなければなくなり、成長第一主義を改め、利益を優先しつつある。

 集荷サービスを提供するシップのケビン・ギボンCEOは3月のブログで8%の人員削減を実施すると発表、その中で持続可能性や利益に何度も言及した。ウェブサイトのテストツールを提供するオプティマイズリーのダン・シロカー氏も3月にブログ上で40人の解雇を発表、「自分たちの運命をコントロールする」を同社の目標に挙げた。

 失敗について語る2008年創設の会議「FailCon(フェイルコン)」はサンフランシスコでは2013年以降、開催されていない。会議を創設したキャシー・フィリップス氏によると、多くの人が失敗を語るようになり、もはや会議を開催する意味がないという。

 新興企業の当事者が失敗をインターネットで語ることについて、フィリップス氏は「あまりにも多すぎる」とし、「これでは多くの創業者が失敗してもいいと思ってしまう」と語った。

 チバ氏と共にティントを創業したCEOのティム・セ・クー氏も、共有するにも限界があると話す。ティントは2014年には定期的に業績に関する数字を公表するようにしていたが、売上高が悪化し、顧客から厳しい質問が出たため、翌年に中止したという。

 セ・クー氏は「自分たちの会社は安全だと十分な自身があった」が、「そのことを繰り返し説明することが必要になり、会社経営に集中できなくなった」と語った。

By ROLFE WINKLER

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